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座談会 テーマ「安心・安全の教育環境をどうつくるか」 - 出席 亀田・橿原市長、粕谷・奈良良教育大学教授 森脇・アスカ美装社長ら<PR>

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先進機器で教育現場を補助

 

 少子化が進行していく環境だからこそ、子どもたちへの教育はますます重要になってきている昨今、学校ではいじめや不登校などの課題が複雑化、潜在化し、教育現場での教員への負担は増える一方、人手も足りなくなっている。そこで、安心で安全な教育環境づくりを実現するにはどうすれば良いか、亀田忠彦橿原市長、粕谷貴志奈良教育大学教授、森脇大統アスカ美装社長、佐藤弘樹同社警備業務課長に話し合っていただいた。

 

まちぐるみで健全育成もマンパワー不足が課題

―教育、学校現場に感じる課題とは?

 

亀田 昨今、いじめの内容が複雑化、潜在化し明確にいじめと判断するのが難しくなっていると感じます。要因としてはスマートフォンなど連絡手段の発展、普及により、周囲と直接連絡が取りやすくなったからではないでしょうか。そのため、保護者が子どもたちの交友関係など把握できない状況も発生していると思います。

 

 市内の教育現場ではマンパワー(人的資源、人手)が足りず、子どもや保護者への対応が十分ではないと聞いており、カウンセラーなど教員をサポートする人材を増やしてほしいという要請があります。

 

 学校ではよりよい教育環境づくりを実現したい思いは常にありますが、いじめや不登校など優先して解決するべき課題に対して人員が必要となっています。

 

橿原市長
亀田 忠彦 氏

 

粕谷 全国的にもそのような状況の学校は増えてきています。一度、悪循環が生まれると仕事量は増えていきます。落ち着いた環境で子どもたちが楽しく過ごしていれば、問題も保護者からのクレームもなく理想的な教育環境が続いていきます。

 

森脇 以前の保護者らは大半が先生と同じ目線でしたが、今はそうとも言えず、子どもと保護者の双方に同じ熱量のフォローが必要となっている気がします。

 

 

生活環境の変化に合わせ 求められる教育現場の対応

―マンパワー不足による悪循環とは。

 

粕谷 変化への対応が難しくなることです。社会からの要請に教育現場は応えようとしていますが、それには人手が必要です。

 

 将来が予測しにくい社会へと進んでいる現在、子どもたちへその社会に対応できる能力が備わる教育が求められています。とても難しいことですが現場の先生たちは頑張っているのです。

 

 また、時代や生活環境の変化から子どもたちも対人関係の形成能力、欲求不満耐性、生活習慣、自尊感情などが変化していると言われています。その変化に教育現場も対応していかなければなりません。

 

 50年前の子どもたちは、いわゆる「ガキ大将」と言われる存在から形成される子どもたちだけの社会で遊びながら対人関係などを学んできました。しかし、現在はこのような環境が減ってきています。

 

奈良教育大学教授
粕谷 貴志 氏

 

AI搭載カメラで「いじめ」検知 教育現場の負担軽減に

―マンパワーの代替、補填できるものとは?

 

森脇 先生たちが一生懸命に取り組んでいただいているのはわかります。しかし、いじめなどが発生すると親としてはとても心配で、子どもが被害者ではなく加害者になる可能性もあります。

 

 時代も進み、子どもたちの生活環境も変わり、知識を得られる環境は進みましたが、子どもの成長過程で未熟な部分は変わりません。そこは学校や先生たちの教育や補助が必要なところですが、人手がたりない状況を担保できる環境はほしいところです。

 

 そこで、マンパワー不足の対策になるかはわかりませんが、例えば、AIを搭載したカメラであれば、「いじめ」と疑わしき行動や言動を検知できる可能性はあります。

 

 子どもたちの日常の細かい部分までの認識をカメラに任すことができれば先生の心理的負担や保護者の不安が軽減できるのではと考えます。

 

アスカ美装株式会社
代表取締役社長 森脇 大統 氏

 

佐藤 心理面へのアプローチという観点からもAI搭載カメラの導入は効果があると考えられます。現場のヒアリングやサンプリングなどAIの深層学習や実証実験などを重ねる必要があり、導入に時間はかかりますが、不可能ではないと思います。

 

森脇 実現には、教育現場と教育の有識者、そしてわれわれのような機器導入を提案できる民間企業の連携、協力が必要になってきます。機器を導入した新たな教育環境のモデルケースをつくる社会実験を進めて損はないと思います。

 

 しかし、AI搭載カメラの導入にはプライバシーの問題などが懸念されるので、目的は監視ではなくイレギュラーの検知だという理解を得る必要があります。

 

佐藤 カメラは監視目的として捉えられがちですが、支援やサポートのツールという認識が広がればAI搭載カメラの浸透もスムーズになるかもしれません。

 

粕谷 教職員の負担軽減になるのであれば、ぜひ開発と導入を急いでいただきたいと思います。本来は子どもたちの教育のためにもっと時間を割かないといけませんが、それ以外に時間を取られているのが現状です。教育現場の支援になる機器の導入は必要です。

 

 ただし、導入でどのような問題が起こりうるかなどしっかり議論は重ねていくべきです。ひと昔前は街角の監視カメラや自動車ナンバー自動読み取り装置の導入もはじめは不安もありましたが、現在では犯罪や事故の抑止につながると認められています。教育現場のカメラ導入も時代と価値観の変化で受け入れられるのではないでしょうか。

 

亀田 学校の先生にしかできない子どもたちへの教育に集中できる環境づくりの支援になることは大事だと思います。イレギュラーの検知と先生への負担軽減の観点から導入の価値はあると考えます。

 

 

小さな変化を見逃さない教員補助システムを構築

―カメラ導入で具体的にできることは?

 

佐藤 行動解析からある程度の予測ができ、いじめが起こる前にアラートを出すことが可能になると思います。 リアルタイムで確認ができますので、職員室で先生たちが異常に気付くことができます。

 

現状では、進入禁止の場所に侵入を検知すると自動で通報されるといった技術は存在しますので、この応用で人の行動からの異常検知が可能になると思います。

 

アスカ美装株式会社
警備業務課長 佐藤 弘樹 氏

 

森脇 不審者を検知する技術では、人が緊張や興奮状態になると発する微細な「揺れ」を検知して解析するソフトウェアが存在します。これを使えば、例えば学校に入る前に微細な振動があった、特定の人と接すると緊張が検知されるなど、このようなささいな変化も前もって気付いて声かけやケアをするだけでも不登校やいじめの抑止につながるかもしれません。

 

 イレギュラーを検知することも重要ですが、その後の対処も大切になると考えます。

 

 記録することで、事案が起こった際の実証にもなります。クラスでいじめがあると気付いても言い出せない子どもがいたとして、告発しなかったために大事になった時、それがトラウマになってしまう可能性がありますが、そういった事への抑止にもつながります。

 

―機器を導入した際の子どもたちの影響は?

 

粕谷 常に監視の目がないと危険を回避できないからという理由で、繁華街などには防犯カメラが設置されています。学校をそのような状態にしない教育こそが必要です。

 

 なぜなら、監視カメラや検知システムが存在することで統制することを避けたいからです。要は罰を避けたいから問題を起こさなくなる。これでは子どもは成長できません。やはり、自身で考え行動し、判断できる人間に育ってほしい。それにはやはり学校という社会生活において経験が必要になってきます。

 

森脇 その経験をできる場をもっと増やす必要があるかもしれません。例えば私の子どもの頃は家のテレビの数も少なく、見たいチャンネルがあれば親と交渉する、友達や好きな人に電話するにも固定電話なので、相手の親が出るかもしれないという緊張など、ささいなことですがそこには対人関係構築につながる事象が付きまとっていましたが、現在では見たい時に好きなだけ動画を鑑賞でき、連絡も個人間で簡単にできる環境があり、成長期に人と触れる、衝突するという機会が極端に減ってきていると感じます。 

 

亀田 教育とは何かを考えさせられる課題だと思います。機器導入で先生たちの手間が省け、いじめの抑止になるかもしれませんが、一方で子どもたちの社会経験からの成長の面も考えなくてはいけません。

 

 今後は、未然の防止や予知をどのように計測していくかが大事で、先生の負担が軽減された分をどのように教育現場の改善に活かせるかで新しい価値が生まれてくると思います。

 

粕谷 いじめの問題の対応は事後になっていますが、大切なのは未然防止ができることです。いじめは集団生活の中で起こることなので、その集団の中でどうやっていじめの問題を乗り越えていくか、正しい判断能力を身につけ、解決策を構築していけるかが重要です。そのためには、子どもたち自身にいじめの問題について考えさせながら解決する方法を身につけさせていく必要があるため、長い時間を要します。

 

森脇 自分の子どもを見ていると思うのは、子どもたちは大人にとってはささいなことで悩み、傷つき、また相手を攻撃してしまうように感じます。しかし、そのささいなことを教育現場では発見できない。その見逃しを補うために先進機器導入は価値のあることだと思います。

 

 そのささいなことを検知し、専門家が解析していじめ防止策の構築ができれば、担任の先生の負担軽減にもにつながり、マニュアル化して共有できれば日本全体の教育現場の改善にも役立つと思います。

 

 

人との対話重ね 子どもたちに最適な教育補助ツールを提案

―最後に本日のご感想をお願いします。

 

佐藤 AI搭載カメラの技術、性能に関してはまだまだ発展途上ではありますが、たとえ完璧なシステムが完成し導入したとしても、教育現場の課題がすべて解決できるとは限りません。システムに依存するのではなく、あくまで先生たちの負担を軽減するツールとして考え、最適なものを提案できればと思います。

 

森脇 本日このように話し合うまでは、技術が人を救うと考えていましたが、人間という性質が大きく寄与してくると思います。人と人との間の問題解決にはやはり人と人との議論を重ねることも大事だと思いました。

 

粕谷 いじめの本質には「自分に価値を感じられない」という発達の課題があります。そのような子どもが無価値感、無力感にさらされた時に、相手を引き下げて自分の価値を確かめようとする。それがいじめにつながる攻撃性になります。一方で穏やかに人と仲良く過ごす子は自分に価値を感じている子どもです。

 

 自分に価値を感じない子たちが苦しんでいます。いじめも発生し、自殺というリスクも高くなります。

 

 では自分に価値を感じる子に育てるにはどうするか。それは温かく応答的な人との関わりを経験すること。それができるのが学校という環境です。しかし、その価値構築には長い時間を要します。ですから、機器導入により先生たちの負担が軽減できればそれだけ、子どもたちへのケアや必要な教育に時間をかけられるようになるので、少しでも早くそのような環境が出来上がることを望みます。

 

亀田 少子化が進む中だからこそますます教育が重要になってきます。本来必要な教育に先生たちが向き合っていただくためにもある程度、カメラやシステムの力は必要だと感じました。しかし、機械に依存しきるのではなく、先生たちの経験値もうまく活かし、そして保護者とも協力して家庭教育と社会教育を大切にしながら、子どもを健全に育成する意識を社会全体で持つことが大事だと考えます。

 

 橿原市ではこれからも「子どもは宝だ」と意識づけ、デジタルとアナログの融合でもってまちぐるみで子育てを行っていきます。

 

―ありがとうございました。

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