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奈良公園(奈良市)の料理旅館で文人ゆかりの酒を味わう(その3) - 大和酒蔵風物誌・第2回「江戸三から山乃かみへ」(奈良豊澤酒造)by侘助

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奈良豊澤酒造のブランド戦略

 そんななか、奈良豊澤酒造は自社ブランドの生産へと大きく舵を切って、今日蔵を代表する「豊祝」や「無上盃」などのブランド化に成功する。その過程でこだわったのは手造りに徹することだった。五代目はいう。「現代では機械化が進んで、お酒づくりはオートメーションやデジタル技術である程度賄える時代です。お酒の品質に直接関連のない作業はそれでもいいのかもしれませんが、麹造りや吟醸の袋しぼり、温度や湿度の管理など、人間の手や感覚に頼らないと完成度を欠いてしまう作業が酒造りにはたくさんあります。上質なお酒を造ろうとすれば、それをなおざりにすることはできません。『貴仙寿』を世に送り出して以来、その姿勢は一貫していますし、今後も変わることはありません」。

 

豊澤孝彦五代目蔵元

 

 もうひとつ、五代目が強調するのは、酒造りにおいてはお客様目線を欠かさないという点だ。「我々造る側には当然こだわりがありますが、これをお客さんに押しつけるのはよくないと思っています。むしろ逆に、そのニーズを汲み取りながら酒造りに活かすというほうが、我々のスタイルというべきでしょう。ですから蔵直営のアンテナショップや立ち呑み屋を展開して、いろいろなお客さんの反応を拝見しながらお酒造りに反映しています。豊祝や無上盃などのブランドでも麹や酵母を変えて、ときどきでニーズを反映しているんですよ。大衆が喜んで呑んでくれるお酒、つまり10人中6、7人がおいしいと思ってくれるようなお酒が豊澤の酒なのです」。

 

 

 

 

 

 近鉄奈良駅や西大寺の駅構内に蔵が経営する立ち呑み屋があって、いつも賑わっている。筆者もときどきお世話になっているが、てっきり日本酒の需要が低迷しているから業態を変えていく動きのひとつかと思っていたら、しっかり蔵の酒造りのコンセプトの延長上にあった。つまり、これらの店はお客様目線の酒造りをしていくうえでお客さんにいちばん近い最前線というわけだ。五代目のいう「消費者にとって顔のみえる蔵」は、こんなところにみてとることができる。なるほど納得である。

 

近鉄奈良駅にある直営立ち呑み店

 

 

究極の食中酒「江戸三」

 「江戸三」については、「私が蔵の仕事をするようになってから初めて手掛けたプライベートブランドで、とくに力の入ったお酒です。江戸三のような老舗料亭で呑んで頂くのは本当に光栄です。料理を引き立てるという意味では最高の食中酒なので、自信をもってお薦めできます。立ち呑み屋でも同じことがいえますが、お酒のあるところには必ず食がありますので、それもまた楽しむことができてこその豊澤のお酒で、「江戸三」は究極の食中酒ということができます」と五代目は語る。「10人中6、7人がおいしいと思ってくれるお酒」を主張する蔵元は、呑む側の飲酒シーンにまで目を配らせる。お酒を旨いと思うためには、もちろんお酒それ自体を楽しむひともいるだろうが、やはり食事の席で呑んでこそいっそう旨味を感じるのが大部分のはず。その意味では酒があまり主張し過ぎるようでは具合が悪い。食を引き立ててはじめておいしくなるお酒。店で出すお酒に大和氏が抱く期待と豊澤氏の酒造りの信念は、ちょうど「江戸三」で交差する。

 

 

地元米「ヒノヒカリ」と「山乃かみ酵母仕込み」

 「ところで、最近地元の米を使ったお酒を造っているんですよ」といいながら、五代目が豊祝の「山乃かみ酵母仕込み」を紹介してくださった。地元のヒノヒカリを使って、大神神社のササユリの花から分離された酵母を使用した特別バージョンだそうである。これはまた面白いですね、これはどういった経緯で、と尋ねると、「これまでも奈良県唯一の酒米である『露葉風』を使った商品はありました。最近、奈良県内で酒米の王様と呼ばれる山田錦や、全国の多数の酒蔵が使用している五百万石など酒米の栽培をする農家さんが増えてきましたので、うちではここ数年、奈良県産米を使った商品アイテムを増やしています。吟醸酒に使用する山田錦は大和郡山市の2軒の農家さんが栽培したものです。山田錦は、食用米より実が大粒で穂高があるため、収穫前に倒伏しやすい非常に栽培が難しい品種です」。

 

 なるほど地酒の原料を地元で調達するのは最近のトレンドといえるが、奈良でもそれを受けてお酒用の米を栽培する生産者が現れてきたということか。地酒フリークにとっては何とも頼もしい限り。

 

豊祝「山乃かみ酵母仕込み」

 

 

 

 五代目はさらに続ける。「純米酒の生産が多いうちの蔵で今後特に量産していきたいのは、食用米として評価の高い奈良県産「ヒノヒカリ」を使った純米酒です。現在使用しているヒノヒカリは、蔵のある帯解(おびとけ)の田んぼで収穫された米で、うちに30年以上勤務して頂いている吉田喜美子さんが御夫婦で丹精込めて育てたお米です。「山乃かみ酵母仕込み」はまさにそのヒノヒカリを使って、さらにお酒の神様のいる大神神社のササユリの花を元にした酵母でじっくりと低温発酵させたお酒です。日本酒発祥の地の蔵元として、地元の水と同じ水脈で栽培された米を使ってお酒造りをするのは本来の姿だと思っています。今後はこの手のアイテムをもっと増やして、将来的には全生産量の70%以上にする計画でいます」。

 

蔵の隣のヒノヒカリ圃場

 

 

アテの調達のために「まほろばキッチン」へ

 こんな話を聞いて試してみない手はない。早速「山乃かみ酵母仕込み」を分けて頂いて家で味わってみることに。その前にアテの調達をするために、国道を北へ戻ってJR奈良駅西の「まほろばキッチン」に寄った。JAならけんが運営するこの施設は、地元の農家の方々が直接農産品を持ち寄ることから、まさに地産地消をコンセプトにしている。当初橿原で大規模にオープンしたが、評判が良かったことから奈良市内でも同様の施設を開設した。橿原のそれに比べて規模は小さいが品揃えは豊富で、季節の新鮮な野菜が低価格で揃っていて、おおぜいのひとで賑わっていた。

 

まほろばキッチン玄関

 

 美味しそうな食材に目移りするなか、ひときわ大きな茄子に眼が行った。これはデカい。通常の丸茄子なんかよりよほど大きいから、これは相当旨いか、さもなくば大味かのどちらかだろうと勝手な想像をして、ひとつ試してみることにした。後で調べたら「米茄子」といって、アメリカ産の茄子の流れを汲む品種だそう。どうりで大きいはずだ。もうひとつ、これは「特価品」という表示に引かれたのだが、生しいたけの大量パックが山盛りになっている。何グラムあるかは不明だがこれだけの量で230円は十分お得。「形は悪いですが味は最高!」と添え書きしてあるのもいい。この二品をメインの食材に選ぶとすればどんな料理がいいか少し考えて、中華風にマーボー茄子のように炒めてみることにした。炒めるだけなら簡単だし。ならば、そこにひき肉を加えるのは必須で、ちょうど大和ポークのひき肉があったので、計三品を調達して家路につくことにした。(その4につづく)

 

 

読者プレゼント「江戸三」「山乃かみ」を抽選で各3名様に

 今回紹介するお酒2種「江戸三」(300ml)「山乃かみ」(720ml)を奈良新聞デジタル読者にプレゼントします。ご希望の方は下記のURLからご応募ください。奈良新聞デジタル(有料会員)読者の中から抽選で計6名の方に賞品をお届けします。締め切りは2023年8月31日。

 

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