歴史文化
大和路の弘法大師【8】 海龍王寺(奈良市法華寺町) - 大師御筆の「隅寺心経」
奈良時代に書写された般若心経。光明皇后宮の北東隅に建てられた海龍王寺の別称「隅寺(すみでら)」にちなみ、「隅(角)寺心経」として知られる。
海龍王寺文書に「弘法大師が渡唐の無事を祈り、壱千巻の般若心経を書写・納経された」とあり、現存する心経が大師直筆とも記すことから、同文書が書かれた鎌倉時代初め以前から寺に伝わっていたと考えられる。
同寺初代住職の玄昉(げんぼう)は阿刀氏で大師の母方の先祖に当たることから、大師は唐への航海の前に願掛けにきたと推測されるという。
本文末に「この心経を読経すれば願いの叶(かな)わないことはない」という功徳文三行が付されているのが特徴になっている。(伊藤波子)