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金曜時評

保守分裂の知事選 英断ないか平木氏 - 主筆 甘利 治夫

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 悲鳴が聞こえる。

 

 知事選の告示まで1週間を切り、立候補予定者の動きも活発化している。自民党県連(会長・高市早苗経済安全保障担当大臣)が新人の推薦を決めたが、党中央が結論を出さないため、保守分裂選挙となることは確実となった。形の上では、県連推薦だが、首長の間でも温度差があって、「何とか一本化を」と、最後の望みを託している様子もうかがえる。

 

 今のところ、現職の荒井正吾氏(78)に対し元総務官僚の平木省氏(48)、元生駒市長で日本維新の会公認の山下真氏(54)、前大和郡山市議で共産党推薦の尾口五三氏(72)、無所属の元中学講師の西口伸子氏(68)の新人が挑む。

 

 政党などの支援をみると、自民県連が平木氏の推薦を党本部に上申したのに続き、立憲民主党県連も平木氏の支持を発表した。国民民主党は現職の荒井氏を推薦し、連合奈良は自主投票だ。公明党は、これまで繰り返し「自民党で一本化を」と求めてきたため、現状では自主投票の公算が大きくなっている。

 

 こうしたなかで、昨夏の参院選の比例代表での各党の得票がクローズアップされる。自民19万5千票に対して、維新が約16万2千票獲得しているからだ。そして前々回知事選に無所属で出馬した山下氏が約22万8千票を獲得して、荒井氏に約5万6千票差に迫っている。山下氏は今回、維新公認なので、数字の上からも、大阪以外で初の維新首長誕生も視野に入ったとの見方が出ている。このため保守層の間で危機意識が高まり、保守分裂の経過をたどってしまった。「維新に負けられない」という言葉が繰り返し聞こえてくる。それには「一本化しかない」ともいう。第三者の涼しい立場で聞いていると、どうにも理解しがたい。

 

 一本化の意味が、現職の荒井氏が降りて新人の平木氏を候補にする、としか聞こえない。普通なら新人の平木氏が断念して、現職に一本化すべきなのだろうが、そうではないところに、保守層の多くが納得しきれないのだろう。

 

 これまでの荒井県政を支えてきた人たちが、自民党県連の強引な対応に苦しむだけでなく、結果的に「維新知事の誕生」に貢献することになるわけだから、疑問をもって当然だ。

 

 時間切れかもしれないが、平木氏の英断で、4年後を目指し、今回は断念するという選択肢はないのかとも思ったりもする。もちろん、選挙はどうなるか分からないし有権者が決めることだ。

 

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