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大和古寺お参り日記【45】 - 薬師寺(上)

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1300年の間、人々の言葉を聞き続けてきた本尊、薬師如来坐像

 例年より早く満開を迎えた梅の花が迎えてくれた。薬師寺の歴史は飛鳥時代にさかのぼる。680年、天武天皇が皇后の病気平癒(ゆ)を願って藤原京で建立を発願。完成を見ずに亡くなった夫の遺志を継ぎ、持統天皇が完成させた。本尊薬師如来の開眼は697年。平城京遷都に伴い、現在の場所に伽藍(がらん)が移された。

 

 大谷徹奘執事長は「皇后の病は国全体に飢饉(ききん)や災害をもたらすと考えられていた。根底にあったのはこの国の安泰を願う心だった」と話す。

 

 大小の甍(いらか=屋根)を連ねる堂塔伽藍は、天武、持統両天皇を表現しているとも聞く。国を整え、安寧を願った二人の心は、今も薬師寺に受け継がれている。

大小の甍(いらか)が重なる堂塔伽藍
太陽の光のようにあたたかな日光菩薩
月の光のように優しい月光菩薩

 

 本尊の薬師如来坐像(白鳳時代、国宝)は医王如来とも呼ばれ、健康をつかさどる。優しく見守る日光、月光両菩薩と共に、薬師三尊として金堂に祭られている。金銅仏でブロンズの素地が今も美しく輝く。初めて参拝した時に感じた包み込むような安心感が忘れられない。

 

 「1300年間、人々の言葉をじっと聞き届けてこられた。一言も話さずただここに座っていらっしゃるだけ。修行を続けるうちにその大きな存在に気が付いた」と大谷執事長。

 

 「感謝の気持ちを伝えてから、懸命に努力するので足りないところを補ってくださいとまずは自分から努める意識を大切に祈ってほしい」

 

 意識して祈ることは仏様に誓うこと。自分の心が無ければ何もかなえられないし、未来も動かない。

 

「そして心を乗せると、日常で見えなかったものが見えるし聴こえなかったものが聴こえる」

 

 花が美しい、空気がすがすがしい、意識して見渡せばささいなことも楽しく尊く見えてくるのだろう。慌ただしく現代社会を生きる私たちの毎日で忘れがちな大切なことだと感じた。

 

 金堂で感謝を伝え、手を合わせた。祈りが届くよう自分の心を忘れずに生きていたい。そして心を見失いそうになったらまたお参りに訪れたい。

金堂の薬師三尊。感謝を伝え、自分の意識を誓って祈りたい

 

 (文・伊藤波子 写真・藤井博信)

 =次回は17日に掲載予定=

 

 

 

薬師寺

奈良市西ノ京町457

電話:0742(33)6001

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