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吉野の奥山に雨をつかさどる神社を訪ねる - 丹生川上神社・大和古社寺巡礼 015

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丹生川上神社(丹生川上神社)

 ※社寺名は、基本的に現在使われている名称によりました。

 ※( )内は、神社は『延喜式』神名帳による表記、寺院は史料にみえる表記です。

 ※記事中の写真の無断転載を禁止します。

 

 天武天皇の御代に、「人聲(声)の聞こえざる深山吉野丹生川上に我が宮柱を立てて敬い祀(まつ)らば天下の為に甘雨を降らし霖雨(りんう)を止めん」(『類聚三代格』)との神宣によって創祀されたと伝える吉野の古社。

吉野の深山に鎮座する丹生川上神社

 

エリア/吉野郡

主祭神/罔象女神

相 殿/伊邪奈岐命・伊邪奈美命

ご神徳/豊水安全・勝気開運・晴男晴女・五穀豊穣ほか

 

 

ご由緒

 神仙境とされてきた吉野の深山に丹生川上神社が創祀されたのは「人皇四十代天武天皇白鳳乙亥」(『二十二社註式』)と伝えられています。「山深い吉野の丹生川上の地に神殿を建て敬うならばよき雨を降らせ長雨を止めよう」との神宣があり社殿が造営され、また幣帛(へいはく)と馬を奉り四至の内に神馬を放牧し、狩猟を禁止しました(『類聚三代格』寛平七年太政官符)。 

 

 この地はかつて神武天皇の東征で熊野から大和入りをされた際に、天香具山の土で作った器「厳瓮(いつべ)」を川に沈めて祈(うけい)を行った地で、天武天皇にとってはまさに敬神崇祖の地で、天皇も壬申の乱を前にして籠(こ)もられています。

 

 奈良時代には、天平宝字7(763)年5月に祈雨のために幣帛を畿内4カ国の諸社に奉り、なかでも丹生河上の神には黒毛馬を加えて奉ったこと、宝亀8(777)年5月、8月には長雨となり止雨のために丹生川上神に白馬を奉納したことが『続日本紀』に記されています。

 

 その後も歴代朝廷の篤(あつ)い崇敬を受けて、平安時代中期以降は祈雨の神として「二十二社」の一社に数えられました。

「境内俯瞰図」(部分/明治時代・丹生川上神社蔵)

 

 「境内俯瞰図」(明治時代)は霧立ち込める山と川に囲まれた境内地に建つ社殿を、見事に描いた絵図。川にはかつて往来した筏(いかだ)も描かれている。

 

 

主祭神

罔象女神(みづはのめのかみ)

 伊邪奈岐命・伊邪奈美命の姫神で、水に関する神徳を有し万物育成の根源を掌(つかさど)る女神

 

 

相殿神

伊邪奈岐命(いざなきのみこと)・伊邪奈美(いざなみのみこと)

 天浮橋からオノコロ島に降り立ち、2神で国生み、神生みをされた日本の創造神

 

 

境内参拝・気が付かなければ…

 ※📸は撮影ポイント

 ※スマホを見ながら散策できるモデル順路

 

大鳥居 📸

 神社正面の大鳥居の前からは、高見川の清流を望むことができます。鳥居の社号額は、大正時代の官幣大社丹生川上神社・本田隆宣初代宮司の揮毫(きごう)。

 

手水舎

 大鳥居を小揖(しょうゆう=軽いお辞儀)して進むと、左手に手水舎が。龍の口から流れ出す清き水で、作法に従い手水をとりましょう。龍の右の手には如意宝珠が…

手水舎の厳かな龍

 

拝殿

 拝殿に進むと、左側に祓串(はらいぐし)が備えられています。参拝の前にまず自祓いの作法(一礼して祓串を戴(いただ)き、自分の肩の左・右・左と祓い、一礼して戻します。正式には最初に祓詞(はらえことば)を奏上でお祓いをします。

 

 拝殿の前で 二礼 二拍手 一礼のお作法で参拝。

 

 唱えことばは「丹生の大神 守り給へ 幸(さきは)へ給へ 丹生の大神 守り給へ 導き給へ」。

参拝の前に祓串でお祓いを

 

本殿と東殿・西殿

 本殿は、拝殿から登り楼を上がった所にあります。文政11(1828)年に造替された本殿・東殿(ご祭神:大日孁貴尊〈天照大神〉・八意思兼命・譽田別命)・西殿(ご祭神:開化天皇・上筒男命・菅原道真公・綿津見神・大国主神・事代主神)は、花鳥などの彫刻が施され極彩色の名残りも留(とど)めて神さびた風情が。

 

 また弘長4(1264)年建立の「丹生社」の銘のある石灯籠(重要文化財)は、名石工として知られている伊行末の子息・伊行吉の作です。

 

 ※特別祈願参拝(正式参拝を含む)の際に、石階を登って参拝させていただけます。

拝殿から本殿に続く階段

 

相生の杉 📸

 夫婦杉とも称される樹齢約800年の杉で、夫婦円満、延命長寿のご加護が。かつては本殿の瑞垣によって隔たれていた夫婦杉を不憫(ふびん)に思った現宮司が、瑞垣の位置を変えたというエピソードも。

 

 相生の杉の巡り方は、雌杉(伊邪奈美命)を左にして二本の杉の間に立ち、まず雌杉(伊邪奈美命)の周りを反時計方向に回り、次に雄杉(伊邪奈岐命)の周りを時計方向に8の字を描くように回ります。その後、2本の杉の間で両手を広げて杉に手を当て両杉の気を頂きます。

 

西側から望む相生杉(上)と近景

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(写真枚数:19枚)

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