歴史文化
大和路の弘法大師【3】 音無川(五條市小島町付近) - 呪法唱えて川音を止めた
奈良県の中央を東西に流れる清流で、和歌山県からは紀の川の名で知られる吉野川。五條市の名刹、栄山寺付近では別名が存在する。その名も「音無川」。
弘法大師が栄山寺で修行をしていると、吉野川の川音がうるさくて集中できなかった。そこで川に石を投げ呪法を唱えると、川の音がやんだ。それが音無川と呼ばれるようになったゆえんという。
弘法大師が投げたのは筆だったいう説も。どちらにせよ同寺の前を流れる川は、岸に岩石が露出し、水の色は青がかった緑色で流れも静か。美しい景色が広がり、近くの栄山寺橋と吉野川は県景観資産にも選定されている。風光明媚(めいび)な風景を前に、弘法大師の不思議な力を重ねたくなるのもうなずける。(竹内稔人)