歴史文化
大和路の弘法大師【1】 空海寺(奈良市雑司町) - 一刀三礼で彫った地蔵菩薩像
東大寺の末寺。弘法大師空海が810(弘仁元)年に東大寺別当に就任したころ、草庵を結んだのが寺の始まりとされる。
本尊の地蔵菩薩石像は弘法大師が一彫りごとに三回礼拝する「一刀三礼」で造立したと伝わり、古くから「阿那(あな)地蔵」の名で信仰を集めてきた。名称は弘法大師が「穴ぐら」のような石窟に石像を安置したことに由来するという。
一方「仮名地蔵」とも呼ばれ、弘法大師がこの地で「いろは歌」を作ったという伝説にちなむとされる。
石窟は江戸時代に解体され、地蔵菩薩像は現在、本堂内陣に秘仏として安置されている。庫裏の玄関前にある井戸も弘法大師が掘ったものとされ、境内は「空海」にまつわる伝承に彩られている。(竹内稔人)
◇弘法大師生誕1250年を迎え、奈良県内の弘法大師ゆかりの地や伝承地を訪ね歩きます。