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逢香の華やぐ大和 宇陀松山地区(奈良県宇陀市)

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色鮮やかアート空間

町並みとダリア“競演”

 書家の逢香さんが県内の社寺や名所を訪ね、地域の魅力を発見する「逢香の華やぐ大和」。今回は国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている宇陀市大宇陀の宇陀松山地区へ。各種イベントの会場になっている町家などを訪れました。(岡崎雅樹)

 

9000本ものダリアの花が敷き詰められた石景庵の庭=宇陀市大宇陀上

 

 

生産日本一のダリアを生かしたアートなイベント

 かつて城下町として栄えた宇陀松山地区の歴史的な町並みに「いい雰囲気ですね」と逢香さん。路地に目をやると、ダリアの花と町並みの競演イベント「宇陀松山華小路」(10月21、22日)が開かれていた。企画する「宇陀キラ倶楽部」の田川陽子さん(47)によると、奈良県はダリアの球根生産量が日本一で、その半数を宇陀市が占めているとか。2009年から毎年イベントを実施しているといい、「宇陀がダリアの生産地であることを多くの人に知ってもらい、花に親しんでもらいたい」と田川さんは話す。

 

宇陀松山地区の歴史ある町並み

 

 今年はアーティストのイケモトタツヤさん(60)と同地区在住の彫刻家、諸熊仁志さん(51)が小路の演出を担当。大宇陀の民家で眠っていた古い農具や家具にさまざまな色や形のダリアの花をあしらい、独創的な音楽と共にアートな空間を創り上げた。

 

 逢香さんは「ダリアのいろんな種類、彩りがあるからこそ、オブジェとして迫力も出ますね。面白い」とそれぞれの作品に見入っていた。

 

花を添えた農具などの作品が並ぶ「宇陀松山華小路」。
演出したイケモトタツヤさん(左)、諸熊仁志さんから話を聞く=宇陀市大宇陀上

 

 

造り酒屋から奈良漬製造へと変遷

 表通りを歩いていると、木たるの看板に「奈良漬」の文字を発見。店頭にいた奈良漬製造元「いせ弥」の清水誠代表(57)に誘われるまま、逢香さんは店内へ。1866(慶応2)年の創業以来、昭和初期まで造り酒屋だった同店。地域の酒蔵が減少する中、「昔からのつながりでいい酒かすを手に入れられたこともあって奈良漬に特化した」と清水代表が店の歴史を教えてくれた。ウリの奈良漬を試食した逢香さんは「ちょっと甘味があっておいしい」。「卵かけごはんに刻んでかけるとめちゃくちゃおいしいですよ」と聞き、「今すぐできますね。(このような)奈良漬トークがまさに奈良っぽいな」と笑顔で店を後にした。

 

いせ弥で奈良漬を試食=宇陀市大宇陀上

 

 

町家を会場にした芸術祭

 明治時代前期の町家「千軒舎」に到着。当日は「奈良・町家の芸術祭はならぁと2023」の会場の一つになっていた。広島で70歳を過ぎてから絵を描き始め、「おばあちゃん画家」として有名な丸木スマさん(1875~1956年)の作品を展示。ネコの家族がエサの皿を囲んでいる「めし」などの色鮮やかな作品のほか、原爆を題材にした「ピカのとき」などが座敷に飾られていた。逢香さんは「子どもらしい作風から、感じたままに筆を取り、描きたいと思うエネルギーが伝わってきますね」と感心しきりだった。

 

千軒舎で丸木スマさんの作品を観賞=宇陀市大宇陀拾生

 

 

県産食材に舌鼓

 ワークショップや雑貨販売などでにぎわう「古民家マルシェ8」(10月21、22日)にも足を運んだ。会場のゲストハウス「奈の音」は明治時代のしょうゆ醸造の蔵元で、重厚感のある純和風建築。飲食の出店もあり、空腹の逢香さんは県産天然鹿のモモ肉を衣で揚げた串ジビエをほおばる。「小ぶりでもジビエの風味がしっかりある。柔らかくておいしい」。吉野スギの香りを感じさせるクラフトビールも口にし、「ほのかなスギの香りが伝わりやさしい味。どちらも独特の風味があって完璧な相性ですね」と満足そう。室生で収穫した黒米のおはぎも味わい、県産食材をたっぷり堪能したランチタイムとなった。

 

ゲストハウス奈の音でジビエ串とクラフトビールに舌鼓=宇陀市大宇陀西山

 

 

逢香の目

石景庵に戻り思い浮かんだ造語を揮ごう=宇陀市大宇陀上

 

 まちなみギャラリーとして新築した「石景庵」。近世の石垣が残り、江戸時代の面影を伝える中庭の奥には宇陀松山華小路イベントとして9千ものダリアの花が敷き詰められていた。円を描くような「ぐるぐる」をイメージした色鮮やかなダリアのじゅうたんを前に、逢香さんは一日を振り返る。

 

 「

 

 花々を見て「艶やか」と一番最初に思い浮かんだ。さらに農具の上に乗ったダリア。色とりどりで種類もさまざまな花に感動し、今回は創作で未知の漢字を書いた。黒をバックに艶やかさを足したような作品に仕上げた。「宇陀は薬草が有名ですが、花もこんなに豊かなんだと初めて知った一日で華やぎました」

 

メモ

◆宇陀松山地区

 宇陀市大宇陀。近鉄大阪線榛原駅から奈良交通「大宇陀」行きバスで約15分、終点下車。車は名阪国道針インターから南へ約30分、南阪奈道美原北インターから東へ約40分。

 

◆書家/逢香(おうか)

 奈良市在住。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。6歳から書道を学ぶ。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛ける。大学時代に個性豊かな妖怪に興味を持ち、「妖怪書家」としても活動。奈良市観光大使。

 

 

 「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内で11月14日に放送されます。

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