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逢香の華やぐ大和 笠山荒神社(奈良県桜井市)

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「かまどの神」にお参り

 書家の逢香さんが県内の寺社を巡り、四季折々の魅力を発見する「逢香の華やぐ大和」。今回はかまどの神様を祭る日本三大荒神の一つ、笠山荒神社を訪ねました。(山本夏美代)

 

笠山荒神社の表参道入り口

 

 

神秘的な雰囲気の表参道

 大和の青垣、鷲峯山(じゅぶさん)の中腹に位置し、人里から離れた場所にひっそりとした笠山荒神社。森林に囲まれた表参道に到着した逢香さんは、大自然のエネルギーを感じて大きく深呼吸。「神秘的ですね。アニメに出てきそうな雰囲気です」と鳥居の奥に向かって一礼し、参道の階段を上がった。

 

 木漏れ日の中、一段ずつ進んでいくと緩やかな上り坂へ。辺りは少しひんやりとした空気に包まれ、木立の間からはツクツクボウシの鳴き声が響いてくる。「荒神様へといざなわれていくようで、ドキドキします」と緊張気味の逢香さん。「自分と向き合える参道ですね」と気を引き締めた。

 

神秘的な雰囲気の表参道を歩く逢香さん

 

 

荒神発祥のやしろ、日本第一笠山荒神

 日本三大荒神の一つとされ、荒神発祥のやしろとして知られる笠山荒神。大地の神である土祖神(ツチノミオヤノカミ)とかまどの神とされる興津彦神(オキツヒコノカミ)、興津姫神(オキツヒメノカミ)の三神を祭る。

 

 宮司の西田亨司さんは「火は古代で一番大事なもの。かまどで火を使い煮炊きすることで食事ができ、おかげで豊かな生活ができます」と説明、「かまどの神様は火鎮めの神様でもあり、火の用心になります」と逢香さんに貼り札を手渡した。「書家なので家には紙がいっぱいあります。火の用心はありがたいです」と逢香さん。

 

西田亨司宮司から貼り札をいただく

 

笠山荒神社の拝殿

 

 

薬師如来像と地蔵菩薩立像

 笠荒神の近くにある竹林寺(笠寺)は明治初期の神仏分離まで笠山荒神社と一体だった。境内の宝物殿には、平安初期の代表作といわれる木造薬師如来像(国重要文化財)と鎌倉時代の地蔵菩薩立像(県重要文化財)が安置されている。御開帳は年3回(直近は9月28日)だが、特別に拝観。

 

 西田宮司によると、創建当時は長谷寺の奥の院と称され、長谷寺の十一面観音菩薩像と同じクスの霊木で薬師如来像が造られたという。残念ながら当時の像は残っていないが、「ぜひお力を頂いてください」と西田宮司。関東から拝みに来る人もいるという。

 

 しみじみと仏像を見つめていた逢香さんは「ふくよかでぷっくりとしたお姿、手の水かきの大きさが印象的で、しなやかさに筆の世界にも通じるものがありますね」と興味津々(しんしん)だった。

 

説明を受けて薬師如来像を拝観する逢香さん

 

国重要文化財の木造薬師如来像

 

県重要文化財の地蔵菩薩立像

 

 

自家製のそばに舌鼓

 笠荒神の北参道を抜けると、そば処「荒神の里・笠そば」が見えてきた。近くにソバ畑が広がり、石うすでひいたそば粉を使った手打ち風のそばが食べられる。年間約9万食が提供される人気店だ。

 

 楽しみにしていたという逢香さんは、そばの風味がダイレクトに味わえる「ざるそば」を注文。最初はそばをそのまま、次につゆを付けていただくのが、風味を楽しむポイントだそう。

 

 そばを口に運び、「うんうん。おいしい! のど越しがあり、口の中でそばの風味がふわっと広がります。近くの畑で収穫されたソバの実から作られたと思うと感動しますね」と笑顔。逢香さんのファンという店のスタッフにサインを提供するなど楽しいランチタイムになった。

 

ざるそばいただきます!

 

 

一面に真っ白な花が咲くソバ畑

 地域おこしで約30年前に始まったソバ栽培は、今では20ヘクタールほどに広がっている。標高約500メートルの畑は一面にソバの小さな白い花が咲き、白いじゅうたんを敷いたよう。逢香さんは「これだけ真っ白だと圧巻ですね!」と管理人の森清人さんに許可をいただき、畑の中へ。「遠くに見える稲穂の黄金色とのコントラストがまたいい。トンボも飛び、やっと秋が来たと感じられます」とにこやかに話した。

 

一面白いじゅうたんのようなソバの花に感動

 

 

逢香の目

「蕎麦らしい火日」を揮ごうした逢香さん

 

 逢香さんは、ソバの小さな白い花を水墨画で表し、「蕎麦らしき火日」と揮毫(きごう)。

 

 「素晴らしい」と「蕎麦らしい」を、「日」の一文字に「火」を掛け合わせた。「ソバの小さな白い花が咲いた後の小さな実を集め、何回もの工程を経て、おいしいおそばになるんですね。そして、かまどの神様。火は身近ですが、火事など気を付けなければいけない。考えさせられました」と一日を振り返った。

 

百“華”繚乱逢香の華やぐ大和
作品展とトークショー

 奈良市のNHK奈良放送局で10月1日に開かれるイベント「鹿どーもまつり2023 NHK奈良においでよ!」で、これまでに「逢香の華やぐ大和」で逢香さんが制作した作品を展示。逢香さんのトークショーは午後3時10分から。

 

メモ

◆笠山荒神社

 桜井市笠2415。JR・近鉄桜井駅から車で約30分。名阪国道天理東ICから約12キロ、針ICから約10キロ。お守りなどの授与は毎月1日と28日、週末の土・日曜・祝日の午前8時~午後5時。問い合わせは同神社、電話0744(48)8312。

 

◆荒神大祭・宝物殿御開帳

 1月、4月、9月の各28日。当日のみ桜井駅北口から臨時バスが運行される。

 今月9月28日は、午前11時に竹林寺から笠山荒神社まで神輿(みこし)が渡御する。

 宝物殿の開館時間は午前10時~午後3時。拝観料は300円。

 

◆書家/逢香(おうか)

 奈良市在住。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。6歳から書道を学ぶ。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛けるなど活躍中。大学入学後、変体仮名の授業をきっかけに個性豊かな妖怪たちに興味を持ち「妖怪書家」としても活動。奈良市観光大使。

 

 

 「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内で9月12日に放送されました。

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