信貴山城跡―大規模な山城遺構残る

　奈良と大阪を隔てる生駒山地の南端部、主稜(りょう)線から東に派生した尾根に位置する大規模な山城。比高は380メートルで奈良盆地をよく展望でき、楠木正成の築城に始まるという伝承もある。

 

　1536(天文5)年から41年にかけて木沢長政の居城となるが、42年、河内太平寺の戦いで落城した。

 

　その後、1559(永禄2)年に松永久秀が入城する。68年には三好康長に攻められて落城したが、間もなく織田信長の加勢を受けて奪還に成功。しかし1577(天正5)年、織田信忠の攻勢に落城し、久秀は自害した。

 

　信貴山城は木沢長政と松永久秀が大和の覇権を奪うために拠点とした城である。久秀の城という印象があるが、長政の時代にもかなり築城が進み、大和支配の拠点となっていた。松永期には同じく久秀が築いた多聞城(奈良市)と並ぶ重要拠点であった。

 

　朝護孫子寺の境内を抜け、山頂の空鉢護法堂へのつづら折れの参詣道を30分ほど登ると、標高433メートルの信貴山雄岳の山頂に達する。

 

大きな石碑が立つ信貴山城跡

 

　信貴山城はこの山頂部分とそこから東・西・北側に放射状に派生する尾根筋、雄岳から鞍(あん)部をへて南側にある標高399メートルの雌岳山頂部の大きく3カ所を利用して造られた、東西550メートル、南北700メートルに及ぶ大規模な山城である。さながら山の要塞(ようさい)、天空の要害といった趣である。

 

　信貴山自体が朝護孫子寺の境内地でもあったため、山内の城郭遺構が良好に保存され、縄張りの全容が確認できる。曲輪(くるわ)、土塁、切岸(きりぎし)、石積みが非常に良好に残る。これまで発掘調査は一度も行われていない。

 

　『信長公記』によれば、松永期には天守が立っていたようで、やはり山頂部の主郭部分であろう。今は天守台はもちろん、礎石や絵図も残されていない。

 

 

「松永屋敷」の居館跡も

山中にある松永屋敷跡

 

　近世の絵図に「松永屋敷」の記載がある部分は、山頂から北側へ少し下ったヒノキ林の中にある。5段の平たん面が造作され、虎口(こぐち)、土塁の痕跡が残る。数多い曲輪の中でも特に大規模に造成され、居館を構えるには十分な空間である。

 

 

片岡城跡―勝利した久秀が大改修

大きな案内板が立つ片岡城跡

 

　片岡城は戦国時代に片岡国春が築いたとされ、小高い丘の上にある。空堀(からぼり)や曲輪を配して守りを固めた要害だった。

 

　国道168号をJR和歌山線「畠田駅」南側の信号で東に折れると、葛下川にかかる畠下(はたしも)橋を渡る。そのまま直進すると上り坂となり、峠付近に片岡城の案内板が立つ。城跡の地形図もあり、現在の地形と比較しながら往時をしのぶことができる。主郭跡と東側の丘陵を隔てる谷が大空堀で、峠付近からでもその規模が分かる。

 

　片岡氏は1569(永禄12)年の戦いで松永久秀に破れ、城も大規模に改修された。

 

片岡城跡への登りから西側の見晴らし

 

《住所》上牧町下牧

《問い合わせ》上牧町社会教育課、電話0745(76)2532

 

メモ

信貴山城があった信貴山。見晴らしの良い要衝だった

 

　信貴山城跡へは朝護孫子寺の空鉢護法堂を目指せばよい。本堂手前の分岐に道しるべがあり、信貴山城跡まで600メートル20分、松永屋敷跡まで950メートル30分。多宝塔を経て空鉢護法堂の参道に入ると、赤い鳥居が続き、星祭りの本尊などを拝みながら登る。

 

　空鉢護法堂の手前に「信貴山城址」の石碑がある。見晴らしは空鉢護法堂が素晴らしく、南に二上山から葛城山に連なる山並み、東には大和三山も見渡せる。信貴山が大和と河内を結ぶ要衝であることがよく分かる。松永屋敷跡は「信貴山城址」の石碑からしばらく下る。

 

太子創建、「寅」ゆかりの寺

聖徳太子ゆかりの信貴山朝護孫子寺

 

　寅年、寅の日、寅の刻、聖徳太子がこの地で毘沙門天を感得し、崇仏を巡って対立していた物部守屋に勝利、自ら毘沙門天を彫って創建したとされる。仁王門をくぐって進むと、大きな張り子の虎が参拝者を迎える。寺に伝わる「信貴山縁起絵巻」は日本三大絵巻の一つで国宝に指定されている。

 

◆信貴山朝護孫子寺

《住所》平群町信貴山

《問い合わせ》電話：0745(72)2277