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逢香の華やぐ大和 世尊寺(奈良県大淀町)

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セミ時雨の古刹で一服の涼

 書家の逢香さんが県内の社寺を訪ね、四季折々の魅力を発見する「逢香の華やぐ大和」。今回は大淀町比曽の古刹(こさつ)、世尊寺を訪れました。(高橋智子)

 

 

世尊寺は夏盛り

 夏の日差しを受け、セミの鳴き声が響く世尊寺にやって来た逢香さん。ツツジが美しく刈り込まれ、サルスベリの老木が木陰を落とす境内を散策し、「風が涼しく感じる。気持ちいいな~」と境内ののどかな空気に浸った。

 

 飛鳥時代に聖徳太子が創建した48カ寺の一つ。建立当時は比曽寺、その後、吉野寺、現光寺、栗天奉寺―と名を変え、大規模な伽藍(がらん)を誇っていたとされている。

 

夏真っ盛りの世尊寺にやってきた逢香さん。山号は霊鷲山=1日、大淀町比曽

 

 

ほほ笑みの阿弥陀如来像

 ご本尊は、温和な表情の阿弥陀如来座像。「吉野路の微笑仏」とも呼ばれる。日本書紀は「欽明天皇が茅渟(ちぬの)海中(現在の大阪湾)に光を放ちながら浮かぶクスの木で仏像2体を造らせた」と記す。

 

 本山一路住職(84)は、「飛鳥時代の仏像の特徴は、面長で耳たぶが長く、肩幅が丸みを帯びている」と説明。

 

 逢香さんはご本尊の安らかな表情を見上げ、「口角がクッと上がっているのが印象的。優しさが感じられます」と話した。

 

本尊、阿弥陀如来座像の起源を説明する本山住職(右)=1日、大淀町比曽の世尊寺

 

 

間近で拝める仏様

 同寺では、奈良時代の十一面観音菩薩の立像が囲いのない状態で祭られている。淡路島に漂着した香木から造られたと伝わる。逢香さんは「奈良時代の仏様がこんなに近くで見られるなんて! 頭の上の観音様がよく見えます」とじっくり見入った。

 

 鎌倉時代に頭頂部の仏を、そして2016年に左手の一部と水瓶(すいびょう)を修復。修理前は左手に持つ水差しのハスは開いていたが、修理後はツボミのハスに変えたという。本山住職は、「仏を修理する時は原点に戻るとされ、参拝する人の願いが花開くように願いを込めた」と説明した。

 

奈良時代の十一面観音菩薩が至近距離で拝める=1日、大淀町比曽の世尊寺

 

 

ラフティングに挑戦

 夏らしいことに挑戦しようと、逢香さんは吉野川沿いに移動。リバーガイドの平原由理さん(33)からパドルを使ったこぎ方や安全面の注意点などの説明を受け、いざ、ライフジャケットを装着して初めてのラフティング(川下り)へ。

 

 最高気温36度の炎天下でも、山影や川の水が体温を冷やしてくれた。逢香さんは8人乗りのゴムボートに乗り込み、パドリングを始めると「楽しい!」とはちきれんばかりの笑顔に。川魚やトンビを見つけては声を上げ、「ボートに乗らないと見られない景色や生き物がいますね・・・」と壮大な自然を体感した。

 

山と川の壮大な自然を体感=1日、大淀町佐名伝

 

 1時間半かけて川を下り、途中で4度の急流を通過。岩にぶつからないように平原さんと協力してボートを漕ぎ、急降下や水しぶきに歓声を上げた。難所を乗り越えると2人はパドルを高く掲げて先端を合わせ、健闘をたたえ合った。

 

 終着地点では「楽しかったです~」と晴れやかな表情の逢香さん。奈良ならではの涼しく、楽しい夏の一日を過ごした。

 

急流で水しぶきを受ける逢香さん=1日、大淀町佐名伝

 

 

樹齢100年超のサルスベリ

純白の花を咲かせるサルスベリ(世尊寺提供)

 

 樹皮がツルツルと滑らかで、木登り上手のサルも滑りそうな見た目から名が付いた「サルスベリ」。

 

 樹齢100年以上になる高さ約15メートルのサルスベリを見て、「めちゃくちゃ大きくてびっくりしました」と逢香さん。同寺の檀家が植えたと伝わり、枝いっぱいに純白の花を咲かせるという。

 

 見ごろは8月中旬~9月初旬。訪れた8月初頭は、木のてっぺん付近に2輪ほど開花。逢香さんは「サルスベリの花を見ると夏を感じます」とまぶしげに花を見上げた。

 

逢香の目

 

揮ごうする逢香さん=1日、大淀町比曽の世尊寺

 

1日を振り返り、揮ごうした=1日、大淀町比曽の世尊寺

 

 逢香さんは3色の和紙を使い、それぞれ別の書体で「百日紅(サルスベリ) 川下り 夏盛り」と揮ごう。

 

 夏真っ盛りの世尊寺で樹齢100年のサルスベリの大きさに驚き、吉野川で初めて挑戦したラフティングは「やってみたら楽しい! 川の水も冷たく、涼しくしてくれた。奈良の夏を涼しく過ごすこともできるんやな~と感じました」と振り返った。

 

メモ

◆世尊寺

 大淀町比曽762。近鉄六田駅から徒歩約35分またはバスで「比曽口」下車、北へ徒歩約20分。もしくは近鉄大和上市駅からタクシー。拝観時間は午前9時~午後4時。入山料100円。本堂拝観料400円。電話0746(32)5976。

 

◆ココロアウトドアツアー奈良ベース

 大淀町佐名伝45の2。半日ツアー大人6600円(税込)、4歳~小学生5500円。保険料、基本装備レンタル代を含む。予約はインターネットで受け付け(https://nature-cocoro.com/index.html)。電話0747(55)4105。

 

◆書家/逢香(おうか)

 奈良市在住。奈良市観光大使。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛ける。大学時代に個性豊かな妖怪に興味を持ち、「妖怪書家」としても活動。

 

 

 「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内で8月8日に放送。

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