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逢香の華やぐ大和 長弓寺(奈良県生駒市)

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参道を彩るアジサイ

 書家の逢香さんが県内の花の寺などを訪ねる「逢香の華やぐ大和」。今回はアジサイで知られる生駒市の長弓寺です。 (久後力)

 

色づき始めたアジサイを鑑賞しながら参道を歩く逢香さん=生駒市上町の長弓寺

 

 

カップケーキに華やぐ

 6月初旬、逢香さんがまず訪ねたのが、「ならやま大通り」沿いにある花とフラワーカップケーキの店「koyuki」(奈良市西登美ケ丘1丁目)。昨年12月にオープンした。

 

花とフラワーカップケーキの店「koyuki」=奈良市西登美ケ丘1

 

 店内のショーケースを見て「かわいい、花が咲いています」と逢香さん。見ればショーケースには白や青、赤、ピンクなど、バラの花を飾った色鮮やかなフラワーカップケーキが並ぶ。ほかにもバラ、ダリア、カーネーション、ツツジなどの花や手作りのリース、ブーケが店内を飾る。

 

見た目も味も楽しめるフラワーカップケーキ=奈良市西登美ケ丘1の「koyuki」

 

 フラワーケーキは韓国発祥といわれており、バタークリームを使って「花絞り」の技術で花を飾ったケーキのこと。美しさとおいしさを両方味わえる。

 

 同店はバタークリームの替わりに白あんこを使用。国産米粉で土台のスポンジケーキを作り、着色した白あんこで花を表現。小麦粉やバター、卵は不使用だ。

 

 フラワーカップケーキに興味津々の逢香さんに、オーナーの中野尚美さん(39)は「6月から手作り体験レッスンを始めるのでよかったらやってみますか」と提案。逢香さんは右手にあんこが入ったビニール、左手に台座を持って早速挑戦。中野さんから「右手は動かさない、左手の台座を回して」とアドバイスを受けながらバラの花と葉っぱを見事に仕上げた。

 

 試食した逢香さんは「あっさりしてやさしい味ですね。作ってきれい、食べておいしい。見るのと違う華やぎ方です」と満足そうだった。

 

中野さんの指導でフラワカップケーキの体験レッスンに挑戦する逢香さん(右)=奈良市西登美ケ丘1の「koyuki」

 

 

アジサイに迎えられて境内へ

 続いて、同店から西へ約1キロ、奈良時代の創建と伝わる古刹、長弓寺へ。富雄川沿いに南北に走る県道から「長弓寺」と彫られた石柱を目印に境内の伊弉諾(いざなぎ)神社の鳥居をくぐると、右手に青や紫、薄ピンクなど色とりどりに咲き始めたアジサイが出迎えてくれた。

 

 同寺の参道や境内にはガクアジサイやホンアジサイなど、約800株のアジサイが植えられている。「今は3分咲き、見頃は6月半ば過ぎ」と清水隆道住職。小雨の中、逢香さんは「青とピンクの対比が美しい。めちゃきれい」とときめきながら参道を歩いた。

 

 途中、写真撮影に来た中国人姉妹と出会い、中国のアジサイについて質問、緑や赤、黄色など日本より多色であると教わった。緑の葉の上にカタツムリも見つけた。

 

逢香さん、中国人姉妹と記念写真も=生駒市上町の長弓寺

 

 

十一面観音を特別拝観

 このあと、逢香さんは本堂(国宝)前で清水住職から説明を受けた後、堂内へ。「正月三が日と8月20日、それとどうしてもお参りしたいという強い思いの方に御扉(みとびら)を開けています」という黒漆厨子(重要文化財)を特別に開けていただき、本尊の十一面観音立像(同)に手を合わせた。「きりっと見つめてくださるようでした」と逢香さん。清水住職は「慈しみの深い仏様です。きょうはご縁があってよかった」と言葉を重ねた。

 

本堂前で清水住職(左)から説明を受ける逢香さん=生駒市上町の長弓寺

 

 

長谷寺の宝物

本堂内の本尊十一面観音立像を特別参拝する逢香さん。右は清水住職=生駒市上町の長弓寺

 

本尊は国の重要文化財

 長弓寺は同地の豪族、小野真弓長弓(おののまゆみたけゆみ)が息子と狩猟中に、息子が放った矢で命を落としたことを悲しんだ聖武天皇が、行基に命じて供養のために建立したと伝わる。現在は四つの塔頭(たっちゅう)がある。

 

 本堂は国宝で、入母屋造りの檜皮葺(ひわだぶ)き。細部まで計算された造りで、東大寺南大門と同じ様式を採用した鎌倉時代を代表する建築物の一つだ。

 

 堂内にある黒漆厨子(鎌倉時代)と本尊の十一面観音立像(高さ116センチ、平安時代)はともに国の重要文化財に指定されている。

 

 

逢香の目

一日の思いを込めた逢香さんの書とアジサイの花=生駒市上町の長弓寺

 

 拝観を終えた逢香さんは、吉野の和紙を重ねたキャンバスに「花味わい」と揮毫(きごう)。アジサイとバラの花を添え、その上に「NO RAIN NO FLOWERS」と書いた。

 

 「きょうは色彩豊かなアジサイが素敵で、雨もよかった。バラはかわいいフラワーカップケーキを描いた。英文には雨が降れば花が咲く、とのプラスの気持ちも込めました」。「花味わい」は花とフラワーカップケーキの味わいをかけたといい、「花を見るのも作るのも素敵。いろんな意味で華やぎました」と話した。

 

 

メモ

◆書家/逢香(おうか)

 奈良市在住。奈良市観光大使。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛ける。大学時代に個性豊かな妖怪に興味を持ち、「妖怪書家」としても活動。

 

 

 「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内でも放送。放送日は未定。 

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