逢香の華やぐ大和 山田寺跡(奈良県桜井市)
時空を超え春を満喫
「超黄金」に戯れ遊ぶ
書家の逢香さんが県内の神社仏閣などを巡り、季節の花や土地の魅力を発見する「逢香の華やぐ大和」。今回は奈良県桜井市の山田寺跡です。(伊藤波子)
山田寺跡に到着、石碑を見上げる逢香さん=14日、桜井市山田
広大な山田寺跡へ
飛鳥時代を代表する寺院の一つ「山田寺」があったとされる山田寺跡。舒明13(641)年、蘇我馬子の孫、蘇我倉山田石川麻呂によって造営が始まった。
「今日は天気も良く気持ちいい日ですね!」。逢香さんは、暖かな春の日差しを感じながら広々とした寺跡の参道を歩く。
石川麻呂は乙巳の変(いっしのへん)の功で右大臣となり、山田寺の建立を発願したが、謀反の疑いをかけられ大化5(649)年に自害、完成を見ることはかなわなかった。
寺の造営は天武朝に受け継がれ、天武14(685)年に完成。中門・塔・金堂・講堂を南から北に並べた四天王寺式の伽藍(がらん)配置だったことが分かっている。
▽東回廊があった場所で3DCG体験
山田寺跡といえば東回廊の発見が有名。1982(昭和57)年に行われた発掘調査で、伽藍の東回廊が倒れたままの状態で見つかり、世間を驚かせた。連子窓も形をとどめ、古代建築の貴重な資料として奈良文化財研究所飛鳥資料館で復元展示されている。
桜井市は精巧な3DCGで東回廊などの伽藍を再現、スマートフォンで見ることができる。
早速、チェックポイントでアプリを起動する逢香さん。「ほんまに立派! 今ここにあるみたいに見えますね」。スマホを手に周囲を360度見渡す。回廊の高さも再現されているので規模が分かりやすく、タイムスリップしたように想像が膨らむ。時空を超えた最新技術に大満足の逢香さん。「何もないところに3DCG! 華やぎますわ〜」。
スマホで3DCG体験中=同
山田寺跡から見える丘に黄色い花々を発見
黄色い花の名前は「サンシュユ」。別名は「春黄金花(ハルコガネバナ)」で早春を代表する花木の一つ。中国原産の樹木で春先に黄色い小さな花をたくさん咲かせ、秋にはグミに似た赤い実をつける。果実には薬効があり、漢方薬などにも用いられる。
サンシュユが咲く丘に登る
黄色くてかわいらしいサンシュユの花の前で
寺跡から徒歩5分ほどの丘にサンシュユの木が群生している。逢香さんが坂道を登ると一面に黄色い花が広がった。
「小さくてかわいいお花! 華やぐわ〜」。暖かい太陽のような黄色に春を感じた逢香さんは、隠れた花見スポットに感動の様子。
サンシュユの花は4月上旬ごろまで楽しめそう。
橿原市昆虫館に到着
チョウが大好きだという逢香さん。昆虫好きでカブトムシを食べたこともあるとか。初めて訪れた昆虫館に興味津々。「虫はムシできません!」と笑顔。
▽沖縄の昆虫たち
この時期はまだ奈良で観察できる虫が少ないため沖縄八重山諸島の昆虫を展示している。学芸員の辻本始さんに案内していただく。カメムシやサソリモドキ、ゾウムシなどを熱心に観察する逢香さん。「きれいな光を当てて展示しているからこその美しさがありますね」。
▽約500匹のチョウが舞う温室
温室では沖縄のチョウを中心に約10種が放し飼いにされている。室内でも天気の良い日は元気に飛び回るそうで、この日はあちこちに色鮮やかなチョウが舞っていた。「想像以上にいますね。楽園みたい!」と大興奮の逢香さん。子どもの頃に自分で卵をふ化させたこともあるほどのチョウ好きなのだとか。
辻本さんが考案したというスポーツ飲料をしみ込ませた毛糸玉には、たくさんのチョウが集まる。蜜を吸う様子も真近でじっくりと見ることができた。
毛糸玉に集まるチョウを観察する逢香さん=14日、橿原市南山町の市昆虫館
▽オオゴマダラのサナギ
辻本さんが黄金色に輝くオオゴマダラのさなぎを見せてくれた。「金ピカですね」と驚く逢香さんに「世界一美しいと私も思っています」と笑顔の辻本さん。サナギは2週間でチョウになるそう。わずかな期間しかこの金色は見られない。
学芸員の辻本さん(右)から説明を受け、オオゴマダラのサナギを観察=同
鮮やかなチョウの羽の模様と同様に、輝くさなぎは毒性をアピールして外敵から身を守っているとの説もあるという。
逢香の目
本日の書を揮毫する逢香さん=同
完成した作品は春らしい雰囲気
山田寺跡で時空を超えた3DCGを体験。春黄金花とも呼ばれるサンシュユを愛でて春を存分に感じ、昆虫館ではチョウと戯れた。逢香さんは「超黄金」と揮毫(きごう)。「超をチョウに掛け、サンシュユの花とサナギの黄金を表現しました」と説明した。「黄金の美しさを実際に見に来てほしいです」。
メモ
◆山田寺跡
桜井市山田1258。JR・近鉄桜井駅から飛鳥方面行きバス「山田寺跡」下車、徒歩2分。駐車場あり。見学無料。
◆橿原市昆虫館
橿原市南山町624(香久山公園内)。近鉄大阪線「大福」駅から徒歩約40分。近鉄大和八木駅南出口から橿原市コミュニティバスで所要約30分、橿原市昆虫館下車。月曜休館。10〜3月は午前9時30分〜午後4時半。4〜9月は午後5時まで。入館料は大人520円、高大学生410円、小人100円。電話0744(24)7246。
◆書家/逢香(おうか)
奈良市在住。奈良市観光大使。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛ける。大学で変体仮名の授業をきっかけに個性豊かな妖怪たちに興味を持ち「妖怪書家」としても活動。
逢香さんが個展 3月28日から「日本橋の家」
個展「妖怪ユニバース」のチラシ
「妖怪書家」としても知られる逢香さんは、大阪市中央区日本橋2の「日本橋の家」で4月28日から個展「妖怪ユニバース」を開く。会場の「日本橋の家」はコンクリートむき出しの斬新な建築で知られる安藤忠雄さんの建築。逢香さんは「繁華街で妖怪たちの世界観を表現したい」と意気込む。
4月28日〜5月21日の金、土、日曜と5月の3、4日に開館。正午〜午後7時。入場無料。グッズや作品も販売予定。
「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内で3月20日に放送。