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金曜時評

ビジネスプランの生かし方 着想の有効活用を - 編集委員 松岡 智

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 奈良の魅力をより高める方策は多方面で検討され、実現化されてもいる。起業、新事業のアイデアづくりをコンテストや審査会でのプレゼンテーションを交えてうながす取り組みもその一つで、対象は学生・生徒から新規、ベテラン事業者などまで幅広い。

 

 内容も、躍進目覚ましいスタートアップ企業や既存企業の新事業を資金面でも支援する実践的な形式がある一方、起業マインドを育てることを重視するものもある。後者では企業や行政、金融機関などが少し先での展開を見据え、スモールビジネスの促進や県内移住を伴う創業、若い時期からの資質醸成といった多様な視点でアプローチし、地域活性化という最終目標達成を図ろうとしている。

 

 発案者の中には、経営の専門家らの助言を受けて当初の着想を磨き上げ、起業につなげた例がある。また当初案ではないが、別の事業を立ち上げた事例も。だが多くはアイデアの発表のままで終わっているのが現状で、若い層が対象のものではなおさらだ。実際に見聞きした発表だけでも発想がざん新で着眼点が面白かったり、運用次第で事業化と継続性への期待が持てたりする案があり、そのままにするには惜しい気がする。

 

 こうしたアイデアを、大学や研究機関などのシーズ集のような形で一括ストックし、多くの人の目に触れられるようになれば、発案者ではない誰かが生かし、実現する可能性も出てくる。また着想を土台に、少し形を変え、複数を組み合わせるなどして事業化できることがあるかもしれない。それには権利関係を含め仕組み作りが大切で、コンテスト等の個々の主催者を結ぶ横断的な思考も必要だ。現在でも一部交流はあるようだが、起業への支援などを考えても連携が深く、視点の異なる関係者が多い方が方策も広がる。

 

 アイデアの実現の過程ではさらに、「副業」など働き方にかかわる側面が課題となることも予想される。少子化で労働力人口が減る時代での事業の達成、好循環の継続などでも従来通りでなく画一的でもない見識が求められる。

 

 モノやコトがあふれる大都市が近い奈良が内外の耳目を集めるには、地域と不可分な関係の歴史文化、伝統などを除けば、事業の独自性と数が重要になる。それらの種となる着想、発案者への対応を怠れば、実現性の高い場所への両者の流出の懸念も生じる。長い目で独創的発想や意欲を守り、育む環境を整えるには、個より集団での進め方もある。

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