「文化財の活用」と聞くと、まず観光が思…
「文化財の活用」と聞くと、まず観光が思い浮かぶ。しかし、それだけではないと、なら歴史芸術文化村で開催中の「発掘された日本列島」展であらためて教えられた。
同展では昨年度から地域の魅力を発信する「我がまちが誇る遺跡」のコーナーを実施。本年度はその一つに長野県冨士見町の井戸尻遺跡群を取り上げている。
八ケ岳西南麓にある縄文時代中期の遺跡群で、1958(昭和33)年に始まった発掘調査では重要な成果があった。その中核を担ったのは、専門家ではなく地元住民たちだった。
開発の波により各地で遺跡が消える中、いち早く保存会を立ち上げ、遺跡や出土品を保存。2018年度には日本遺産「星降る中部高地の縄文世界」の認定を受け、縄文を生かした町づくりも進められている。
地域の文化財を住民たちが研究し、誇りとして守る。今後の文化財の保存活用を考える上で手本にもなる事例だ。
余談だが、同遺跡の調査成果を基に「縄文農耕論」を唱えた地元の考古学者・藤森栄一は、アニメ「となりのトトロ」の主人公姉妹の父親のモデルともいわれる。(法)