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奈良県「吐山スズラン群落」が危機 環境変化か開花数減少 奈良市に保全求む声

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開花シーズンには吐山スズラン群落を訪れる観光客の姿も=奈良市都祁吐山町(奈良市提供)

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 寒冷地に生育する日本スズランの南限の地として、1930(昭和5)年に奈良県室生村向渕(現・宇陀市)とともに国の天然記念物に指定された奈良市都祁吐山町の「吐山スズラン群落」(指定面積約7千平方メートル)の花付きの状況に近年、衰退が見られ、地元から懸念の声が出ている。スズランは旧都祁村時代は「村の花」として親しまれたが、2005年の奈良市との合併後は、群生状況など1度も調査されておらず、新年度予算編成でも市は「ゼロ査定」とし対応が見送られた。

 

 スズランは北海道に数多く自生地があり、本州では低山帯などの草原で見られる。根茎の高さは15~25センチ。花柄は曲がり、下向きの広鐘形の花を10個前後まばらにつける。5月中頃から6月初めが開花シーズン。吐山では香酔山近くの北東側斜面に指定地があり、1996年の旧都祁村の調査では約8000株以上が自生していたとされる。

 

 しかし、2020年ごろから開花するスズランは減少傾向にあるといい、昨年9月、市が委託した荒木希和子・滋賀県立大学講師の現地視察では、日照の低下、多雨など環境の変化による死滅のほか、鹿などの食害、また土中に含まれる栄養分の不足により、自己防衛として花やつぼみを付けないことが想定されるとの分析結果が示された。 

 

 スズランは旧都祁村時代から地元の田町すずらん会が除草を行うなど管理を続けているが、同会の森田澄子さんは「かつては足の踏み場もないくらい芽が出ていた時代もある。シーズンになると一帯にいい香りが漂っていた。でも特にこの2年は開花状況も極端に悪くなった。温暖化の影響もあると思う。株そのものが消えたりして心配している」と話す。

 

 一方、旧室生村時代から向渕の指定地(総面積約3万1500平方メートル)の調査を継続している宇陀市では、日照問題の不足など「課題」もいわれる中で、地元の保存組織との連携によりスズランの開花状況は再生の方向にあるという。

 

 奈良市文化財課では宇陀市向渕スズラン群落で行われている調査を参考に、新年度スズランの分布状況や成育調査、他の植物の生育状況、照度や土壌の調査を行う予定だったが、国・県の補助を含め400万円余りの事業経費は、市の対応はゼロ査定。

 

 3月定例会で同問題を取り上げた鍵田美智子氏(新世の会)は「科学的な調査が必要な国指定の天然記念物が、このままでは滅失しかねない。保全の責務を認識しない市の姿勢は問題だ」と憤る。

 

 吐山スズラン群落の保全は現在、田町すずらん会への年間約20万円の除草委託費のみ。森田さんは「地元も高齢化の問題もあり会員も今は5人に減った。私たちができることには限界がある。行政にもしっかりサポートしてもらいたい」と願う。

 

 都祁が地元の北良晃議長も「村のシンボルだったスズランに対し地元の思い入れは強い。対策を望みたい」とした。

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