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厳しい林業を巡る環境 事業収益安定化を - 奈良経済をつかむ(20)

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 林業は奈良県の主産業の一つであり、川上村で室町時代に植林が行われたことが始まりとされるほど歴史がある。現在でも川上村、東吉野村、黒滝村からなる吉野林業地域は、日本有数の優良な木材の産地として認知されている。古くから密植、多間伐、小まめな枝打ちなど独自の育林技術により手間暇かけて育てられてきた。他府県産材に比べて年輪が細かく強度があり、節が少なくて木目が美しい点などが特徴で、住宅などの建築用部材として古くから使用されてきた。

 

 また育林の成長過程でも、木の太さによって、稲を乾燥させる稲架(ハサ)や足場丸太、カキ養殖用筏(いかだ)など、建築用部材以外の産業にも販路を広げ、県内の主産業として発展し地域経済の発展や雇用などにも貢献してきた。

 

 一方で、戦後復興や高度経済成長期には、拡大する木材需要に対応するため木材貿易完全自由化が進み、外材との競合が激化した。近年は木材を使用する住宅が減り、住宅着工数も減少傾向をたどっている。

 

 県林業統計によると、1965(昭和40)年の奈良県の素材生産量は約109万立方メートルであったが、2020年では約16万立方メートルにまで減っている。また、少子高齢化や人手不足で林業従事者の確保が難しいなど事業環境は厳しい。

 

 「森林整備をしっかりとすることは土砂の流出を防ぐなど防災にも役立つ。森林環境譲与税などの仕組みは良い制度であるが、林業従事者は関連する補助金に依存した経営となってしまっている側面があり、木材を適正な価格で販売し事業収益を安定化させることが課題」(黒滝村森林組合副組合長、中井龍彦氏)。

 

 建築用部材以外でも家具や日用雑貨品、バイオマス発電用の木質チップなど産業の裾野を広げて補助金に依存せずに自立した経営を目指して意欲的に取り組んでいる企業もある。行政には補助金などの支援のほかにビジネスマッチングによる機会創出や後継者・作業員の確保など人材面の支援も求められる。

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