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明治時代に和歌山県串本沖で沈没したオスマントルコ軍艦の木製遺物 劣化を懸念し奈良大学が保存処理へ

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奈良大で保存処理する木製滑車について説明する今津学長(後方はトゥランル氏)=20日、奈良市山陵町の同大

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滑車など約30点

 

 奈良大学(今津節生学長)は20日、1890(明治23)年に和歌山県串本沖で座礁沈没したオスマントルコの軍艦エルトゥールル号の滑車など木製遺物約30点の保存処理を行うと発表した。同大が有する技術が木製品などの保存に適していることから実現した。遺物の状態を調査した上で同大内で保存処理が進められる。

 

 エルトゥールル号の事故では、座礁した際に動力機関に浸水、爆発が起きたことなどで500人以上の乗組員が殉職した。その一方で、地元住民が約70人を救出し、以後の日本とトルコの友好関係が深まるきっかけにもなった。

 

 トルコ政府は2007年から、海洋考古学者のトゥファン・トゥランル、ベルタ・リエド夫妻を中心とする調査団を編成して遭難の現地で遺物調査を開始。これまで約8000点が引き上げられ、和歌山県串本町にあるエルトゥールル・リサーチセンターで金属、ガラス、陶器などを中心に保存処理が行われてきた。

 

 ただ木製遺物は保存処理が進んでおらず、文化財科学・保存科学を専門とする今津学長が18年に同センターを訪問した際、木材と金属が複合した滑車の保存状態を憂慮。昨年の再訪で劣化が進んでいることが分かり、トゥランル氏に奈良大での保存処理を提案し、トルコから遺品の保管管理をまかされる串本町の許可を得て実施が決まった。

 

 保存処理されるのは、本体が木製で内部の鉄の輪を鉄の棒と銅製ワッシャーで固定している滑車(長さ約65センチ、幅約35センチ、厚さ約20センチ、重さ約10キロ)を含む、使用部位不明の木の破片33点。

 

 今津学長らが研究開発し、同様の遺物で実績を重ねている、木材と金属の複合物に適したトレハロース(糖類の一種)の溶液を使った保存処理が行われる。溶液の濃度を段階的に変え、乾燥させるまでの一連の保存処理工程は、滑車で半年程度かかる見込み。非常にもろい状態になっているため調査と作業は同大教員と保存科学を学ぶ学生らで慎重に進められるという。

 

 処理終了後はエルトゥールル号の事案や、その後の日本とトルコの多方面での友好関係をより広くの人々知ってもらうために一般公開も検討する。

 

 トゥランル氏は「文化的交流が分かる遺物の保存処理を行ってくれることに感謝している。保存処理やエルトゥールル号に関する研究成果を次代を担う子どもたちにも伝えていきたい」と意欲。今津学長は「日本、トルコ親交の原点であるエルトゥールル号に関する遺物の保存処理が、友好関係が続く一助になれば」と話している。

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