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奈良マラソン「チーム サチオ」で亡き友への思い胸に 滋賀の曽根さんペアと平野さん、特製Tシャツで完走

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亡き友人、幸男さんの追悼の思いを込め、そろいのTシャツで奈良マラソンに出場した曽根圭介さん(中央)と横田麻美さん(右)、幸男さん行きつけの居酒屋店主、平野豊之さん=10日、奈良市法蓮佐保山4のロートフィールド奈良

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 湧き上がる声援。鳴り物や拍手…。4年ぶり完全な形で復活した奈良マラソン。ランナー、曽根圭介さん(39)=滋賀県守山市=は、にぎやかな沿道のどこかからか、亡き友、筑田幸男(ちくだ・さちお)さん(享年39)がいつものように声援を送ってくれると信じ、走った。「サチオ、見てくれてるよな」―。

 

 筑田さんが小学校3年の時大津市に転居して以来の長い付き合い。中学時代のバスケ部は筑田さんがキャプテン、曽根さんが副キャプテンだった。

 

 高校は離れたが二人の関係が途絶えることはなく、自営の道を歩み始めた曽根さんと婚約者の横田麻美さん(39)のデートも「3人連れ」。行きつけの居酒屋「遊心亭」店主の平野豊之さん(61)の誘いで曽根さんがマラソンを始めると今度はいつも応援に駆けつけてくれた。

 

 筑田さんが急逝したのは今年8月19日。7月上旬に腎臓の疾患が見つかり、治療を始める矢先のことで、曽根さんは「人懐っこくて誰とでもすぐ打ち解けられた。どこに行ってもあいつとの思い出がついてくる。まだ涙ばっかりです」。横田さんも「いつもノックもせずに飛び込んできた。今でも扉を開けて『おうっ』て来るんじゃないか」と寂しさを分かち合う。

 

 奈良マラソンには筑田さんとの友情を形にと同級生らで製作したTシャツで参加。胸には筑田さんの愛犬の絵。背中には筑田さんのはちきれそうな笑顔と、「チームサチオ」の文字。筑田さんの父正男さん(73)の短歌「親よりも先に逝くなよ アホンダラ 涙の湖(うみ)で父母はもがきぬ」と、誕生日を示す「53」、命日の「2023・8・19」の数字がプリントされている。出場を予定していた奈良マラソンで「追悼の走りをしよう」と横田さん、平野さんと3人で走り抜き、平野さんは4時間50分、曽根さんと横田さんは5時間34分で時間内に見事ゴールを果たした。

 

 走り終えた曽根さんは「サチオの後押しで完走できた。走っている途中で何度も助けられた気がした。ゴールできて喜んでくれていると思う」と疲労困憊(こんぱい)で座り込みながらも笑顔を見せた。 

 

 亡き息子の代わりに駆けつけ沿道で声援を送った正男さんと母ひろこさん(73)は「来てよかった。私たちの希望になった。最後まで頑張ってくれて本当にうれしい。息子も奈良のどこかで応援していたと思う」と友人たちの思いに、目に涙を浮かべて感謝した。

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