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大和・河内を結ぶ要衝の地を守る風の神 - 龍田大社・大和古社寺巡礼 009

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龍田大社(龍田坐天御柱国御柱神社)

 ※社寺名は、基本的に現在使われている名称によりました。

 ※( )内は、神社は『延喜式』神名帳による表記、寺院は史料にみえる表記です。

 ※記事中の写真の無断転載を禁止します。

 

  第10代崇神天皇の創祀(そうし)と伝えられ、天武天皇の御代からは廣瀬神社とともに国家による定期的な祭祀が続けられた古社で、ご祭神は天地の気をつかさどる風の神さま。

 

龍田山の麓で、風の神を祀る龍田大社

エリア/生駒郡三郷町

 

主祭神/天御柱大神・国御柱大神

 

ご霊験/健康長寿・美気流行・心気健勝

 

 

ご由緒

 平安時代の『延喜式』祝詞の「龍田風神祭」によると、第10代・崇神天皇の御代に凶作や疫病流行がありましたが、天皇の夢に現れた神のお告げ(「吾が宮は朝日の日向かふ処、夕日の日隠る処の、龍田の立野の小野に、吾が宮は定めまつりて、吾が前を称辞(たたえごと)竟(お)へまつらば、天の下の公民の作り作る物は、五(いつくさ)の穀(たなつもの)を始めて、草の片葉に至るまで、成し幸はへまつらむ」)に従って、社殿を造営すると世が平安になりました。これが龍田大社の創祀とされています。

 

 天武天皇の御代には、廣瀬の大忌祭と並んで龍田の風神祭が国家の祭祀として定期的に斎行されたことが、『日本書紀』に「風神を龍田の立野に祀(まつ)らしむ…大忌神を廣瀬の河曲に祭らしむ(4年4月条)」「龍田の風神・廣瀬の大忌神を祭る(5年4月条)」などと記されています。

 

 また平安時代の『延喜式』四時祭式からも、龍田風神祭と廣瀬の大忌祭が、それぞれ4月と7月の年2回斎行されていたことが分かります。

 

 龍田大社の創祀の頃には、現社地ではなく龍田山で祭祀が行われていたとも考えられています。御座峰(ござがみね)は風神の降臨地とされる聖地であり、中腹には本宮跡(旧社殿地)があり、磐座(いわくら)が点在しています。

 

「龍田本宮」(江戸時代/奈良県立図書情報館蔵) 出典:同館まほろばライブラリー

 江戸時代に描かれた絵図では、鳥居から続く参道は現在と同じですが、当時は拝殿前に舞殿、拝殿左手には多宝塔がありました。

 

 

主祭神

天御柱大神(あめのみはしらのおおかみ) 別名:志那都比古神(しなつひこのかみ)

国御柱大神(くにのみはしらのおおかみ) 別名:志那都比売神(しなつひめのかみ)

 天地の間の大気・生気・風力をつかさどり、万物生成の「気」を守護する風の神で、別名の志那(しな)は「息長」(息が長い)で、長寿を意味しています。

 

 

境内参拝・気が付かなければ…

※📸は撮影ポイント

 

大鳥居 📸

 龍田大社の鳥居は、稚児柱を持つ両部鳥居です。両部鳥居は神仏習合による鳥居の形だとされています。龍田大社には、かつて神宮寺としての東一坊がありました。

神仏習合による鳥居の形だとされる両部鳥居

 

奉納の灯籠

 鳥居の周辺にはひときわ大きい石灯籠が並んでいます。「龍田本宮 永代常夜燈 海上安全 大坂 江戸廻酒諸荷物 積問屋仲間 天保三壬辰(1832)年九月」と記され、奉納者の職業からも風の神様としての龍田大社への信仰を知ることができます。

鳥居周辺に建立されている石灯籠

 

手水舎 📸

 手水舎に季節に応じた花が添えられているのも、風情があります。手水は略式の禊(みそぎ)です。参拝の前に、作法に基づいて…。

季節に応じた花が添えられている手水舎

 

 また手水舎の手前にあるしめ縄で囲まれた石は、浄化石です。

しめ縄で囲まれた浄化石

 

狛犬

 参道を進むと石の階段があり、左右に古風で表情豊かな狛犬(こまいぬ)が出迎えてくれます。

参拝者を出迎える古風で表情豊かな狛犬

拝殿

 拝殿から正面に見えるのは祝詞殿(祝詞奏上のための建物)です。その奥にご本殿が鎮座します。

拝殿から正面に見える祝詞殿

 

 拝殿の柱に巻き付けられているしめ縄は龍を表現しています。木の板には、となえことば「ゆらゆらと祓(はら)ひ ゆれゆれと祓ふ ひれひれと清め ひらひらと清め給へ」が記されています。

龍を表現した拝殿の柱に巻き付けられたしめ縄

 拝殿の前で 二礼二拍手・となえことば奏上・二拍手一礼のお作法で参拝。

 

本殿

 祝詞殿の奥の向かって左に天御柱大神、右に国御柱大神がお祭りされています。

 

 また祝詞殿の前の向かって左手には摂社として龍田比古命、龍田比売命が、右手には末社として天照大御神、住吉大神、枚岡大神、春日大神、高望王妃(平家の祖先)がそれぞれお祭りされています。

 

 拝殿を左に回ると、ご本殿・祝詞殿の前庭が良く拝見できる場所があります。

拝殿を左に回ると拝見できるご本殿・祝詞殿の前庭

 

 さらに左手に向かい、境内社にお参りしましょう。

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