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聖徳太子の理想伝える世界最古の現存木造建築 - 法隆寺・大和古社寺巡礼 004

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法隆寺

 ※社寺名は、基本的に現在使われている名称によりました。

 ※( )内は、神社は『延喜式』神名帳による表記、寺院は史料にみえる表記です。

 ※記事中の写真の無断転載を禁止します。

 

 推古天皇と聖徳太子が、斑鳩宮の地に建立した寺院で、現存する世界最古の木造建築物群として知られ、飛鳥時代以来の数多くの仏像、建築物等の文化財を有しています。

 

夕暮れの斑鳩の里‐法隆寺五重塔

 

 エリア/斑鳩町

 

 ご本尊/釈迦如来(飛鳥時代)

 

 ご霊験(ご利益)/諸願成就ほか

 

 宗 派/聖徳宗

 

 

ご由緒

 十七条憲法や冠位十二階などを制定し、仏教興隆にも尽くされた聖徳太子は、推古天皇9(601)年に斑鳩宮を造営。この地に、推古天皇と聖徳太子が用明天皇の菩提(ぼだい)のために建立した寺院が法隆寺です。創建時期は、金堂の薬師如来像光背銘や『上宮聖徳法王帝説』から推古15(607)年とされています。

 

 『日本書紀』には、天智9(670)年に被災したことが記されています。これは最初の伽藍(がらん)「若草伽藍」で、その後まもなく現在の西院伽藍が再建されており、世界最古の木造建築物群として知られています。

 

 金堂や大宝蔵院などには釈迦三尊像、百済観音像や玉虫厨子をはじめ、飛鳥時代以来の数多くの仏像や文化財が伝えられています。

 

 また聖徳太子の没後、ほどなくして太子に対する信仰が生まれ、奈良時代には斑鳩宮跡に夢殿が建立されました(東院伽藍)。聖武天皇の皇后である光明皇后も太子をあつく敬われ、寄進もされています。

 

 平成5(1993)年には「法隆寺地域の仏教建造物」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。

 

「大和國法隆寺大伽藍寺院境内之圖」(江戸時代/奈良県立図書情報館蔵)
出典:同館まほろばデジタルライブラリー

 

 江戸時代の法隆寺西院伽藍の図です。南大門をはじめ金堂、五重塔、経蔵、講堂、聖霊院、食堂などを細かく描いています。坊中は、塔頭(たっちゅう)寺院のことです。

 

 

ご本尊

釈迦如来

 金堂の本尊は、仏教の開祖・釈迦牟尼世尊。釈迦三尊像(飛鳥時代・国宝)は、鞍作止利(くらつくりのとり)の作として知られています。化仏が配された光背は唐草文や渦巻文が力強く描かれています。

 

 

境内参拝・気が付かなければ…

 ※📸は撮影ポイント 

 

龍田道の道標と旧参道の燈籠 📸 

 国道25号沿いに「聖徳宗総本山法隆寺」の大きな石標があるので、ここから北の参道はよく知られています。しかし国道の南にも実は松並木の参道の続きがあり、昔の龍田道につながっています。

 

 そこには「右 いせ…左 京…」という道標や、「天保十二(1841)年」「天保十三(1842)年」の紀年銘がある石灯籠が立ち、往時をしのばせてくれます。

 

「右 いせ…/左 京…」と刻まれた道標
「天保十二年」「天保十三年」の紀年銘がある石灯籠

 

奈良丸顕彰碑

 明治時代の浪曲界で人気を博した浪曲家・吉田奈良丸(初代)は、斑鳩町の隣町、広陵町で生まれ、明治30(1897)年から法隆寺の門前町で後進の指導にあたりました。参道脇の住居跡には今も顕彰碑が立っています。

 

 

南大門前の鯛石

 南大門(国宝、室町時代)の前には鯛(たい)の形だと伝わる「鯛石」が埋め込まれています。法隆寺の七不思議の一つに数えられ、昔、大和川の氾濫による洪水が起こった時にも、この鯛石より先には水がこなかったと伝えられています。

 

南大門から中門 📸

 南大門から中門(国宝、飛鳥時代)方面を望む景色は、まるで飛鳥時代の空間にタイムスリップしたような錯覚を覚えさせてくれます。

 

手水舎 📸

 中門手前の手水舎の龍は、顔はもとより胴体からしっぽの先まで実にリアルな姿。龍は水をつかさどる神様の象徴…

 

西円堂 📸

 西円堂(国宝、鎌倉時代)は、夢殿と同じ八角形のお堂に薬師如来(奈良時代・国宝)を祀(まつ)り、霊験あらたかな峯の薬師として知られます。

 

 ここのエリアからは、五重塔と金堂、また遠くには大和三山を眺めることができます。メーンの参拝コースから離れていますが、ぜひ訪ねてください。

 

西円堂から飛鳥方面を眺めると、大和三山が。写真は畝傍山。

 

金堂

 金堂の外観を見れば、教科書でも見覚えのある飛鳥時代の様式の高欄(卍崩しと人字型の割束〈わりづか〉)があり、時代の雰囲気を伝えてくれています。

 

 法隆寺の本尊は釈迦如来。宝前では「南無釈迦牟尼仏」と称えて礼拝しましょう。

 

 金堂には、聖徳太子のために「尺寸王身(太子と等身)」で造像された釈迦三尊像(国宝、飛鳥時代)のほかに、太子の父・用明天皇のために造像され、法隆寺創建の端緒となった薬師如来座像(国宝、飛鳥時代)や阿弥陀如来座像(国重要文化財、鎌倉時代)が祀られています。

 

 また須弥壇(しゅみだん)の四隅の四天王像(国宝、飛鳥時代)は、現存日本最古の四天王像。邪鬼の背に、物静かに立つ姿が魅力的です。

 

 金堂の周囲に描かれた壁画のなかでは西側の阿弥陀浄土図がよく知られています。天蓋(てんがい)の下の阿弥陀如来と観音・勢至(せいし)菩薩が、美しい線と陰影法によって立体的に描かれています。

 

 昭和24(1949)年1月26日の焼損後は再現画となっていますが、現在、「法隆寺金堂壁画写真ガラス原板デジタルビューア」(https://horyuji-kondohekiga.jp/)によって、往時の壁画を詳しく見ることができます。

 

五重塔〜講堂

 塔は仏教の開祖・釈尊の仏舎利(遺骨)を安置する重要な建物で、塔心礎のなかの舎利容器に仏舎利が納められています。五重塔の初層の4面には、釈尊の物語りを多くの塑像で表しています。

 

 また塔上部の相輪には、なぜか四方に鎌が取り付けられています。雷よけのためだともいわれています。

 

法隆寺五重塔模型(東京国立博物館蔵/出典:ColBase〈https://colbase.nich.go.jp/〉)と相輪図(「月刊大和路ならら」281号より転載)

 

 

 大講堂には薬師如来が祀られています。大講堂から南を向けば、金堂と塔の姿が美しく望めることができます。

 

 諸堂を囲む回廊にはエンタシスの柱がリズムよく並び、法隆寺ならではの美しさです。📸

 

聖霊院

 僧房であった東室(国宝、飛鳥時代)の南部分を改造した聖霊院は、聖徳太子の尊像(国宝、平安時代)を安置し、祀っています。この太子の像は、勝鬘(しょうまん)経を講義する姿を写したとされています。

 

大宝蔵院

 法隆寺に伝来する数多くの宝物が納められ、公開されています。

 

 法隆寺には39件138点の国宝と、155件2354点の国重要文化財を有しています(令和2年4月現在)。

 

夢殿 📸

 夢殿(国宝、奈良時代)は天平11(739)年創建の八角円堂。屋根の上の舎利瓶の形の露盤が、目を引きます。聖徳太子の宮跡の荒廃を憂えた奈良時代の僧・行信が創建しました。

 

 夢殿の本尊・救世観音は北魏様式の仏像で、不思議な笑みをたたえています。特別開帳は春季4月11日〜5月18日、秋季10月22日〜11月22日。明治までは絶対の秘仏とされていましたが、明治17(1884)年、岡倉天心とフェノロサが初めて像を拝したことはよく知られています。

 

 

歴史のなかの法隆寺

薬師如来座像の光背銘文

 「池邊大宮治天下天皇 大御身 勞賜時 歳/

 

  次丙午年 召於大王天皇與太子 而誓願賜我大/

 

  御病太平欲坐故 将造寺薬師像作仕奉詔 然/

 

  當時 崩賜造不堪 小治田大宮治天下大王天/

 

  皇及東宮聖王 大命受賜而歳次丁卯年仕奉」

 

 《読み》池辺(いけのべ)の大宮に天(あめ)の下治(しら)しめしし天皇(すめらみこと=用明天皇)、大御身労(いたつ)き賜ひし時、歳(ほし)は丙午に次(やど)りし年に大王天皇〈推古天皇〉と太子〈聖徳太子〉を召して誓願し賜はく、「我が大御病太平(たいら)きなんと欲し坐す、故、将に寺を造り薬師像を作り仕え奉らんとす」と詔りたまひき、然れども当時(そのかみ)に崩(さ)り賜ひて、造り堪(あ)えざれば、小治田大宮に天の下治しめしし大王天皇〈推古天皇〉及び東宮聖王〈聖徳太子〉は大命(おほみこと)を受け賜はりて、歳は丁卯に次りし年〈推古15年〉に仕え奉りき。

 

 金堂の薬師如来座像光背にある銘文には、用明天皇が病気平癒祈願のために薬師如来と寺を造ることを発願されたが崩御、その遺志を継いだ聖徳太子と推古天皇によって、推古15(607)年に完成したことが記されています。

 

 ただ銘文のなかに「大王天皇」表現があることなどから、推古朝以降の造像だとも考えられています。

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(写真枚数:7枚)

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