【解説】高度な技術に驚き 専門家の想定を超え - 富雄丸山古墳
奈良市の富雄丸山古墳から発見された想像だにしなかった異例の盾形銅鏡と、国内最長、最古にして鉄剣としても東アジア最長となる巨大な蛇行剣。
驚くのはその製造技術。盾形銅鏡に施された文様は繊細で、盾や鏡の文様を組み合わせた創造力とデザイン力も素晴らしい。2メートルを超す長大な蛇行剣もどのように作ったのか。これらの技術力は専門家の想定をも超え、早くも「古墳時代の金属工芸の最高傑作」とも評価される。今後は保存処理が進められるが、公開に向けた環境整備が望まれる。
類まれなる二つの考古遺物が見つかったのは日本最大の円墳。しかも墳丘中心からではなく、最古級とされる「造り出し」の埋葬施設からだった。両者の器物は強力な辟邪の思想が反映していると専門家は指摘する。守護された被葬者はどんな人物だったのか。5カ年計画の最終年度だった奈良市教育委員会の発掘調査は、今後の調査継続が決まった。解明の進展が期待される。
粘土で棺(ひつぎ)を覆った粘土槨の発掘調査は、県内では2000年の鴨都波1号墳(御所市)以来とみられる。粘土槨の調査は難易度が高いといい、調査技術の継承という上でも貴重な機会となった。
最古、最長、最大、最高の文字が並ぶ今回の発見。年のはじめの1月にして23年考古学シーンに最強のインパクトを与えた。文化財の保存・活用について県民の機運醸成につなげたいところだ。(竹内稔人)