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Vチューバーも登場 効果的に「情報発信」強化 奈良県の新・広報戦略

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デジタル化を推進

 2023年4月の統一地方選で現職候補らを破って初当選した山下真知事。就任会見で大型事業の見直し断行を表明し注目を集めたが、この時点で既に新たな試みとして実施されていたのがインターネットによる会見の生配信。従来の録画より速報性が高く、情報発信力の向上、視聴者の増加を狙った取り組みだ。山下知事は議会答弁でも県政の課題解決には広報の充実が大切と繰り返し説明。初めての民間出身知事をアピール、県民目線での県政改革を訴える同知事にとって、効果的な情報発信の強化は欠かせない施策となっている。デジタル技術の活用とも連携した県の新たな広報戦略を見てみた。

 

 23年5月に就任した山下知事は「県民に対する県政情報の発信は県政に対する理解を深め、郷土への愛着や誇りを育むために重要」と強調。より効果的な広報、情報発信の推進に取り組んでいる。

 

 ただ情報を発信する媒体については、若年層(10代〜30代)のテレビ、新聞離れなどが進んでいることから、これまでの「県の主な情報発信ツール」と現在の「若年層の情報入手ツール」の間にミスマッチも指摘されている。

 

 県広報広聴課が毎年、県民から会員を募って実施している「県民Webアンケート」で、県の広報媒体について聞いた質問(複数回答)では、県政に関する情報の入手先を既存メディアと答えた人の割合が減少または横ばい傾向だったのに対し、県公式SNSを挙げた人は2014年の2・0%から、22年は14・5%まで大きく増加。

 

県政に関する情報の入手先(複数回答)

 

 こうした状況を踏まえて県は、若年層が主な情報収集の手段としているSNSやインターネットの活用に力を入れ、現在は4種類の公式SNS(X、LINE、Facebook、YouTube)を運用。知事定例記者会見をYouTubeでライブ配信するなど積極的に県政情報を発信している。

 

 また新たな取り組みとして「県広報担当Vチューバー」を創案。県民に愛されるキャラクターを生み出すため、昨年7月からデザインを公募、県民投票を行った上で10月31日にグランプリ作品を決め、公表した。現在は引き続き愛称選考を進めており、今年3月には愛称とともに完成動画が披露される。

 

 来年度からは、このVチューバーをナビゲーターとした県政PR動画の制作やVチューバー専用のXを新設するなど、若年層を含む県民に、県政に関心を持ってもらえる工夫を重ねながら情報発信していく。

 

 

来年度から本格運用へ 「奈良スーパーアプリ」

 情報発信のデジタル化対応で県は、他府県に先駆けて2016年7月からスマートフォンやタブレット端末で県内の情報を閲覧できる無料アプリ「ナラプラス」のサービスを開始。県政の主要課題や緊急災害情報から、県内おでかけ情報、グルメ情報、健康情報まで県や市町村のニュースを毎日配信している。

 

 さらに来年度から新たな総合プラットフォームとなる「奈良スーパーアプリ」の本格運用を予定し、現在開発を進めており、「ナラプラス」の機能も同アプリに統合する。

 

 奈良スーパーアプリは県や市町村のニーズも踏まえて機能を順次拡充していく計画だが、本年度末までの構築機能では、住民への情報発信機能・施設予約機能・汎用的な電子申請機能と、その処理を職員側で行うワークフロー機能を中心に実装する予定。

 

 具体的にはデータ連携のための基盤を構築し、その上に各種の機能を付加していく予定で、行政機関の窓口に出向かなくても、手元のスマートフォンで手続が完結することを目指す。現在利用している電子申請システム「e古都なら」の後継システムとなる。

 

 情報発信機能では、利用者が登録した属性に合わせて各種の情報を発信。関心の高い情報にアクセスしやすくなる。

 

 奈良スーパーアプリは、パソコンやスマートフォンなど、さまざまな端末にも対応している「ウェブサービス」で、手軽に使えるのが利点。多機能化と併せ「ナラプラス」を超える普及が期待されている。

 

開発中の「奈良スーパーアプリ」プラットフォーム画面

 

 

YouTubeで活躍を 「Vチューバー」

 Vチューバーは動画投稿サイト「YouTube」で情報を発信する仮想のキャラクター。10〜30歳代の若年層に人気があるといい、他府県では茨城県や岩手県が既に活用、茨城県の動画サイト「いばキラTV」は約16万人超がチャンネル登録しているという。

 

 県の公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@naraprefkoho)の登録者数は約1710人(昨年12月28日現在)にとどまっており、Vチューバー導入による発信力の強化が期待される。

 

 デザインは全国を対象に募集。寄せられた363点の中から県庁の若手職員らが審査を行い、天平衣装や鹿をモチーフにしたキャラクター3作品を選定。さらに、その中から一般投票でグランプリを選出した。

 

 グランプリを受賞したのは県出身のイラストレーター「塩かずのこ」さんの作品で、鹿や若草色など奈良を想起させるデザインのキャラクター。県は愛称も募集、3月に発表する。

 

 山下真知事は県の公式マスコットキャラクター「せんとくん」との役割分担ついて「せんとくんはしゃべらないキャラクター。せんとくんにはどっしりと構えてもらい(Vチューバー)と静と動で役割分担してもらえれば」と説明。「県の広報は堅いイメージがある。Vチューバーを通じて若い世代が県の広報を見て、県政に関心を持ってもらえれば」と期待を寄せている。

Vチューバー募集で363点の中から選ばれたグランプリ作品

 

 

全戸配布の広報ツール「県民だより」

 県が発行する広報誌「県民だより」は、県の施策や事業、イベントなどを県民に分かりやすく伝えるのが目的。県民の県政への興味と理解を深め、県政への参加意識、イベントへの誘客の促進を図るとともに、県民の郷土意識も高めるのが狙いで、毎月1日付で発行されている。

 

 紙媒体の「県民だより」は毎号約58万部を発行、県内の全戸に配布しており、県政情報を発信する最大の広報ツールとなっている。内容は28ページ建てで、県民の目線に立って分かりやすく県の主要施策などを紹介。また紙の広報誌だけでなく、スマホアプリ「ナラプラス」「マチイロ」やポータルサイト「nara―ebooks」を活用し、電子書籍版の配信も行われている。

県広報誌「県民だより」最新号

 

 

4種類運用、各課から発信 「SNS」

 SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)はインターネットを使い、登録者同士が交流する会員制サービス。地域やグループなど、仲間同士のコミュニケーションに利用されているほか、企業や組織、団体の広報にも活用が広がっている。

 

 県も公式SNSとして、X(旧Twitter)▽LINE▽Facebook▽YouTube―の4種類を運用。さらに画像などを投稿する「Instagram」、ショートムービーのプラットフォーム「TikTok」の導入も始まっている。

 

 総合情報は「まるごと奈良県」(Facebook)▽「奈良県公式」(X)▽「奈良県」(LINE)で発信。YouTubeの「奈良県公式総合チャンネル」(https://www.youtube.com/@naraprefkoho)では、知事の定例記者会見や奈良テレビで放送された「県政フラッシュ」などの番組のアーカイブ配信も行っている。

 

奈良県総合SNS

 

◆「偽アカウント」に注意

 

 また各課や職員がSNSを活用する場面を想定した「県ソーシャルメディア利用ガイドライン」も策定し、適切な利用を促している。

 

 ただSNSでは偽アカウントによる成りすましなどトラブルが発生するリスクがあり、厳重注意が必要。実際に県は昨年12月、県の公式Xアカウントに成りすました「偽アカウント」が確認されたと公表。本物と酷似した偽アカウントの画像も公開し、偽アカウントからのフォローを確認した場合はブロックする▽DM(ダイレクトメッセージ)に記載のあるURLをクリックしない―など注意を呼びかけている。

県公式Xの「偽アカウント」が確認され、県が注意を呼びかけ(昨年12月7日時点の画像)

 

 

観光動画が優秀賞受賞 「TikTok」

 県公式SNSで昨年、注目を集めたのが県観光プロモーション課が発信する「TikTok」の動画「洞川」。昨年11月、TikTok Japan主催のパブリックセクター・ショートムービー・アワードで優秀賞に選ばれた。

 

 「TikTok」はモバイル向けショートムービーのプラットフォーム。同課はコロナ禍でSNSを活用した情報発信に取り組んできた実績を踏まえ、感染拡大が落ち着いてきた22年10月18日から、若年層に対する訴求力が高いTikTokの運用を開始。フォロワー数は7400(昨年12月現在)を超えており、若者だけでなく幅広い年齢層に向けて、県全域の情報を発信している。

 

 動画制作は県が公募した事業者と同課職員が相談、月2本程度のペースで情報発信している。

 

 洞川温泉の動画は、情緒あふれる同温泉街やトロッコ列車をはじめとした、洞川温泉の魅力を発信。再生回数は12月半ばまでに70万回を超えた。

 

 今回のアワードは自治体など公的セクターを対象に初めて実施された表彰で、洞川の動画を含む8件を最終選考に選出。さらにその中から、地域の魅力を短時間で表現した点が評価されて、「洞川」が優秀賞受賞となった。

 

 同課担当者は「県観光の穴場など、今後も県内の魅力をPRしていきたい」と話している。

 

動画「洞川」が優秀賞を受賞した県プロモーション課のTikTok画面

 

 

ほかにも、こんなにたくさん! その他の奈良県公式SNS

その他の奈良県公式SNSはこちら≫≫ 奈良県のソーシャルメディア(SNSリンク一覧)

 

奈良県が発信する公式SNSの一覧

 

2024年1月1日付・奈良新聞に掲載

 

 

 

 

 

 

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