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金曜時評

公共インフラ一考 税金は有効に使え - 編集委員 辻 恵介

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 世界各地で紛争が起こり、乳児や子どもたちが毎日犠牲になっている現実に、無力感にさいなまれる日々。一方、国内では年頭の能登半島地震から1カ月半を経て、被災地で復興への歩みが進む。だが、最大の公共インフラともいうべき水道の復旧工事は、懸命に続けられているものの、難航しているようだ。生活再建の険しい道を歩もうと、風雪に耐えながら立ち上がる能登の被災者に、思いを馳せる国民も多いことだろう。

 

 ところで公共インフラと言えば、電気、水道、ガスなど生活に不可欠なものであるが、そこに新しい要素を加えられないかと最近考えている。それは介護や流通など、人材不足に悩む業界への、人材確保のための財政的な支援強化だ。

 

 高齢化社会を支える介護従事者、地域住民の足を支える地方鉄道・バス・タクシー、宅配などを含むトラック輸送などの運転士(手)らへの給与面での支援だ。事業者にまとめて支給しても、末端の従業員にまで届かない可能性がある。ならば、専用口座を開設、あるいはマイナカード(既に登録した人)などで対応できないものか。

 

 この国の未来、社会を支えると言っても過言ではない、こうした業界に対して、限界を感じている中小零細の事業者や従業員に対して、国が支える仕組みを考えるべき時が来ているのではないか。

 

 大阪府南部の金剛バスの廃業(昨年12月20日)は、住民のニーズがあるのに運転手の安定した確保が見通せないことから、事業の継続を断念したと聞く。

 

 県内では、奈良・生駒両市で進む路線バスの再編計画をめぐって、住民が立ち上がっている。「住民も公共交通のあり方について一緒に考えよう」と、1月28日に生駒市内で「公共交通問題シンポジウム」が開かれた。路線維持のため、バス利用促進の取り組みを行い、利用者が12%増えた成果などが報告されたという。

 

 一方、残業によって、何とか生活を維持し続けてきたトラック運転手などが、「働き方改革」の名のもとに、残業の見直しによる収入減などで、さらにしんどい思いを強いられるのは忍びがたい。

 

 一部の政治家には安易に「自助努力」という言葉を使う人がいるが、介護・交通・運輸などの分野には、思い切った「公助」が必要に思う。給与アップと労働環境改善の両面で、若い人材が集まるような政策を打ち出してほしい。

 

 社会生活を支えてもらっていることに感謝しつつ、税金が有効に使われることを切に願う。

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