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金曜時評

観光振興のこれから 英会話も観光資源 - 編集委員 松岡 智

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 「日本人は意外に英語を話せる人が少ない」。今春、国家の研修事業や世界旅行で県、日本を訪れた外国人が似た感想を語るのを見聞きした。教育レベルが高いと思っていた国での期待と失望からの言葉だろう。中学、高校を中心に英語を長く学びながら話せないとの課題が言われて久しい。国も数々の方策を講じているが、状況は大きく変わっていないようだ。

 

 英語教育の専門家は、習った英語を使う機会が少ないこと、完璧に話せないと恥ずかしく思う日本人気質を理由に挙げる。これらも長らく指摘されてきたことだが、観光振興を大きく掲げる奈良では、足らずは好機ともなる。

 

 県のビジターセンターでは、訪日客向けの英語での体験事業がある。元スタッフの話では、会話のストレスなく参加できる催しは評判がよく、SNS(交流サイト)や口コミで外国人の間で推薦されているという。言葉に困らず観光できることは、訪問先の魅力になり得るということだ。

 

 前知事は、訪日客を含む滞在型観光客の増加策として、宿泊施設の整備や食の分野などでの周遊型観光コンテンツの創出を進めた。では訪日客が県内滞在中、言葉に不自由せず地元の人と触れ合い、快適に過ごせることは優れたもてなし、観光資源になりはしないか。県内の英語関連事業者によれば、県内でも飲食店などで訪日客対応の基本となる英会話の講習の希望が増加傾向だという。一部自治体では事業者らを募って同様の講座を主催してもいる。これらは語学力が、海外からの誘客に有利と認識されているからに他ならない。

 

 必要に迫られた事業者らの英語使用拡大の一方、一般県民では子どもが鍵との声もある。外国人との会話で、子どもだと多少の文法上の誤りなら双方気にしないとの考えからだ。小学生から学ぶ英語の力、将来の可能性を高める面からも、訪日客との接点をつくるのは間違った方向ではない。

 

 県内どこでも、だれでも英語対応可能は幻想だろうか。多様な対話機会の創造が周囲に波及し、各人の英会話が磨かれるのを理想と切り捨てるなら、代わりに何を観光資源とするのか。他所との差別化、利点獲得は常に不可欠だ。

 

 新型コロナウイルスへの対応緩和、2025年の大阪・関西万博などで、訪日客の来県はさらに増えると予想される。事業者への国や県の助成、支援は数々あるが、前述のような取り組みへの補助も有益ではないか。今までにない観光振興の姿も見てみたい。

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