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金曜時評

G7広島サミット 被爆者の今の思い - 編集委員 辻 恵介

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 先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)が閉幕して10日余り。首相のおひざ元、人類最初の被爆地での開催とあって、核兵器廃絶の問題を議長国としてどう扱うのか期待が集まった。だが「『核兵器のない世界』実現という理想をG7で共有した」という“セレモニー”で終わってしまった。

 

 過去における国内開催のサミットは、さほど国民の注目度は高くなかったが、今回は広島ということで話題に上ることも多かった。さらに戦争当事国の指導者、ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃参加で、世界中から注目され、結果的に記憶に残るサミットとなったものの、核なき世界への関心度は薄れてしまった感がある。

 

 1945(昭和20)年8月の広島・長崎への原爆投下から78年もたつというのに、世界中には推計1万発を超す核弾頭が存在する。

 

 70(同45)年に国連加盟ほぼ全ての国・地域が参加する「核拡散防止条約(NPT)」という枠組みができて50年以上、5カ国(米、露、英、仏、中国)以外の国の核保有を認めないという状況が続いた。しかし、その後インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルを含む9カ国に核保有が広がった。

 

 そして、2021年には「核兵器禁止条約」が発効し、NPTの機能不全を受けて制定の動きが広がり、期待感も広がった。だが、核保有国、および米の核の傘に入る日本、NATO(北大西洋条約機構)諸国のいずれも不参加で、核軍縮につながる状況にはない。

 

 それだけに、今回の会合は被爆者との直接面会、慰霊碑への献花も行われたことで、被爆地ヒロシマ出身の首相に対して、一歩踏み込んだ提言も期待されたが、被爆者や関係者の積年の思いが届く形にはならなかった。

 

 首相が言う「被爆の実相」は、世界の指導者たちに、きちんと届いただろうか。これだけ多くのリーダーたちが一堂に会して、原爆資料館を見学した意義は大きい。これを機に、予算を組んで世界中の指導者たちを常時、原爆資料館に招くような外交的な政策が打ち出せないものだろうか。

 

 「ロシアによる核使用や威嚇には反対」と唱えるだけでは不十分、というのが、今回のサミットに対する多くの被爆者の感想ではないか。命あるうちに「核のない世界」に一歩でも近づくことを高齢の被爆者たちは切望する。

 

 15歳の時、長崎市内で被爆し、大阪府下で近くの小学校の語り部もしていた泉下の父なら、こう言うだろう。「はがゆかね」と。

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