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金曜時評

文化庁京都移転 東京一極化に風穴 - 編集委員 高瀬 法義

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 東京都から京都市に移転した文化庁が15日から、本格稼動を開始した。全13部署のうち、文化財関係などの6部署が移転。企画調整課や著作権課などの7部署は東京に残るほか、本来は移転対象の宗務課も世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題への対応のため、当面は東京で業務を続けるという。事実上の2拠点体制化となるが、中央省庁の地方移転は明治維新以来初めてだ。

 

 現状の東京一極化は人口集中やエネルギー不足などのほか、近年頻発する巨大災害へのリスク管理の観点からも問題が多い。その是正を目指して、2014年、当時の安倍晋三政権が政府機関の地方移転を打ち出した。自治体から誘致の提案を募り、16年に文化庁の京都移転方針が決まった。関西には国宝の約5割、重要文化財の約4割が集中。さらに25年には大阪・関西万博の開催を控え、海外への日本文化発信の拠点にふさわしい地といえる。

 

 本県にとっても国の文化財行政の拠点が近くなることで利便性が高まるが、多くの文化財を管理する県内の寺院関係者に聞くと手放しでは喜べないらしい。文化財の保護・修復に関しては、文化庁以外の省庁や国会議員らにも協力支援を求める必要がある。これまでは一度で関係機関を回られたが、今後は東京と京都で二度手間になるからだという。

 

 同じような問題は文化庁内部でも考えられる。昨年2月、京都に移転する文化庁の部署が東京庁舎から離れて業務を試行した。国会議員への政策の説明や会議などが計26回あった。しかし、ITに弱い国会議員らも多く、リモートで対応できたのはわずか3回だけだったという。今後、京都に移転した部署では東京に頻繁な出張を強いられ、多額な出張経費が生じる可能性がある。

 

 政府機関の地方移転を巡っては文化庁以外にも消費者庁や総務省統計局などの移転要望があったが、官僚の抵抗もありほとんど見送られた。実現したのは成果は消費者庁の徳島市への一部機能移転や、総務省統計局の和歌山市への統計データ利活用拠点開設などにとどまる。しかし、社会の少子高齢化が進むなか、地方活性化を図るためにも政府機関の地方分散は有効だ。

 

 今回の文化庁移転は150年に及ぶ政府機関の一極集中の歴史に風穴を開けたといえる。オンライン会議などを積極的に活用して、地方分散化の成功例となることを期待したい。

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