アトリビュートは属性や性質を指す言葉だが、西洋美術では描かれた人物を特定する材料となる。かぶとや盾が描かれていれば軍神マルス、黄金リンゴはビーナス、ワシは神々の王ゼウスといった具合。

　この季節にふさわしいボッティチェリの「春」は、190種もの草花を描いたといわれる庭園にベールをまとった6人の女性が立ち、左端の男性は手にしたつえからオリンポスの神々の一人、ヘルメスと分かる。

　政治の世界にアトリビュートを探すとすれば、荒井県政を象徴するのは県コンベンションセンターや奈良公園バスターミナル、なら歴史芸術文化村だろうか。

　一つ代をさかのぼって柿本善也氏のアトリビュートは県立万葉文化館だが、荒井正吾知事が同館併設の万葉古代学研究所を廃止したときの反動は大きかった。

　柿本氏が「研究所なしでは片肺飛行」と復活運動を展開、荒井知事に意見書を提出するなど、前知事と現知事の間で火花が飛んだ。

　今回の知事選で初当選した山下真氏は、荒井氏が進めた事業の見直しを旗印とする。予想される反動は、手腕の見せ所だろう。(増)