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金曜時評

県知事選 政策論争こそ必要 - 論説委員 増山 和樹

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 県内自民党の分裂と日本維新の会の参戦で注目を集める県知事選は、告示まで3週間を切った。全体の構図はまだ固まらないが、奈良県ではかつてない様相の知事選といえるだろう。維新公認で出馬予定の山下真氏は現県政を真っ向から否定しており、結果は奈良県を大きく変える可能性がある。

 

 今回の知事選には二つの焦点がある。一つは現職の荒井正吾氏が4期16年にわたって展開してきた県政の評価、もう一つは維新が大阪府外で初となる知事の椅子を取れるかどうかだ。2021年の衆院選比例代表では、維新が県内で18万3千票余りを獲得して約20万票の自民に迫り、立憲民主党には倍以上の差をつけた。

 

 維新が共同代表の吉村洋文大阪府知事の奈良県入りで前哨戦を盛り上げる中、自民は推薦を巡る党内の対立を解消できずにいる。県連が1月15日に推薦候補と決めた元総務官僚の新人、平木省氏は、いまだ上申した党本部の推薦を受けられていない。県連内には同じく党推薦を申請している荒井氏を支持する動きも出始めた。もはや両者の一本化は困難とみられるが、推薦問題を引きずったままでは「維新対自民」の構図を明確に描き出すのは難しい。

 

 推薦問題のもつれが解けないことに加え、平木氏が現県政を継承するのか変えるのか、見えないことも構図をあいまいにしている。「県民の声に耳を傾ける」「現場主義」など、「聞く力」をアピールして荒井氏と異なるリーダー像をアピールするが、継続を掲げる荒井氏と刷新を訴える山下氏の間に埋没してしまう可能性がある。継承する事業と変える部分を明確にし、48歳という若さで新しい担い手をアピールする方が有権者には分かりやすい。

 

 大阪などで勤務する奈良県の県外就業率は2020年で27.3%と全国で3番目に高いが、それでも低下傾向にある。知事選は県民の県政への関心を高め、県の将来像を語る絶好の機会でもある。県民が県政をきちんと評価し、将来像が描けるよう、地に足着いた政策論を戦わせてほしい。推薦騒ぎや陣取り合戦の中で県民が置き去りにされることがあってはならない。大阪と奈良は歴史も経済規模も大きく異なる。維新の候補擁立に戦々恐々とするばかりでなく、大阪における維新の政治も検証が必要だろう。

 

 知事選には共産党も候補擁立に動いている。告示日にどのような構図が生まれるにせよ、県民の一票がこれからの奈良を決める。

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