「振りむけば君がいて」。長年連れ添った夫婦がムーディーな旅を楽しむ。そんなイメージで旧国鉄が1981年に発売したのが「フルムーン夫婦グリーンパス」だった。

　それから40年あまり。JR各社はロングラン商品となっていたこのパスの販売を打ち切るという。背景にはニーズの変化と販売数の落ち込みがあるようだ。

　定年延長や共働き世帯の増加で、年配の夫婦がゆったり過ごせる時間は40年前に比べて減っている。生涯にわたって結婚を選択しない人も増えた。

　男性が前、女性が後ろで成り立つ「振りむけば君がいて」のキャッチフレーズには、社民党の福島瑞穂党首が政界進出前の著書でかみついていた。振り向く夫に妻があかんベしているイラストがあったように記憶する。

　振りむくまで君がいれば良い方で、そんな余裕もないまま早くに離婚する夫婦もいるだろう。

　他界されたが、県内の金属機器メーカーの会長は、晩年まで豪華寝台列車の旅など夫婦で旅行を楽しんでいた。夫婦は円満が良いのは今も昔も同じ。パスは終わるが、フルムーンの造語は残りそうだ。(増)