奈良にうまいものなし。奈良高畑に住んだ…
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奈良にうまいものなし。奈良高畑に住んだ文豪、志賀直哉の言葉とされる有名な一文だ。由来は志賀の随筆「奈良」で、正しくは「(奈良は)食ひものはうまい物のない所だ」と記している。
ただ、志賀は「蕨(わらび)粉や豆腐、雁擬(がんもどき)は評判が良い」とも書き、奈良の食べ物を全否定していない。が、いつのころか冒頭の一文がひとり歩きし、八十年余り経た今も奈良に対する「呪(しゅ)」のようになっている。
日本ミシュランタイヤは10日、飲食店の格付けガイド本「ミシュランガイド奈良 2022特別版」を来年5月に発売すると発表した。奈良県単独のガイド本は初めてだ。
ミシュランガイドは明治33年にフランスで創刊。都道府県単独の発行は5例目といい、伝統ある本に認められたと思うと誇らしい気分になる。
確かに奈良の名物といえる食べ物は少ない。それでも筆者が移り住んだ20年前に比べると、魅力ある店が増えた。
舌の肥えた匿名調査員たちがどんな評価を下すのか。志賀の呪縛を解き、「奈良にうまいものあり」といえるきっかけとなれば。(法)