イヌの鳴き声とオオカミの遠ぼえ、そこにシカの警告音「キャッキャッ」を混ぜるとどんな音になるのだろう。想像するのはちょっと難しい。

　JR西日本岡山支社が、シカが線路に侵入するのを防ごうと、三つの鳴き声を混合した忌避音の発生装置を車両に取り付け、効果を実験しているという。

　昨年秋に始めたところ、試験員が目撃するシカの数が半数近くに減ったというから効果は抜群のようだ。

　奈良公園ではこれからシカの出産シーズンで、夏にかけて親子の姿を見かけることも多くなる。公園デビューしたばかりの子鹿にとって、恐ろしいのは動物よりも車だろう。

　奈良公園では令和元年度も40頭のシカが交通事故の犠牲になった。やっと授かった子どもを交通事故で亡くした白ちゃんの物語は今も悲しい。

　シカは驚くと突然走り出すため、奈良公園の交通事故防止に忌避音は逆効果かもしれないが、事故多発地帯は毎年ほぼ決まっており、JR西の取り組みに何かヒントはないだろうか。もちろん、奈良公園周辺を走るドライバーは、自身の心に警告音を鳴らさねばならない。(増)