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奈良県経済 ことし一年を展望する 2024新春 - 奈良県内4商工会議所 会頭座談会

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 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行し、経済活動や日常生活は平時にほぼ戻った。奈良県内の観光地は、インバウンドをはじめ観光客であふれ、コロナ禍前のようなにぎわいを見せている。一方で、物価高や人手不足が大きな負担となり、事業者を苦しめている。デジタル化や働き方改革など、ビジネス環境も大きく変わりつつある。事業者にはどんな姿勢が求められ、どんな支援が必要か。新年を迎え、県内4商工会議所の会頭に座談会形式で語ってもらった。(文中敬称略、収録は昨年12月)

 

出席者

 

●奈良商工会議所 小山 新造会頭

 

●橿原商工会議所 森本 俊一会頭

 

●大和高田商工会議所 河村 憲一会頭

 

●生駒商工会議所 鉄東 貴和会頭

 

(司会 奈良新聞社代表取締役社長 田中篤則)

 

奈良県経済の現状

―物価高や人手不足などが問題となる中、奈良県経済の現状をどう見ていますか。会員企業の状況についてもお聞かせください。

 

コロナ禍からの回復も円安、物価高に苦慮

奈良商工会議所 小山 新造会頭

 

小山 コロナ禍からの回復が見られる一方で、企業経営はエネルギー価格高騰に加え、円安や物価高への対応に苦慮している。人手不足についても、特に建設業や飲食店などは、仕事はあるが人材確保ができずに機会を損失している場合も見受けられる。

 

 人手不足もそうだが、人材不足がさらに深刻だ。特にコロナ禍以降、急速にデジタル化が進む中、ビジネスモデルの転換やDXの推進などに取り組むにあたって、デジタル人材が圧倒的に不足している。

 

 中小企業の賃上げも大きな課題となっている。現状では、中小企業の持続的な賃上げは難しいのではないか。仕入れ価格が高騰する中、思うように価格転嫁ができず、厳しい経営状況が続いている事業者が多く見受けられる。

 

 一方、観光に目を向けると、昨年の秋より修学旅行生やインバウンドなど多くの人が県内を訪れ、観光地ではコロナ禍前のにぎわいが戻っている。

 

原材料高騰も価格転嫁できず 賃上げが課題

橿原商工会議所 森本 俊一会頭

 

森本 全国的に企業の間で値上げの動きが広がる中、原材料価格の上昇分を価格転嫁できず、収益が圧迫されている企業が多いことがうかがえる。一方で、収益が上がらない中、人手不足の深刻化などを背景とした賃上げも課題となっている。コロナ5類以降の社会経済活動の正常化が進みつつある中、会員企業も収益減少などの影響を受け、厳しい現状だ。

 

 特に原材料価格の上昇分を転嫁できず、経費削減や業務効率化による収益力向上などに取り組んでいるが、経費削減や業務の効率化などにも限界がきているとの声も聞いている。

 

 このような状況で、インボイス制度などの対応やコロナ関連融資の返済期限もピークを迎え、新たな経営計画も立たず、返済も厳しい状況となっている。

 

人手不足で業界ひっ迫 経営改革への支援が必要

大和高田商工会議所 河村 憲一会頭

 

河村 現在の原材料価格や物価の高騰、人手不足は、いや応なく企業経営の重荷になりつつある。当地域の事業所でも、原材料価格や物価の高騰が製造業や小売業を中心に影響が広がりを見せている。人手不足については、建設、福祉、飲料、運送などの業界で逼迫(ひっぱく)しつつある。

 

 コロナ対策として実施された中小企業・小規模事業者に対する実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が2023年夏ごろから本格化し、本年4月ごろにピークを迎えるこのタイミングで、円安、物価高、人手不足、人件費高騰などが経営の負担要因となっており、経営環境は予断を許さない状況にある。負担の軽減と経営改革へのさらなる支援が求められている。

 

 コロナ禍の数年で世の中は大きく変わった。コロナ禍前の状態に戻すのではなく、新たに何をやるべきかを考えることが重要だ。人材を確保するためには、賃上げは避けて通れない。経営状況が厳しい中でも、新しいことに挑戦していかなければ、次につながっていかない。

 

値上げ、賃上げの好循環でデフレマインドから脱却

生駒商工会議所 鉄東 貴和会頭

 

鉄東 生駒市では、「さきめしいこま」や「県働く人応援クーポン」などにより人通りは平常に戻りつつあるが、小売業や飲食業など地域の生活を支える事業者は、物価高や人手不足など急激な経営環境の変化により余裕がないのが現状だ。身近な生活圏の小規模店舗が減少しており、高齢者を中心に買い物の利便性が失われてきている。将来展望は「厳しくなっていく」と感じている経営者が多く、特に従業者数の少ない事業者や個人事業主でその傾向が大きい。

 

 従業員の高齢化問題に頭を悩ませている企業も多い。学研生駒テクノエリアにある企業の中には、従業員の平均年齢が50歳近いところもあり、若い従業員を求めているが、厳しい採用状況にある。

 

 安いものを求める「デフレマインド」を変えていかなければならない。人手不足などの問題もデフレマインドに関連して生じている。物価が上がっても賃金がそれ以上に上がっていけば、生活水準は高まり、人手不足の解消にもつながる。そのためには、企業が勇気と覚悟をもって値上げをしていくしかない。消費者も自分たちの賃上げにつながるのだと考え、値上げを受け入れるようにマインドを変えていく必要がある。

 

中小企業の活性化策

―そうした問題への対応や中小企業活性化への取り組みについて教えてください。

 

 

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