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古代官寺の大伽藍(がらん) 東西にそびえる七重塔の面影 - 大安寺・大和古社寺巡礼 010

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大安寺(高市大寺・大官大寺など)

 ※社寺名は、基本的に現在使われている名称によりました。

 ※( )内は、神社は『延喜式』神名帳による表記、寺院は史料にみえる表記です。

 ※記事中の写真の無断転載を禁止します。

 

 聖徳太子の熊凝精舎(くまごりしょうじゃ)を起源として日本で最初の官寺・百済大寺が創建され、高市大寺、大官大寺と所在地や名称を変えて、平城京遷都とともに大安寺となった古代の大寺院。

 

 南都七大寺の一つ大安寺は、かつては東西に七重塔が建つなど広大な伽藍(がらん)を有していました。

古代の大寺院で、平城京遷都とともに現在の名称となった大安寺

 

エリア/奈良市

 

ご本尊/十一面観音(重要文化財/奈良時代)

 

ご霊験(ご利益)/がん封じ・病気平癒など

 

宗派/真言宗

 

 

ご由緒

 聖徳太子が建てた熊凝精舎(大和郡山市額田部)が大安寺の起源とされています。この精舎を太子の遺言によって、舒明天皇が百済川の畔(ほとり)に移して、日本で最初の官寺・百済大寺(桜井市)の造営を始められました。

 

 天武天皇の御代には飛鳥の高市の地に移されて新たに高市大寺として造営が始められ、天武天皇6(677)年には、寺名を大官大寺に改められました。この大官大寺はさらに現在の明日香村小山の地に移され、九重塔も建立。その後の平城遷都とともに、霊亀2(716)年頃に平城京左京六条・七条四坊の現在地に移り、大安寺となりました。

 

 大安寺は広大な境内を有し、金堂・講堂を中心に三面僧坊、2基の七重塔などが建ち並ぶ大伽藍でした。

 

 多くの僧侶が在籍し、中でも三論宗を伝えた道慈、興福寺の栄叡とともに授戒の導師を求め唐に渡り鑑真和上を伴い帰国した普照、また弘法大師空海の師とされる勤操などが、大安寺の僧侶として知られています。空海が修したことで知られる虚空蔵菩薩求聞持法も、大安寺僧・道慈律師が唐から伝えました。

双鈎填朱本『大安寺縁起』(部分/江戸時代/東京国立博物館蔵)

出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)

 

 『大安寺縁起』は菅原道真筆と伝えられ、鎌倉時代の写本が伝わっています。双鈎填墨(朱)は書の複製技法の一つです。

 

 

ご本尊

十一面観音

 頭上の十一面は菩薩修行階位の十地を表し、頂上仏は仏果を表現。また喜怒哀楽の表情は、人々の苦楽を観て、それを共にする観音菩薩の慈悲を表現しています。

 

 大安寺の十一面観音は奈良時代の仏像(国重要文化財)で、通常は秘仏とされていますが、10月1日から11月30日までは特別に御開帳されます。

 

 

境内参拝・気が付かなければ…

※📸は撮影ポイント

 

大安寺南門 📸

 かつての南大門の基壇の上に、興福寺の旧一乗院の門を移築・復元した現在の南門が立っています。かつての南大門は正面が5間、奥行き2間の門で、平城宮の朱雀門と同じ規模の門でした。

興福寺の旧一条院の門を移築・復元した現在の南門

 

中門跡

 奈良時代の大安寺は、南から北に南大門・中門・金堂・講堂が一直線に配された伽藍を有していました。また南大門の南には、東西に2基の塔がそびえていました。

南大門の北にある中門跡

 

手水

 手水舎には、前貫主・河野清晃師の揮毫による「洗心」の文字が掲げられています。手を洗い、心を洗い清めてお参りしましょう。

河野清晃前貫主が揮毫した「洗心」の文字が掲げられている手水舎

 

本堂

 本堂は大正時代に建立されました。本尊は十一面観音(奈良時代)です。本尊は秘仏とされ、10・11月のみ御開帳されます。

 

 ちなみに、かつての大安寺金堂の本尊は、「大安寺伽藍縁起并流記資財帳」によれば天智天皇発願の丈六の釈迦如来でした。

 

 ご宝前では「オンロケイジンバラキリク」と真言を唱えて礼拝しましょう。

大正時代に建立された本堂

 

小子坊(瞑想・写経道場)

 「般若心経」の写経や、瞑想(めいそう、阿字観=弘法大師空海が伝えた真言密教の瞑想法)が行えます。事前予約制。

写経や瞑想が行える小子坊

 

嘶(いななき)堂

 嘶堂には一面六臂(一つの顔と六つの腕)の馬頭観音が祭られ、厄除(よ)け観音として信仰されています。馬頭観音は秘仏とされ、3月に御開帳されます。

馬頭観音が祭られている嘶堂

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(写真枚数:17枚)

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