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吉野「大峯奥駈道」山岳道の崩落拡大 行政や関係団体、修繕など具体策協議

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世界遺産の保全について関係者約40人が情報を共有し、意見を交換した協議会=10日、吉野町吉野山の金峯山寺聚法殿

 2004年7月の世界遺産登録から、来年で20年を迎える「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部で、山伏修行の山岳道「大峯奥駈道」で道の崩落が拡大していることが分かった。関係する寺や行政機関、整備ボランティア団体などでつくる世界遺産「吉野大峯」地域連絡協議会が10日、奈良県吉野町吉野山の金峯山寺であり、現況が報告された。

 

 大峯奥駈道は修験道の根本道場、吉野山から大峰山脈に入り、標高1915メートルの八経ケ岳などを踏破して熊野に至る険しい道。道中に「靡(なびき)」と呼ばれる霊場が75カ所ある。

 

 深刻な崩落は八経ケ岳南方、明星ケ岳と仏生ケ岳の間にある五鈷峰(ごこのみね)の北側斜面で、11年の紀伊半島大水害で大きく崩れたとみられる。金峯山寺の行者によると、崩れた場所の幅は約15メートルほどに拡大。「世界遺産の道は空中になっている」といい、ここ数年はう回路を使っているため行けなくなった靡があるという。

 

 協議会は05年以来18回目。五鈷峰の崩落は13年に報告されたが、保全の手だてのないまま拡大に至った。出席した文化庁文化遺産国際協力室の調査官は「崩落によって道が部分的に損失したことで、たちまち世界遺産登録を解除ということはない」と見解。今後の取り組みについて県の担当課は「国や県、市町村と一緒に考えたい」とした。

 

 ほかの崩落地点や山上ケ岳の宿坊付近の石垣の傷み、遭難事故の発生状況、個体数が増えたとみられるクマ対策など課題と情報を共有。県内の関係8市町村は現況調査を報告した。現地踏査を行っていない自治体もあったが、GPSを使って詳細な調査を行った川上村教育委員会は倒木除去や周辺里道の修繕で具体策を示した。

 

 大峯奥駈道の南部を再興し、維持管理活動を続ける市民団体「新宮山彦ぐるーぷ」は「人が設置したものは必ずメンテナンスが必要」と指摘。環境省吉野管理官事務所は登山道の清掃や点検を行う新しい市民団体の活動も紹介し、保全の輪を広げることを提案した。

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