OSK日本歌劇団「天使の歌が聞こえる」出演者独占インタビュー
桐生麻耶主演「天使の歌が聞こえる」稽古場インタビュー
2019年の締めくくりと2020年の幕開けを彩るOSK日本歌劇団の公演「天使の歌が聞こえる」が12月20日(金)、大阪市福島区のABCホールで開幕します。
※あらすじ、配役などは OSK日本歌劇団公式ウェブサイト をご参照ください。
奈良新聞デジタルは12月初め、大阪市内の稽古場を訪ね、主演のトップスター桐生麻耶(きりゅう・あさや)さん、男役スター楊琳(やん・りん)さん、作・演出・振り付けの麻咲梨乃(まさき・りの)さんに作品のお話を聞きました。
取材は稽古開始前……のはずでしたが、稽古場に到着すると、すでに劇団員さんが勢揃いして、自主稽古たけなわ! 記者の来訪に気づいた劇団員さんから、「おはようございます!」「よろしくお願いします!」と元気な声をかけていただき、いつもながら本当にすがすがしい気持ちになりました。
人生の出会いは偶然じゃない
―どんな作品でしょう。
麻咲 フランク・キャプラ監督の名作「素晴らしき哉、人生!」(1946年)と、この映画をモチーフに作られたファンタジー映画「天使のくれた時間」(ブレット・ラトナー監督、2000年)をもとに「人生の出会いは決して偶然ではない」「すべての人は、それぞれの役目を持って今、ここにいる」ということを伝えたい、と書き上げました。
稽古の前に取材に応じてくれた桐生さん、麻咲さん、楊さん(右から)
―時代や設定は映画とかなり違うのでしょうか。
麻咲 トップスターの桐生と男役スターの楊をどう生かすか、と考えた時、時代は現代、2人は下積み時代から縁のある歌手、という設定が浮かびました。2人はクラブのオープンマイク(飛び入り)で歌ったり、ずっと一緒に頑張っていましたが、ロバートが先に認められ大スターになります。でも8年後、才能を見出されてデビューしたジェームズがすごい勢いで人気者になって……。
―2人の間にはいろいろな葛藤(かっとう)がありそうです。
麻咲 城月れい(きづき・れい)が2役で演じる、ジェームズの妻で作詞家のメアリーと「ロバートが愛した、メアリーと瓜二つの女性」も物語の鍵になります。
―映画と同じく守護天使も出てきますね。
麻咲 ある決定的な出来事があり、「もう消えてなくなりたい」というジェームズに「自分がいない世界」を見せる大切な役です。ひとりの人がいないだけで、その人に関わるすべての人の人生ががらりと変わる。それを知ることで、人は皆、本当の自分を取り戻せる。そんなメッセージを込めました。ジェームズとロバートの、とっても良いシーンもあるので、ぜひ、味わっていただきたいです。
―2人の歌も楽しみです。
麻咲 ジェームズ(桐生)が歌うジャズテイストの曲、ロバート(楊)が歌うロックテイストの曲など、全曲オリジナルの劇中歌を用意しています。
作・演出・振り付けの麻咲梨乃さん
気持ちを変えた瞬間から、人生は変わる
―ジェームズって、どんな人なのでしょう。
桐生 温かい心の持ち主。優しい人たちに囲まれ、大きな野心があるわけではなかったのにデビューすることで変わっていく。一度は無くしてはいけないものを無くしちゃうけれど、もう一度やり直します。「あ、私にもこんな体験がある」って、感じていただけたらうれしい。自分を取り戻していくジェームズの大事なせりふがあるのですが、お客さまの実体験を呼び起こす言葉として演じられたらいいな、と思ってお稽古しています。
麻咲 そう! 過去は変えられないけれど、今、この瞬間に気持ちを変えることで、そこからの人生を変えられる。それが、この作品のコンセプトです。
ジェームズを演じるトップスター桐生麻耶さん
―では、ロバートは?
楊 ロバートは自分の信念に素直過ぎて、なりふりかまわず行動したんだな、と思う。「いけ好かないヤツだな」から始まって、実は愛情深かったり、まっすぐだったり、というところを感じてもらえたらうれしいです。
ロバートを演じる楊琳さん
みんな、ひとりの役者として輝いて欲しい
―芝居の要素が強い作品なのですね。
麻咲 歌、踊りももちろんありますが、ストレートプレイと言っていいくらい、みんなお芝居しています。トップスターの桐生から、入団1年目の下級生まで、全員にせりふがあり、城月だけでなく、ジェームズを除く全員が2役を演じます。3役こなしている人もいます。トップスターの桐生、劇団を代表するスターの楊や城月と一緒に出演する舞台は若手にとって学ぶものがいっぱい。みんなひとりの役者として輝いていって欲しいと思います。
桐生 この作品で初めて、舞台でセリフを言う劇団員もいます。それはとても大切な経験で、早ければ早いほど良い。芝居は踊りにも、歌にもつながる大きなもの。この機会を逃さず、みんな、しっかり吸収して欲しいと思います。まず、私自身が麻咲先生の教えをしっかり受け止めて演じることで、後輩たちに伝わるものがある、と信じています。
大切な人に会いたくなる、温かい物語
―では、最後にもう一度、作品の魅力をまとめていただきましょう。
楊 本当に温かい物語。大切な人に会いたくなる気がする。今の世の中、「自分なんかいない方がいい」って命を絶っちゃう人がいるけど、その前に自分がいなくなった世界を想像してみて欲しい。絶対悲しむ人がいる。これが今年最後の公演であり、来年の始まりの公演っていうのは、とてもいいんじゃないかな、て思ってます。
桐生 観終わった後、ちょっと考えよう、とみんなが立ち止まる作品だと思う。自分の生き方はこれでいいのかな、と。
麻咲 クリスマスの日に天使が見せた世界のおかげで、ジェームズとロバートは本当の自分を取り戻します。今、現実の世界では、悲しい事件がたくさん起こっていますね。事件を引き起こしてしまった人も、最初はみんな、無垢な赤ちゃんだったはずなのに……。だからこそ、誰とかかわり、何を選ぶのか、小さな選択の積み重ねってすごく大事。そんなことも、さりげなく伝えられたらいいな、と思っています
桐生麻耶主演「天使の歌が聞こえる」大阪・東京公演
<大阪公演>ABCホール(大阪市福島区福島1丁目1-30)
2019年12月20日(金)~24日(火)
<東京公演>銀座博品館劇場(東京都中央区銀座8-8-11)
2020年1月23日(木)~26日(日)
OSK日本歌劇団
OSK日本歌劇団は大正11年、大阪・ミナミに誕生し、今年創立97周年を迎えました。戦前から宝塚歌劇団、松竹歌劇団(SKD)とともに「三大少女歌劇」として人気を博し、現在は大阪松竹座、京都四條南座、新橋演舞場でのグランドレビューをはじめ、様々なジャンルの公演を行っています。
昭和42年から平成15年まで、当時、奈良市にあった近鉄あやめ池遊園地内のあやめ池円型大劇場を本拠地とし、昭和55年秋の東大寺大仏殿昭和大修理法要では大仏殿の須弥壇でラインダンスを披露しました。
OGにブギの女王・笠置シヅ子や銀幕で大活躍した京マチ子らがおり、昭和5年から歌いつがれてきたOSKのテーマソング「桜咲く国」(作詞・岸本水府、作曲・松本四良)は今も現役で、ピンク色の傘が回るフィナーレを華やかに盛り上げています。