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特集記事

「子供たちの未来と教育の関わり方」について

通信制高校3校の熱き教育者たちが思いを語る

 不登校などにより、全日制高校への通学が困難な子どもたちをはじめ、スポーツや芸能など自分の夢を追求する生徒たちが学ぶ通信制高校は現代社会に不可欠な教育機関。

 

 年々、そのニーズに合わせて多くの通信制高校が設立されているが、一部の通信制高校では就学支援金の不正受給や正しい指導ができていなかったなどの不祥事も発覚した。これにより通信制高校に対する間違ったイメージも広がってしまったのも事実だ。

 

 このような状況を払拭し、通信制高校への正しい理解を深めようと弊社は、県関係の通信制高校の代表者による座談会を2017年に開催した。2018年は生徒たちの愛と熱意で奮闘する教育者たちが「子供たちの未来と教育の関わり方について考える」をテーマに討論し、意見交換をした。

(座談会は11月8日、奈良市法華寺町の奈良新聞社本社で開催)

 

参加された先生方 長尾谷高等学校 川端等先生(右)、奈良女子高等学校 米田安男校長(中央)、天王寺学館高等学校 桐木孝教頭(左)。座談会のコーディネーターは奈良新聞社編集部の小幡直子

 

通信制高校の教育とは

—まずは通信制高校について、どのような教育をされているのか、各校のお話をお聞かせください。

 

天王寺学館(てんのうじがっかん)高等学校

「広域通信制高校」に対し、大阪府、奈良県のみを校区とした数少ない「狭域通信制高校」。昭和28(1953)年創立の天王寺予備校からスタートした学校法人天王寺学館が地域に根ざした柔軟な教育実践を目指し、平成14(2002)年開校、平成22(2010)年、大阪市平野区平野北に校舎を移転。

 

桐木 天王寺学館高校では、登校頻度が年間15日程度の視聴メディアコースから、週午前3日(月・水・金)登校の通信部コース、さらに全日制と変わらず週5日で年間36週の学習を行う通学部コースがあり、通信制のメリットを生かしてコースを年3回、生徒自身が選択できるようにしています。

 

いろんな困難を抱えている子たちがいますので、その中でできるように、と。体調が悪い時は無理せず、元気なときはトップギアでどんどん学校へ来てもらって、自動車でいうとシフトチェンジが出来るようにしているのが基本です。

 

通学回数が少ないと取れる単位が少ない、ということもありません。体調を見ながら、たとえばOD(※起立性調節障害)などを抱え、悩む子たちも通学しやすい形です。

 

※OD(Orthostatic Dysregulation)=起立性調節障害(きりつせいちょうせつしょうがい)とは

思春期に好発する自律神経機能不全の一つ。自律神経による循環調節(特に上半身部分、脳への血流の低下)が障害され日常生活が著しく損なわれる。症状は朝起き不良、倦怠感、動悸、頭痛、たちくらみ、失神、寝つきが悪い、イライラ感、集中力低下など。長期に及ぶ不登校状態や引きこもりを起こし、学校生活、その後の社会復帰に大きな支障となる。

 

長尾谷(ながおたに)高等学校

昭和30(1955)年創立の学校法人東洋学園が1980年代から増加した高校中退生徒に再チャレンジの機会を与えようと平成5(1993)年に開設。広域通信制高校として、大阪府枚方市の本校のほかに近畿地区に4分校を設置し、奈良分室(奈良市大宮町)は同12(2000)年に開校。通学区域は大阪府・京都府・奈良県・兵庫県・滋賀県の近畿地区の5府県となっている。

 

川端 長尾谷高校はオーソドックスな通信制高校のパターンです。週に授業日が月水金、最近は朝だと通学できない生徒も多いため、新入生をサポートする午後3日3時間のコース、週2日で通えるコースもあり、中学の時に不登校気味、ODなどで悩む子もしっかりと通学できています。

 

授業の時間割数も多く設定して、例えば体育は10時間で良いところを30時間に設定することで、生徒が出席したい思う時間に授業が受けやすくなっています。各科目の授業時数とスクーリングの必要回数を効率良く生徒自身が選べます。

 

実は年々、中学時代に不登校だった生徒が増加傾向で、その子達がいきなり高校の授業というのは、かなりしんどい。長尾谷の5つの学び舎ではそれぞれ、中学の不登校生のクラスも設けて、そこをスタートに通信制に進んでいく、という取り組みもしています。

 

奈良女子高等学校 通信制課程(つうしんせいかてい)

明治26(1893)年創立の学校法人白藤学園が70年にわたる女子教育の経験を生かし、平成26(2014)年に開設した西日本初となる女子のみの通信制高校

 

米田 生徒は女子のみ、スクーリングは水曜日と土曜日の2回です。全日制の女子高校と併設しており、希望すれば週6日通学もできます。

 

スクーリング日以外には勉強面の補習や、デザインやイラストなどの面白い特別講座や、全日制にパティシエのコースがあるので製菓体験授業なども実施している。理科実験体験授業では、授業参観を兼ねて保護者も授業に参加してもらったり、このようなオープンの授業は本校ならではと思います。

 

原則「嫌やな」ということを必ずしなさい、とは言ってないんです。嫌なことはしなくていい、というくらいの話を学校ではしています。

 

先生方にもお願いしているのが、5分、10分でもいいから、とにかく生徒の話を聞くということ。そこで人間関係ができる。人間関係を作って「人の間」と書いて「人間」になろう、と生徒に語りかけています。

 

人と触れ合わずに社会に出ると、人間関係の構築が非常に難しい。高校時代は学習だけでなく人間関係構築のトレーニングの場とも考えています。

 

強制しない、自発的に通学したいと思う学校になる

—各校、多様な生徒でも通いやすいよう工夫をされていますね。生徒が参加する学校行事などは、どうされていますか。

 

桐木 行事の面でも、私立全日制の高校と同じような取り組みをしています。これからで言うと芸術鑑賞で宝塚歌劇の観劇、信州でのスキー実習などがあります。

 

行事はすべて自由参加です。全日制だったらそうはいかず、不登校の子どもたちは行事の前日、本当にいたたまれない思いで、欠席連絡しないといけないな、と苦しむと思います。自由参加だとそのストレスがありません。

 

天王寺学館高等学校のスポーツ大会の集合写真
(詳細は画像をクリック)

 

川端 本校も同じで、できるだけ生徒が学校に足を向けてくれるような行事を多く設定しています。秋に行うユニバーサル・スタジオ・ジャパンの校外学習はものすごい人気ですよ。修学旅行など、全日制だと全体で動きますが、うちは希望者で行きますので、そういう意味での束縛や圧迫感はない、と思います。

 

科目の中でも、総合学習(総合的な学習の時間)では、生徒の興味・関心に応じて様々な講座の中から選択できます。特別活動として、映画鑑賞、学校行事(校外学習、ボウリング大会など)もあり、通算30時間以上出席していることが卒業認定の条件になっていますが、多くの行事を実施しています。

 

長尾谷高等学校 学校行事の様子
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米田 本校は2、3年生を対象に修学旅行を実施していますが、行き先は事前に生徒と保護者にアンケートを取って決めています。「どこどこへ行きます」という「決め打ち」ではなく、その年によって違います。参加率も徐々に上がってきているように思います。

 

アンケートを取っていると、保護者の方は「どうしてもここへ行かせてあげたい」とご意見をいただくこともありますが、その場合は多数決を取らせてもらって決定という感じです。

 

全日制の充実した施設、例えば体育館や音楽室などを使えることも、生徒の学校生活の楽しさを引き出せていると思います。

 

奈良女子高等学校通信制課程 8月に実施した修学旅行の様子
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—各校、生徒が行きたいと思える行事や生徒のストレスを減らす工夫などをされていますね。必ず行事に参加しなければいけない、というプレッシャーがないのは通信制高校の良さだと感じます。

 

 

一つのきっかけが生徒に変化を促す

—高校生と言えば、部活動も学校生活には欠かせないものです。通信制高校にも部活動はあるのでしょうか。

 

川端 部活は盛んで、ひとつの部の人数はそれほど多くありませんが、バラエティーに富んでいます。

卓球、サッカー、軟式野球など。全国大会へ出場する部活もあります。

 

練習面では、軟式野球やサッカーは各校の近くの公園を借りたりします。枚方校には体育館がありますので、梅田校や難波校の各校から生徒が来る、という形です。

 

テニスやフィギュアスケートで積極的に活動している生徒もいて、海外で練習し、帰国時にスクーリングに出席したり。将棋では中学校に登校できていない生徒が、大阪の多くの大会で個人優勝し活躍しました。

 

第54回近畿高等学校定時制通信制課程体育大会で優勝した
長尾谷高等学校のサッカー部。
その他、卓球部や硬式テニス部なども活躍している。
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桐木 本校も卓球などで全国に行かせてもらいました。全日制高校の大会に比べると確かにハードルは低いですが、全国となると心構えが違うし、生徒も成長するんですよ。そこはメリットだと思います。

 

ただ、クラブに関しては週2日制限というのをやっています。なぜかと言うと、もともと不登校気味な子も多く、もし毎日部活があるとなると、入部にかなり勇気がいるしハードルが上がっちゃうから。

 

でも、私たちは部活もして欲しい。そこで得られるものが絶対あると思うので、この形にしています。

 

天王寺学館高等学校の部活動は高校総体に登録し
野球部は高野連に加盟している。
文化系部活や同好会など多彩な活動もあり学校生活を彩る。
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川端 自尊心が高まると思いますね。本校の野球部の話ですが、他校からレベルの高い生徒が入学しましたが、部活ではレギュラー争いなどの重圧もなく、本当に野球を楽しんでいます。

 

その生徒に比べると、技術がおぼつかない生徒がチームにいても、一緒に部活動に打ち込んでいる。高校生らしい良い姿だと思います。

 

米田 他府県の高校でバレーの特待生として部活をしていた生徒ですが、部活内の人間関係が悪くなってしまい、本校へ転入学しました。

 

実は本校の全日制バレー部は春高バレーでベスト8に入っていて、その監督にバレー体験の授業をしてもらうことになりました。その生徒は大喜びで、授業の一週間前から封印していたバレーボールを出してきて、家でお父さんとパスの練習なども始めたらしいです。

 

その生徒の夢は養護教諭になることだったので、今は無事に卒業し大学に進学していますよ。

 

—活性化したんですね。ドラマみたいです!

 

米田 何がきっかけになるか分からない。こういうことがとても大事なことだと思います。

 

桐木 高校生は、半分は子供の部分を持っています。抱えてしまった思いをどこかで、スポーツや芸術で発散させることは良いと思いますね。特に通信制高校に通う子は、言葉少ない真面目な子たちが多いです。

 

絵を通じて表現するなど、すごく大事。うちも芸術のコースがありますが、ほんとにしゃべらない子、おとなしい子でも、絵になると全然違った表現をしたり驚きます。

 

米田 子供に色々な機会を用意して、子供自身がそのどれを取るか。それはなかなか分からないです。風呂敷を広げながら、選択肢を出してあげられたら、と。一度、持っていた夢を諦めて…夢を再生するために、何とか手を差し伸べられたらと思いますね。

 

奈良女子高等学校通信制課程のデザイン体験授業の様子
体験授業の多くは、同校全日制の講師による授業で
本格的に学ぶことができる
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「通信制生徒生活体験発表大会」を見て

—実際に通信制に通う生徒とは、どのような方がいるのでしょうか?

 

 

米田 例えば、通信制に限らず、定時制などに通う人たちについても、もっと知ってほしいと思います。
滋賀県で開催された通信制生徒生活体験発表大会(※)ですが、年齢の高い方もいて。3年連続で会場へ見学していますが、本当に良いです。

 

※近畿地区高等学校通信制教育研究会主催の「生活体験発表大会(全国高等学校定時制通信制生徒生活体験発表大会近畿ブロック)」。最優秀賞授与者は全国高等学校定時制通信制生徒生活体験発表大会へ出場できる

 

川端 本当にその人の人生が見えるような感じ。年配の方だと特にね。

 

桐木 生活体験のスピーチ大会だから、70歳代の方もいて。重みが違いますよね。

 

—高校生だけでなく、社会人、シニアの方々まで通学できる、通信制の良いところですよね。やはり、発表会には不登校を経験した若い生徒さんも?

 

桐木 そうですね。この大会で素晴らしいのは、痛みとか、苦しみとか、共有できる場であること。
通信制そのものが、やはりそういう存在でもありますので。

 

私が以前に担任をしていたクラスでは、5人がODで悩んでいました。みんな理解されないことで中学の時に苦しんできた子が多かったです。極端に言うと中学の担任の先生も「ODって何?」のような感じですから。もちろん、周りの友達もODを知らないから厳しく見る。サボってると言われてしまう。

 

そんな中で初めての安心できる場が、通信制高校の良いところです。それを象徴するのが生活体験発表会だと思います。

 

川端 あれは素晴らしい大会だと思います。

 

米田 一度、聞いてみてください。泣けます。今回、この人が一位だろうな、と思った人が天王寺学館高校の生徒さんで、実際に優勝されました。

 

桐木 まだ10代の子ですが、入学までにいろいろありました。学校では生徒会で活躍してくれています。実は発表の原稿ができたのは直前で、練習もできていませんでした。ほとんど、素でスピーチして、気持ちで伝えてくれましたね。

 

 

 

子供たちは驚くほど、力強く成長する

各校の生徒たちの成長で、具体的なエピソードがあればお願いします。

 

川端 以前に私が担当していた生徒ですが、小学校・中学校と不登校でした。お母様もしっかり通学できるかを悩んでおられましたが、その生徒は本校へ入学後に園芸部に入部しました。

 

花よりサツマイモを作ったりして、文化祭の時にイモをぜんざいにして振る舞ったりしていました。

 

本校は月水金の通学パターンですが、園芸部の水やりがあるので、できるだけ多く通学しないといけなくて。朝10時頃に通学、2年生では通学回数も増えていきました。

 

2年生になって文化祭の副実行委員長を、3年生で実行委員長になり、中心になって文化祭を動かすまで成長してくれました。実行委員長なので、当然、皆の前で挨拶をしますが、その時にお母さんがすごい喜んでおられました。

 

園芸との出会いと、学校と波長が合ったのだと思います。大学は指定校推薦で入学し、放送部に入って休むこともなく、現在は4回生で就職先も決まったそうです。

 

 

—もし、そこで出会いがなかったら、ずっと引きこもってしまったかもしれませんね。

 

川端 本当に、ちょっとしたことで変わります。

 

米田 今の2年生ですが、小学校から完全に不登校だった生徒もいます。人とのコミュニケーションが難しく、支援センターにも通っていました。保護者と一緒に本校へ相談に来た時は俯いて、長い前髪で自分の顔全体を隠していました。

 

その時に対応した教員は、何とか表情を見ようと面白い話ばかりしたのですが、表情が見えなくて。面白い話をされるのは嫌だったのかも、と困っていたそうです。

 

でも家に帰ってから、なぜ顔を隠していたか、お母さんに話したそうです。それは「自分の表情を、笑った表情でも見られるのが恥ずかしいから」という理由だったんですね。

 

今はその生徒は髪の毛を上げています。そこまで変わりました。驚きましたね。

 

小学校から不登校で、中学校にも通学ができなかった生徒もいます。入学前に本校のスクーリング体験に参加した時に、先生や先輩から優しく話しかけてもらえたことが嬉しかったようで、家に帰ってすぐ、机に向かって作文を書きだしたそうです。

 

本校では入試に必ず作文があるので、去年のテーマを練習に、何枚も書いて、書き直して。ご両親はその姿を見て感激したそうです。ちょっとしたことで変わる、成長する、それを探してあげるのが私たちの仕事かなと思います。

 

—髪で顔を隠す、思春期の恥ずかしい気持ちを持つ子には、女子だけという環境がオープンになりやす

いのかな、と思います。オープンしたので、その人はそこから先にどんどん進んでいけますね。

 

 

桐木 この春ですが「先生、就職決まりました」と挨拶にきてくれた卒業生がいます。その子は秋田の国際教養大学に進学したのですが、本校に在学中は外交官が夢でした。その子も実は、中学校に行けてないんです。

 

高校は通えず、1年の半ばくらいに本校へ入学してきました。最初、学び直しのため中学校の復習ができる基礎クラスから入り、2年生の半ばには、特進のクラスに入り、その後に一浪して国際教養大へ進学しました。

 

このエピソード、何をお伝えしたいかというと、もしその子が全日制という選択をしていたら、中学の時の内申点で進学先が決まりますので、国際教養大のような国公立の難関を受験するような教育は受けられなかったのかな、と思います。

 

私自身が前職で、不登校の支援をしていた時、本当に進路の部分で、中学校で不登校だった場合不利を被ることがあって。それはなんともつらいな、と思いました。

 

手前味噌になりますが、本校では国立大学を受験する内容の授業もあります。例えば理系なら数Ⅲを週8時間教えてるクラスなど、そのところで学習の可能性を潰さない。その子の場合、本人のやる気次第で全部対応できるようにしてきたことが、非常に良い結果を出せたケースですね。

 

川端 学校は、生徒が最終的に社会に出るための手伝いをしていくべきだと思います。今、世間では30才、40才の引きこもりが増えている。できるだけ、そのような人をなくすための「社会で生きるための教育」をしていきたいですね。

 

米田 一部では、その授業や人間関係でどうやって社会性を身につけさせているの?と、疑問に思う通信制高校もあります。それが楽だから良い、と思う子供もいるかもしれませんが・・・

 

桐木 私たちは今まで辛い思いをしてきた子供達を預かっています。この子達をどうやって社会に送り出していき、幸せな人生を歩んでいけるか、本当にそれがテーマです。

 

このことはもしかすると、全日制よりも深刻、というか、深いテーマで取り組まないといけないと思います。

 

 

子供は、大人たちをよく見ている

—様々な生徒を社会へ送り出されてきた先生方ですが、子供たちと接する時に、普段から特に気にかけていることなどは?

 

米田 ちょっとしたことを教える時など、言葉選びに失敗すると、一週間くらい口をきいてくれないとか。学校へ来なくなることもあります。生徒との接し方はとても難しいですね。

 

—それは褒めたたつもりだったのに、というのもあったりしますか。

 

米田 そうです。私は「よく頑張ったなぁ」と心から思って声をかけても、素直に受け取ってくれなくて「こんなんこと普通は言ってこないのに、何かあるんじゃないか」と思われてしまうこともあります。

 

—女子校の先生方って、特に大変そうです。

 

米田 よく見てますからね。子供たちは。

 

桐木 私は反対に前職、男子校だったので、男子の方がそういう意味では、乗りやすい、というか、励まされてそれがプラスになることが多かったです。

 

人にもよりますが、自己評価が低いと、普通に聞いたら褒め言葉なんだけど、嫌味とか、批判に思われてしまう可能性もあります。「褒め方」もかなり難しい。

 

天王寺学館高等学校のカウンセリング室では、生徒・保護者を対象に、
臨床心理士(大学院修了者)、学校心理士(5年以上の教職経験者で
国家試験合格者)など、長期にわたり臨床実務訓練を受けた
有資格者の男女3名が教育相談を受けている。
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米田 自己肯定感・・・特に不登校傾向の子供にどうしたら、一番いいのか。いろいろ研修も受けますが、実際には難しい場面が多いと思います。

 

川端 本校では先生方が優しく接して丁寧にケアするように心がけています。でも人によって違いますからね。

 

長尾谷高等学校 奈良校では生徒と先生の距離が近いのも特徴の一つ。
進路指導から日常生活の悩みまで、何でも生徒が気軽に相談できる
「チューター制度」を採用している。
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桐木 でも、生徒同士がすごい体験をしていると、体験を共有していない私たちが言うよりも、共感し合えるという環境がある。生徒同士で助け合えてるんじゃないかな、と思いますね。

 

川端 「不登校だったから友達ができないんだ」と思う子も、積極的に友達を作れる環境だと思う。全日制高校に比べると深い関わりは難しいかもしれませんが、同じ悩みを持つ子も多いですから。

 

米田 それがいいのかも知れない。全日制高校では、ひとつの箱(教室)に入れられて、不登校だった生徒にも、絶対ここに居なさい、と言われる。でも、ある程度、自分自身で他人との距離を取れることが、通信制の良いところかも知れません。

 

奈良女子高等学校通信制課程の夏期合宿の様子
日常と違った環境での学習だけでなく
生徒同士が楽しく交流できる行事となっている。
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—通信制に来られる生徒さんの方は、もしかしたら同年代の子に比べると精神年齢が高いのかもしれませんね。

 

 

通信制高校への偏見はなくなりつつある

—現代の教育の重要な部分を担っている通信制高校は、正しく理解されているでしょうか?一部の人にはまだ偏見があるように感じますが。

 

 

川端 他府県の私立の進学校から入学してきた3年生の子がいました。2年生までで70単位を取れていた。本校の場合、卒業認定にはあと8単位必要でした。

 

通信制高校に1年間通えば、進学校に比べ学費も安く、残りの時間を進学塾の勉強時間にあてることができる、と。結果、その子は京大に合格しました。うまく、通信制を利用したと思います。

 

—その方は、何かにつまづいて来られたのではないのですね。

 

川端 はい。ただ、そのまま進学校に通っていたらクラスの中の進学競争で、精神的な圧迫で希望の進路を叶えられなかったかもしれません。通信制への転入は正解だったと思います。

 

—家から出られない、というひきこもりの方から、今の例まで幅広いニーズがある。この親子には通信制に対する偏見はなかった、ということですね。出身高校にはこだわらず、希望を叶えるための選択肢に、通信制高校を選ぶという理解が進んできている、ということでしょうか。

 

川端 そう感じますね。珍しいパターンではありますが、たまにおられます。

 

米田 他府県の私学から編入した生徒ですが、本校に来てからは、「個別で教えてください」って毎日通学しています。驚くほど熱心に勉強している。

 

さきほど川端先生がおっしゃったように、前の学校に行きたくないのなら、通信制を選択するのも良いと思います。そこで勉強ができる環境はゼロではない。

 

本校では水曜と土曜しか授業がないので、他の時間は自分で使えます。学習室や図書室など学習環境はたくさんあるので、その生徒はルンルンで通学していますよ。友達もすごく波長が合う生徒がいたようで、一緒にお弁当なども食べています。

 

—昔はネガティブなイメージが強かった通信制高校ですが、今はポジティブな面でも認知が広がっているのでしょうか。

 

米田 まだ一部では、通信制高校に通う子どもを特別視する人もいます。でも、その中で特に近畿圏の先生方は、頑張っておられる。良い意味で認知度は上がってきているように感じますね。

 

 

桐木 みんな熱心ですからね。それはもう、近畿は熱心ですよ。

 

川端 近通研(※)がありますもんね。他の地域にはありません。

 

※近通研=近畿地区高等学校通信制教育研究会。滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山の通信制高校で構成。現在は同地区で17校が加盟。全国高等学校通信制教育研究会(全通研)の加盟校でもある。調査・研究、研究協議会・研修会の開催、関連学会・団体との連携などの事業など、教員たちの研究成果の交流や実践の共有を通して高等学校通信制教育の進展と振興に寄与することを目的としている。

 

桐木 各校との情報交換もあるし、互いに参考にさせていただいたり。教科の研究会もある。

 

米田 各校、持ち回りで研究会を開いてね。いい会ですよ、本当に。

 

—全日制とは違う取り組みをされている、通信制の授業の研究会なんですね。

 

 

全日制高校と通信制高校の課題とは

—全日制には全日制の良さがあると思いますが、「何とか全日制に通いなさい」という保護者からの重圧で、ひきこもってしまう子供もいると思います。通信制高校として、全日制高校とどのように関わられていますか。

 


桐木 私は全日制で働いていた時間が長かったですが、生徒に対してできないことが多かったです。もっと学校が、悩む子どもたちのために出来ることがあるんじゃないか、と。全日制にはその苦しみがあります。

 

通信制という形だと、それができますので全日制に対して引け目は感じていません。

 

社会に適応することに苦労している子どもたちを我々が無事に育てることができれば、逆に全日制が取り入れるべきことだと思います。今は生徒のために、真剣に取り組むことが我々の課題でしょう。

 

高校から次の進路を選ぶということは、大学や専門学校の2年や4年じゃなくて、40年の人生です。社会に出てからの約40年をどう過ごすか、ここが大切だと思います。

 

川端 10年近く前ですが、2月上旬くらいに、とある高校から電話が入りました。高校3年生の生徒が今から、長尾谷高校へ転入して卒業できますか、と。すでに取得した単位は70単位以上ありますが、その生徒が通う学校の規定では卒業できなかったようです。

 

私は責任者に「何か、2月・3月に集中して学習すれば、卒業できるのでは?」と話しました。3年間頑張って通い続けたのに、あと数時間の学習が足りずに卒業できない。確かに学力不足で単位を落とすことは仕方ないですが、もしかしたら、体調が悪かったなどの事情があったかもしれません。

 

留年は精神や金銭面でも大きいです。そんな困っている子を何とかしてあげたかった。次の年も同じようなケースが出てきて、そのような学生も受け入れることになりました。中には今卒業できなかったら、将来がどうなっていたか分からない、そんな子もいました。

 

—単位の救急病院みたいな印象です。

 

桐木 様々なケースに臨機応変に対応出来るのが通信制の良さだと思います。本校も2月、3月に短期集中授業というのがあります。

 

面接試験は校長が行い、しっかり入学希望者の事情を聞き「その学校の規定はちょっと・・・」という時は、校長の判断で入学してもらいます。そこも一つ、通信制の面白いところだと思います。

 

川端 そういう意味では、偏見はなくなってきているかもしれません。

 

米田 本校の場合は転入学は11月1日までです。授業を1単位あたりではなく、前期後期で分けているので。もう少し柔軟に、とは思ってはいますが、そこはなかなか難しいと思います。

 

—今卒業することと、あと一年遅れて卒業すること、どちらが良いのかは、その子が社会に出てからでないとわからない気もします。教育として、どちらが正しいのか。とても奥が深いです。

 

曖昧な通信制高校認定基準が、業界全体を揺るがす

—簡単な学習だけで高卒認定する通信制高校や、学習内容に比べ授業料が高すぎるなどの事例もゼロではありません。その一部の不祥事が取り上げられことで、通信制高校全体のイメージも悪くなることがあります。やはり行政などがしっかりと基準を設けるべきだと思いますが、それについてどうお考えですか?

 

 

川端 全国展開の広域通信制について、今から5年ほど前ですが、「指導していくための調査をする」と文科省が予算を付けて調査をしました。そんな中で、一部の学校で不祥事も起きてしまいました。

 

大阪府の認可校(※)などの厳しい基準が全国規模になれば、例えば、このレポートの添削は誰がしているのか、教員免許はあるのかなど、徹底的に調査し問題を防ぐことができるのですが。

 

※大阪府認可校とは

生徒の学習環境や教員資格など、大阪府により認可された通信制高校9校のこと。
現在は学校法人立の賢明学院高等学校、神須学園高等学校、向陽台高等学校、秋桜高等学校、天王寺学館高等学校、長尾谷高等学校、八洲学園高等学校、YMCA学院高等学校の8校。株式会社立のルネサンス大阪高等学校(順不同)

 

桐木 全通研(全国高等学校通信制教育研究会)の方々のほうが自浄作用の取り組みをされていると思います。改善に取り組む動きはあるものの、行政の動きは鈍いように思う。

 

川端 授業料でも年間で、1学年が80万、2学年が78万、3学年が70万・・・。それにスクーリングの費用が入っていないとか。3年間で370万というのも耳にしたことがあります。

 

米田 それはすごく高額!

 

—金額に見合った授業内容であればと思いたいですが・・・。そのような調査などを、自浄作用でみなさんの側でもきちんとやって行こう、と思って動いておられる中、行政側の審査が、せっかく良い形で進んでいる通信制の教育の中に、少し問題のあるものが混じってしまう、ということでしょうか。

 

米田 十把一絡げみたいな感じで言われるから、時には否定的に言われることもありますね。そんな時は、良い通信制と、悪い通信制があるんですよ、と言いたいくらいです。

 

桐木 一番問題なのが、保護者や生徒たちの目線から見て、「通信制高校の違い」が分からないんです。みんな同じに見える。イメージで入学してみたら全然違った、ということもあります。

 

川端 他府県からの学校が外部の相談会でブースを広げていますが、保護者や生徒は目についたブースに入って、きれいな写真だけを見て、入学を決めてしまった方もいました。もっと色々な角度から学校を見てほしいと思います。

 

—ちゃんと取り組んでいるグループで基準を設けられたり、ということはできないのでしょうか。子供達のより良い未来のためにも、行政がもっとはっきりした形で示してくれるべきだと思いますが。

 

米田 質の良い通信制高校が集まる会に、必ず入らなければならない、というmustの状態にしてくれるとか。

 

 

川端 通信制高校の選び方について質問された時に説明させてもらうのは、宣伝はちょっと置いといて、大阪府の認可校8校から選んでください、と言っています。東京都の認可校も少ないです。

 

—でも、先程の高額な授業料の学校も、どこかの都道府県で通っているわけですよね。

 

川端 地方は教育によって地域を繁栄させる、という趣旨で特区を設けている可能性もあり、その場合だったら、内閣府で認められて他府県へ学校を作ることがあります。その場合は、私たちからは何も言えません。

 

—入学希望者が混乱しないよう、質がある一定以上のものだったり、金額的なこともあんまりバラツキがでないよう、もう少ししっかりとした判定基準を行政が設けるべきだと感じますね。

 

桐木 通信制高校の数も多すぎて、行政も手がまわらない、というのが実状かもしれません。

 

米田 通常は審議委員会でいろいろ討議されて、そこを通らないとダメなんです。本校は通信制の申請をしたのが6年前ですが、奈良の審査はかなり厳しかったと聞いています。

 

でも他府県の学校では、スッと許可が下りたりするときいています。同じような内容で奈良県に申請すると、おそらくダメだと思います。

 

桐木 行政の足並みがそろっていませんね・・・

 

—幸いにも、大阪府と奈良県はちゃんと審査をされている、ということでしょうか。

 

桐木 本校は「狭域通信制」ですが、狭域の場合もひとつ、大きな問題があります。生徒に対する支援金の部分も、全日制だと学費の全額が対象になるんですが、通信制高校は対象外。

 

新潟県の場合は、その教育内容の充実度に応じて、狭域通信制に対して他県に比べて約2~2.5倍の手厚い支援が実現しています。これは新潟県の学校が行政に何年もかけて働きかけて、通信制高校という学校について、理解を深めることができたからです。

 

私たちも新潟県と同じように、しっかりした授業と生徒のためになることもしているのに、そこのところの理解がなかなか進んでいない。「行政に対してもっと働きかけていかなあかん!」と思いますね。

 

 

身近なSNSなどの犯罪から子供を守る

—お話はつきませんが、次に進めさせていただいて、子供たちの教育とは切り離せない、スマートフォン、SNSの普及による、良いこと、悪いことについて、お話いただきましょう。

 

米田 私は良いことはないと思っています。近通研でも、スマホの使い方などの生徒指導の研修をしています。よくICT教育(※)をすすめなさい、などと言われますが、私たちがどこまで本当にできるのか、と思います。

 

※Information Communication Technology(情報通信技術)の略で、教員用コンピューター、デジタルテレビ、インターネット環境下での学生用タブレット端末などを使い、教育の質の向上を目指すこと。

 

 

米田 便利なスマホを使うことは悪くないと思います。でも、それ以外のことに使う子供たちの方が圧倒的に多い。ライン、ツイッター、インスタ、フェイスブック…もめる原因だと思います。

本校では教室内、授業中、歩きスマホなどもNGにしています。

 

桐木 生活指導にも関わりますが、本校は校則とマナー・ルールというのがあります。TPOをわきまえて使いましょう、と話しています。でも、あまり縛らないようにはしていますが。

 

生活指導で話すことは、SNS、ID生徒証のトラブル、薬物、JKビジネス、今年はこの4つのポイントを上げています。このあたりはしっかりと、危なさを知らせる。実例を伝えて自分たちで考えさせるように少しずつシフトしています。


私も生徒に話す前にデータを調べますが、ネットのトラブルは正確な数字があまり出てこない。被害者が泣き寝入りして訴え出られない仕組みだと思います。薬物も、先輩にタバコやお酒をすすめられて、警戒心を解かれてから、という事が多いようです。

 

保護者の方に伝えているのは「危険との距離」。私たちの時代にも同じようなことはありましたが、今は距離がまったく違う。高校生のすぐそばに危険があります。

 

—昔よりも深刻、インターネット上に何か出てしまったら簡単には消せないし、深刻度が高い危険が子どもたちの周りにたくさんありますね。

 

 

米田 皆さんは生徒たちに話す時に警察の方に来てもらったりしてますか?

 

本校の全日制なら来てもらうことで、危険性を伝えてもらいますが、通信制に対してはまだ警察官には来てもらっていない。今のお話を聞くと、それも必要だと感じました。

 

桐木 薬物、スマホに関しては年一回、研修を入れてます。あとは普段から、始業式、終業式などで話したり。

 

川端 日替わりで生徒が変わる学校では、伝えにくい、というところがありますね。スマホ・薬物についてはオリエンテーションの時に話をしたり、家庭に郵送する連絡便に生活指導から注意喚起の文章を載せています。

 

今年の後期の京都校の始業式では警察に来ていただき話をしてもらいました。今後、検討する必要があると思っています。

   

桐木 でも、こういう言い方をしたらいけないかもしれないけれど、課題としては面白いかな、と思います。例えばグーグルの投票アプリなどをうまく利用して、新しい学校行事をしたいなど、生徒発案の企画も出たりします。

 

ネットとの関わり方について、もう一歩、全日制より工夫がいると思うし、取り組んでいけば洗練された良いものが出来るのでは、と思います。

 

 

学校には何が必要か、子供たちのための学校とは

—これから複雑化する世界を生きる子どもたちに、今、何が必要でしょうか。学校はどのような存在であるべきでしょうか。

 

 

川端 全日制高校も色々取り組まれていて、総合学科、総合選択制を導入したり、先日、商業高校の学校協議会の委員として中間発表に参加した時は、特に実業系の学校は生徒ひとりひとりに寄り添う先生方の姿勢が、ものすごい熱心だと感じました。

 

面接の指導を夏休みに4回、5回と行い、一緒になって履歴書を書いたり、志望動機を書いたり・・・。生徒が毎日来ていないからやりにくい部分もあるが、やはり通信制高校の場合も、生徒ひとりひとりに、学校の先生が生徒に寄り添う、成長を助ける、という形はこれからも追究していかないといけない。

 

学校はよく言われているように「子供たちの居場所」ですが、総合的な学習や特別活動などで、生徒が入ってきやすいよう、こちらも場所を作り続けなくてはいけないと思います。

 

全日制は3年後の進路を見据えて指導ができるけれど、通信制はそれが難しい。でも将来を見越せる力を植え付けないといけない。

 

不登校だった子どもに、それはしんどいと思うが、徐々にそういう力を付けて社会に送り出す。自分の生き方を見つけるための手助けをするべきだと思います。

 

—いろんな生き方を選べる時代だからこそ、自分の生き方を選べる力が必要なんですね。

 

川端 親も今までの価値観と違って、多様な時代に合わせて、全日制に行くことがmustではないと思ってほしい。こういう学校もあるよ、という形になれば、引きこもりなどの問題も解決していくのではないかと思います。

 

—多様な子どもたちに、一人ずつしっかり寄り添うことで、学校に「居場所」を作るということでしょうね。ありがとうございます。

 

 

米田 夢、目標をもっていた生徒、あきらめかけたところを復活させる、それが一番大事なところだと思います。

 

通信制高校は特に、休憩できる場所でも良いと思う。勉強する場所ではあるけど、家がしんどいと思う子は、学校で羽を休める…「羽を休める場所」そんなことでも良い。

 

そして今いる生徒たちには、善悪の判断は厳しく言っています。あまり学校に来ない子であっても、ダメなものダメ、と。保護者からクレームがあったとしても、こういう意図、こういう方針でやっている、ということは絶対に伝える、伝わるはず。

 

—必ず、子供と向き合う、ということですね。

 

米田 背を向けたらダメです。言い訳はせず、「すみません」「ごめんなさい」「ありがとう」を言いましょう、を目標として掲げています。

 

—ダメなものはダメ。頭髪のことなど、校則や学校のルール、社会的ルール、マナーなどのことですね。

 

米田 日常でもSNSであっても「自分がされて嫌だと思うことはしない」「言わない」が大原則。違反した場合は、保護者としっかり話す。「ダメなことはダメ」と。それを私たちきっちりと言い続けるべきだと思います。

 

社会に出るためには、人と接することが必ず出てきます。その練習の場が高等学校。彼女たちは非常に大きい可能性を持っている、それを応援したい。

 

子どもが「先生、これ・・・」て来た時に、その場で対応できる、そんな思いやり精神を持つ若い教員が一人でも多く、この世界に入ってきて欲しいと思います。

 

—「羽を休める場所」生徒にとって学校だけでなく、先生と一緒にいて安心できる場所、ということですね。

 

 

桐木 昨年も、一部の学校で生活指導関係が社会的に注目を集めるようなことがありました。私は生活指導も含め、すべての教育活動は生徒の成長のためにあると思います。成長に資すべきものでなければならない、評価もその観点でのみ、下されるべきです。


私は過去に、行事でも滞りなく、つつがなく終われば「ああ、良かったな」と思うことがありました。そうではなく、その中で、どれだけ生徒が考えて動き、大人になるための力を付けれたか、そこを評価をすべきだろう、と。

 

米田様がおっしゃいましたが、「先生とあなた」ではなくて「あなたとルール」の話しです。

国際化が進む世の中、これから様々な国、文化の方と共存すると、必ず契約や法律が厳しくなると思います。


私たち自身もそうでしたが、契約とかルールに対してゆるいというか、顔見知った中だからゆるやかにやりましょう、という日本社会は、これから変わっていくと思います。

 

本校でも曖昧にするのではなく、真剣に「あなたとルール」についてしっかり向き合っていきましょう、という姿勢をしっかり打ち出しています。

 

私の個人的な考えですが、私たちはこれからの社会に出ていく子供達を預かっているのだから、我々の感覚だけで教えるのではなく、社会の変化にしっかり注目し、これから何が必要なのかをしっかり考えて先回りしないといけない。

 

「進路」は「生き方」に言葉を置き換えなさい、と言っています。他人事ではなく、自分がこれから幸せになるために、嫌な思いをしないために、どうするかを考えなさい、と。

 

—生徒たちが自身としっかり向き合えるように、学校も一緒に成長していく、ということでしょうか。桐木先生にとって、学校はどのような場所でしょうか。

 

桐木 生徒たちの舞台だと思います。そして宝探しの場。様々なことに挑戦する中で自分の潜在能力というか、良いところを見つけて、それを糧に進んでいってほしいと思います。

 

—通信制高校は「居場所」であり、「羽を休める場所」であり、「自分たちの舞台」である、ということですね。
子供達の未来と教育の関わり方について、通信制高校の視点から深く考え、各校の思いを知ることができました。

 

また、今まで通信制高校に対して知らなかった人や、先生を目指している方、やる気のある若い人にも、今回のお話は「通信制高校って面白い」と感じる内容だったのではと感じます。

 

子供たちの未来と教育の関わり方について考える、とても情熱的な討論となりました。

ありがとうございました。

 

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