「相撲部屋で力士が作る手料理はすべてちゃんこ。鍋だけがちゃんこじゃない」と説明を聞きながら、力士といっしょにちゃんこ鍋をいただいたことがある。

　大和高田市担当記者時代、春場所開催時に同市内(大和ガス)に宿舎を置いた錣山部屋で。中井隆男・奈良後援会長の紹介だった。本物のちゃんこ鍋は抜群にうまかった。

　ちゃんこ鍋は商店街で市民らにも振る舞われ人気があった。人々とのふれあいを大切にした錣山親方(元関脇寺尾)と所属力士のまごころが込められていたのだろう。

　錣山親方が17日に60歳で亡くなったとニュースで知り、がく然となった。精悍(かん)な容姿は、親方となってからも現役時代と変わらなかったのに。あまりにも早すぎる。

　親方は口数は少ない方だったが、相撲無知の筆者の取材にも丁寧、誠実に対応していただいた。しかし、力士の稽古を見守る視線は近寄りがたいほど鋭かった。

　底冷えする時期になった。家でちゃんこ鍋を作って、錣山部屋での温かい思い出に浸ろう。錣山親方、ありがとうございました。安らかにお眠りください。　(栄)