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金曜時評

新型コロナ感染症 その先の安心安全 - 論説委員 松井 重宏

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 引き続き「屋内の原則着用」を堅持してきたマスク着脱に関する基準が、週明け13日から「個人の判断」に緩和される。国内で新型コロナウイルス感染症の拡大が始まって3年余り。同基準の変更はコロナ禍からの出口を印象付けるが、一方でウイルスは根絶されておらず、改めてウイズコロナの時代にふさわしい安心・安全な社会づくりが問われる。

 

 主な課題に挙がるのは医療体制の確保と費用負担の在り方。また行動規制の緩和による感染の再拡大も懸念材料だ。

 

 政府の対策本部は今年1月、新型コロナの感染症法上の位置付けを現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」とする方針を決定。5月8日の移行後は自治体が指定する発熱外来だけではなく、各医療機関で診察を受けられる体制への移行が段階的に進められる。ただ全ての医療機関が対応するとは限らず、行政の取り組みが不可欠。

 

 荒井知事は今月8日の定例会見で新型コロナの扱いが2類相当から5類に移った後も「病床は必要なだけ確保していく。これは県の責任」と発言。併せてコロナ対策による制約を受けずに治療を受けられる環境づくり、通常病床の確保にも意欲を示したが、5類への見直し後の医療機関との連携、体制の確立は統一地方選を挟んで新年度以降の課題となる。

 

 また公費負担が自己負担に変わることで、受診控えの増加やワクチン接種率の低下が進む可能性も指摘されている。軽い症状の段階で適切な治療を受ける機会を逃せば重症化に至るリスクも増す。自宅待機など行動規制の緩和と併せ感染拡大につながる危険性が高まらないよう、県民の積極的な予防、受診を後押しする行政の支援も求められる。

 

 県内では新規患者が減少傾向にあり、重症者の病床占有率もゼロになるなど感染は沈静化しつつあるが、人の動きが活発化する季節を控え、過去の推移からも再び感染が拡大する可能性は否定できない。特に医療機関や福祉施設で発生するクラスター対策は新年度以降も継続して注力が必要だ。

 

 科学的な知見に基づく行動規制の緩和は暮らしや文化・経済活動の復興につながる。さらに感染症に対する適切な扱いは持続可能な医療を担保、県民の健康増進に効果が期待される。3年間に及んだコロナ禍で得た経験と知恵を次代の地域づくりにどう結び付けていくか。統一地方選の争点の一つにもなる。

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