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金曜時評

文化財防火強化を - 編集委員 山下 栄二

 10月31日にあった那覇市の首里城の正殿を含む主要施設7棟が焼けた惨事は、日本全国に衝撃を与えた。7棟は平成4年以降に復元された建物で対象外だが、首里城跡を含む「琉球王国のグスクおよび関連遺産群」は世界文化遺産。首里城は沖縄県のシンボルであり、同県民の精神的ショックはもちろん、同県の主要産業である観光へのダメージは図りしれないだろう。国を挙げて沖縄県への支援が必要であるとともに、文化財の宝庫といわれる本県は、文化財防火の大切さを再認識しなければならない。

 文化財消失と聞いて真っ先に頭に浮かぶのは、戦後間もない昭和24年1月26日に起こった法隆寺金堂の火災だ。世界の宝といわれた国宝壁画を焼き、「文化財防火デー」制定のきっかけとなったのは、あまりにも有名だ。当時(1月27日付)の大和タイムズ(現奈良新聞)は、「法隆寺金堂全焼す」「一瞬に失う超国宝」との見出しで、「この火災によって生じた損害はあらゆる物的評価の不可能なまでに巨大なものである」と悲嘆している。

 令和元年版「100の指標からみた県勢」によると、県内の国宝・重要文化財のうち建造物指定件数は264と京都に続いて全国2位。それだけに首里城全焼のニュースに対する県内関係者の反応も素早かった。31日即日、県内の消防機関が奈良市の東大寺、吉野町の金峯山寺などで防火設備の緊急点検を行った。

 平城宮跡と同じ国営公園内の火災に危機感を抱いた荒井正吾知事は6日、「県文化財緊急防火対策強化会議」を26日に奈良市内で開くと表明。文化財を所有する社寺や図書館、博物館をはじめ警察、消防関係者、県、市町村の担当者らが出席して情報を共有。参加者から防火対策の事例報告を聞くほか、文化庁担当者の講演や県文化財保存課による防火対策に関する緊急報告も実施するという。

 那覇市消防局は6日、首里城の出火原因は正殿の電気系統が濃厚との見解を発表した。再発防止のために徹底的な原因解明が望まれる。一方、ふるさと納税をはじめ全国から寄付が相次いでいるという。沖縄県民を励ます意味と観光振興のため旅行に訪れるなど、今できる範囲で、国民は沖縄県を支援する必要があるだろう。

 これからは寒くなる時期。9日からは全国火災予防運動がスタートする。自宅や周辺はもちろん、国民、県民の財産である文化財の防火に気を配ることが必要だ。

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