ボクシング漫画「あしたのジョー」の矢吹丈は、一発逆転のカウンターパンチを狙う。劣勢であっても最後は倒した方が勝つのがボクシングの醍醐味だ。

　WBA世界ミドル級タイトル戦で、奈良市出身の王者・村田諒太が挑戦者リブ・ブラント(米国)に判定負け、2度目の防衛に失敗した。序盤からリードされた村田に、ジョーのような大逆転を期待したのは筆者だけではあるまい。

　ファンにとっては残念な結果となったが、試合運びはスピードのある挑戦者が圧倒していたといってよい。研究して村田の動きを読んでいたとみられ、重量のミドル級はさすがに選手層が厚いと感じた。

　しかし、これまで五輪金メダルや日本人初のミドル級王者防衛、ボクシングの聖地ラスベガスのメインイベンターを務めた村田の業績は前人未踏だ。

　心理学者ビクトール・フランクルの名著「夜と霧」を愛読するなど村田は読書家として知られ、理路整然としたボクシング解説に定評がある。

　現役続行かどうかは未定という。村田のインテリジェンスはどういう選択をするのだろうか。(栄)