金曜時評

現職の責任を問う - 編集委員 松井 重宏

 奈良市の平成29年度一般会計予算は前年度に続いて紆余(うよ)曲折の末、何とか年度末ぎりぎりの今月28日、臨時市議会で可決、成立した。これを受けて仲川元庸市長は「市民生活に影響をきたす事態は回避された」と胸をなでおろして見せたが、果たして本当に「ひと安心」できる状況といえるのか。任期満了に伴う市長、市議ダブル選挙が7月2日の告示まで残り約3カ月と迫る中、いまだに現職市長が出馬するのか、しないのか、自らの進退について態度を保留していることが、市政混迷の火種となっている。

 平成25年の前回市長選挙では、3月定例会の本会議で、公明党議員の質問に答える形で再選に向けた意欲を表明。しかし今回は、どの会派からも出馬の意思を確かめる質問は出ず、本人も取材に対し「熟慮中」を繰り返す状態が続いている。その背景には、仲川氏が政党などの推薦を得られず、選挙を戦う態勢づくりが見通せないことがあると指摘する声も多い。先の定例会では、市長与党とされる改革新政会からも予算案に反対を突きつけられ、行き詰まった。

 ただ2月に最初の予算案を発表した段階では、違う展望があったのだろう。過去3番目の規模となる実質的な「本格予算」を提示し、周囲からは次期市長選への意欲の表れと受け止められた。だが、結果は進退の明言がない市長が組んだ「本格予算」に議会の反発が強まり、混乱を招いただけ。ついには同予算案を撤回する異常事態に追い込まれた。結局、臨時会にまでもつれ込んだ予算審議は、新斎苑(火葬場)建設事業など市政の需要課題の解決に、成果を示す内容にはならなかった。

 他方、県内では衆院選挙制度改革に伴う小選挙区の削減、新たな線引きをめぐる議論が注目を集めており、奈良市を中心とした第1選挙区の範囲、候補予定者をめぐる各党派の動きが市長選にも波及。市民のための政策論議より、政治的な思惑が先行し、選挙の見通しを曇らせている。

 いずれにしても、まず現職が自ら編成した平成29年度一般会計予算を踏まえ、同予算の執行完遂へ3選出馬を目指すのか、それとも7月末までの残任期に全力を挙げると言うのか、態度を明確にするべき。もしこのまま現職を置き去りにして市長選が動き出せば、仲川市長が手掛けてきた事業に対する責任はどこに行くのか。これ以上の同氏の「熟慮」は、市民に対する責任放棄にもなりかねない。

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