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金曜時評

現実との整合性を - 論説委員 小久保 忠弘

 鳩山政権が発足して、はや2カ月を迎える。過去2度の政権が厳しい現実に耐え切れず、それぞれ1年前後で消えていった中では、いつまでも初々しい「新政権」と呼んでいるわけにはいかない。各種世論調査の内閣支持率を見る限り、当初の熱気は冷めてきたものの、まだ国民の期待感は失われていないようにみえる。

 世論調査で注目したのは、選挙中のマニフェスト(政権公約)にこだわらず、現実に即した政策を期待する国民の声が多かったことだ。高速道路の無料化などは、ほとんどの国民は賛成していない。無理をして大やけどをせぬよう、現実を直視せよというのがおおかたの声だろう。

 「原理原則」と現実のギャップをどう埋めるか。この営みこそ、政治家が本領を発揮すべき最大の仕事だ。

 中央では、来年度予算を大幅に削るための行政刷新会議の事業仕分け作業が始まり、「仕分け人」なる担当者が、省庁の役人と公開の場で議論を戦わせている。初日の作業では、「公開処刑」だと反発する官僚も出たというから、役所にとってはたまらない事態のようだ。もちろん、納税者としては無駄洗い出しへの期待はある。たとえ国民向けのショーだとしても、成果さえ出してもらえれば文句はない。

 子ども手当創設や公立高校授業料の実質無料化など目玉政策を盛り込んだ結果、すでに概算要求は史上最大の95兆円に膨らんだ。予算圧縮目標はクリアできるのかどうか。

 予算の話では、かつて参院議員時代の荒井正吾知事にインタビューしたとき、県庁は陳情にもっとうまく政治家を使うべきだと語っていたのを思い出す。「道路財源の問題など、国会議員を使っていただきたい。陳情もできるだけ受けたい」と、他府県に比べて働きかけの少ない県庁の動きを指摘していた。

 そんな知事だけに、民主党が党や所属議員に対する各種陳情を幹事長室で一元的に取りまとめ、優先順位をつけた上で各省庁の政務三役(大臣、副大臣、政務官)に取り次ぐという新しいルールには戸惑うばかりだろう。

 仕分けといい、陳情の取り扱い変更といい、民主党政権は政策そのものより、政策の形成過程をオープンにすることをうたい文句にしているらしい。従来、自民党政権下では政策形成が官僚との密室で行われていたということをあぶり出す狙いもあるのだろう。新しい政治手法には慣れるしかない。政権のカラーが出て当然なのだろうが、「国民の生活が第一」というのなら、現実との整合性を優先せねばならない場面も出てこよう。

 「船頭多くして船山に登る」ということわざがある。「あれこれ指示する人が多いと、かえって物事の進行が妨げられる」というたとえだが、逆に「指示する人や力持ちがたくさんいると、集中力で思いがけない成果を上げることができる」と、変な解釈をする人もいるそうだから、ここは当分お手並み拝見か。

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