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【写スポーツ】水上を疾走 圧倒的なスピード感が魅力 - 桜井高校カヌー部

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スピード勝負のスプリント。1000分の1秒を競い、白熱したレースが展開される。インターハイ入賞を目指し、全力で練習に励む選手(写真はいずれも桜井市倉橋の倉橋ため池)

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 何千年もの昔から水上を移動する手段として、また狩猟の道具として使われたカヌー。競技としては1866年、イギリスのテムズ川で行われたレースが始まりといわれる。1936年のベルリン大会からオリンピックでも実施され、一時期除外されたが92年のバルセロナ大会で復活。2016年のリオデジャネイロ大会で羽根田卓也選手が日本人初のメダルを獲得し、ヨーロッパ勢が圧倒的な強さを誇る中、一石を投じた。最近は自然と一体化しながら自由に艇を操ることができるレジャーとして楽しむ人も多い。

 

 競技はカヤックとカナディアンの2種類のこぎ方があり、カヤックは両端にプレート(水かき)の付いたパドル(櫂=かい)を使う。カナディアンは片方だけにプレートの付いたパドルを使用。種目はスプリントやスラロームなどがあり、スプリントは波の穏やかな湾内や流れの緩やかな川、ダム湖などで着順を競う。スラロームは激流を下りながら、設定された旗門を通過する技術とタイムを競う。

 

 一見、ボート競技と似ているが、こぎ手から見て後ろ向きに進むボートに対してカヌーに前向きに進む。またボートはオール(こぐ道具)が艇に固定されているが、カヌーはバトルが固定されていない。

 

 県内の競技人口は決して多くはないが、今夏のパリ五輪出場を目指す棚田大志選手(26)=奈良情報商業高校卒、立命館大学を経て吉本整形外科・外科病院勤務=ら有望株も輩出。桜井高校カヌー部のメンバーは全国高校総合体育大会(インターハイ)出場を目標に掲げ、パドルをこぐ。部員は今春卒業する3年を含め6人。水上練習は学校近くの倉橋ため池に出向く。県内最大規模を誇る農業用ため池として1957年に完成、その後、周辺は公園として整備された。しかし、艇庫は脆弱(ぜいじゃく)でトイレやシャワーはなく、電源は発電機を利用するなど恵まれた環境とはいえない。

 

 棚田選手も指導した現・桜井高校教諭の越水高士監督(58)は「今の部員は全員、高校入学後カヌーを始めた。昨年のインターハイは4人が出場。残念ながら決勝に進出することはできなかったが、悔しさをバネに今年は入賞目指し頑張ってくれている」と期待する。

 

 スプリント・カヤックフォア(4人乗り)200メートル、同500メートルで出場した中井鉄丈(2年)、尾上蒼波(同)両選手は「新しいことに挑戦したかった」「自然が好きで楽しそうだと思った」などと入部動機を語る。

 

 最大の見どころはスピード感。1000分の1秒を競い、パドルから上がる水しぶきは迫力満点だ。人数別に1人乗り、2人乗り、4人乗りがあり、「個人の力が試されるシングル、心を一つにチームワークが勝敗を左右するペアやフォアなど種目が多彩なことも魅力」と話す。

 

 一条高校に通う女子の大石琴々奈選手(1年)も、水上練習は倉橋ため池で行う。中学でカヌーの経験があり、昨年インターハイにも参戦したが予選で敗退。「今年は準決勝、さらに決勝に進出したい」と力強い。2031年、奈良県で国民スポーツ大会が実施される。選手らは多くの人に競技の楽しさを知ってもらい、競技人口が増えることを願って日々練習に励んでいる。春、新たなシーズンの幕が開く。

 

 (写真・文 牡丹賢治)

 

▽部員

3年 辻井結也、江原淳弥

2年 中井鉄丈、尾上蒼波

1年 辻本太郎、吉岡大和

 

「レディ(位置について)セット(用意)ゴー」。号砲で一斉にスタートするスプリント。水上練習を終え、艇を陸揚げする選手は休む間も惜しみ道具の手入れを行う。目指すはインターハイ入賞だ

 

水上練習の拠点、倉橋ため池は県内のため池で最大規模を誇り、池周辺は市民の憩いの場として整備されている。写真手前から吉岡、中井、辻本、尾上の各選手

 

桜井高校のメンバーと一緒に水上練習を行う一条高校、大石選手(左)

 

 

 

2024年3月27日付・奈良新聞に掲載

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