楓ちゃん事件きょう17年 - 父・茂樹さんの手記
奈良市立富雄北小学校の1年生だった有山楓ちゃん=当時(7)=が誘拐、殺害された事件は17日、発生から17年となった。楓ちゃんの父親の茂樹さん(47)は、今も癒えない悲しみや社会への願いなどをつづった手記を県警を通じて公開した。全文は次の通り。
今年で事件から17年が経ちます。子どもの見守りや被害者支援の拡充など、地域、警察や行政のさまざまな取り組みが全国で広がっています。
この17年という年月は、私にとって前に進み、変わることができたのか改めて考えさせられます。どれだけ思っても楓は戻ってこない、大切な命が突然奪われた喪失感は埋まることもなく、子を守る親の責任を果たせなかった自責の念が消え去ることはありません。事件後、日常で失ったものは数えきれません。不安定な気持ちから自ら断ち切ったこともあります。そして、死刑を望んだことで自分自身が加害者であるかのような思いに駆られもしました。悲しみや苦しみ、後悔と同じように、楓の声や表情、思い出も変わることはありませんが、楓の成長が新たに積み上げられることもありません。
周りの方がそっと支えてくれ、楓を忘れずにいてくれることで気持ちが楽になり、今の私が少しずつでも前を向いて生きているんだと感じます。大切な命を突然奪われるといったつらい思いは誰にもしてほしくありません。子どもたちの笑顔が溢れる社会を心から願います。
有山 茂樹