理的思考力を育む - 10億件のデータが教える算数・数学の学習法(9)
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「算数・数学」の効果的な学習法について、人気の学習指導者・今木智隆氏が紹介する全12回の連載コラム。9回目は、算数力を高めるための論理的思考力の育み方についてご紹介します。
今木智隆(いまきともたか)
RISU Japan株式会社代表取締役。1979年京都府生まれ。東大寺学園中学校・高等学校、京都大学大学院エネルギー科学研究科修了。デジタルマーケティングのコンサルティングを経て、2014年RISU Japan株式会社を設立。タブレットを利用した幼児から小学生向け算数教材で、のべ10億件のデータを収集し、より学習効果の高いカリキュラムや指導法を考案。国内はもちろん、シリコンバレーでもハイレベル層から、算数やAIの基礎知識を学びたいとオファーが殺到している。著書に『10億件の学習データが教える 理系が得意な子の育て方』(2019年 文響社)。
皆さんは「算数力」と聞いてどんなものをイメージしますか?
算数力とは、図形やグラフを理解する能力でしょうか?
それとも、速いスピードで計算をする能力でしょうか?
日本では「速く、たくさんの計算問題を解く」ことが算数学習の基本になっています。計算ドリルは教材の定番ですし、計算のスピードアップだけを目的とする学習塾も全国に多数展開され、人気を誇っています。
そのため、多くのおうちの方が、「算数力=計算力」と勘違いをして、子どもに計算の練習ばかりさせているのではないでしょうか。
もちろん、計算力も算数力の一つです。
しかし私は、本当の「算数力」とは「筋道立てて物事を考え、問題解決する力」だと考えます。「論理的思考力」とも言い換えることができるでしょう。
算数を学ぶことは、論理的思考力を身につけるためのトレーニングなのです。算数と論理的思考の関係について、「文章題」を例にお話しします。
文章題を解くときは、
①問題文が何を尋ねているのかを理解し、
②数字を適切に組み合わせて式を立て、
③計算して答えを導きます。
この「①現状を把握し、②方法を考え、③問題を解決する」という3ステップはまさに、私たちが実生活で直面する「問題解決」と同じ手順なのです。
一方、単純な計算問題は、3ステップのうち「③問題を解決する」だけを繰り返しトレーニングしていることになります。
しかし、社会に出たら「問題点も解決策も明らかになっていて、あとは実行するだけ」という場面はほとんどありませんよね。これからの時代、「解決」だけで済む仕事はどんどんAIに代替されていくでしょう。
人間に求められるのはむしろ、「①現状を把握」し、解決に向けての「②方法を考える」能力、すなわち論理的思考力です。それは、計算ドリルを繰り返し解くだけの勉強では決して身につきません。
問題文を分析し、式に落とし込む訓練を繰り返すことで、「自分で考え、解決する」論理的思考の土台が作られていくのです。
では、論理的思考力を身につけると、どんな良いことがあるでしょうか。