万葉車窓

加茂-大仏(旧大仏鉄道) - 幻の鉄道しのぶ石の橋台

 

 『 仏造る 真朱(まそほ)足(た)らずは 水たまる 池田のあそが 鼻の上(へ)をほれ 』

 この歌は、東大寺の大仏建立の際、鍍金(ときん=メッキ)に用いた水銀を含む赤い「辰砂(しんしゃ)」にちなんだ歌で、「辰砂(真朱)が足らなければ、池田朝臣の鼻のあたりを掘れ」という意味である。

 東大寺二月堂の修二会(お水取り)も15日未明に満行を迎え、奈良・大和路は本格的な春を迎えた。二月堂から西の方角を望むと奈良市内から生駒山などが良く見える。手前には大きな大仏殿の甍(いらか)も。

 今から100年余り前の明治31年に京都府の加茂町と奈良(大仏駅)を結ぶ大仏鉄道(関西鉄道大仏線)が開業した。わずか10年足らずの営業期間だったが現在も廃線跡の痕跡をとどめるところが多い。

 同鉄道は奈良市の法蓮町にあった大仏駅から現在の関西線加茂駅までの約10km。奈良市内のドリームランド付近や木津町鹿背山付近では当時の線路跡が現在も道路として一部残っている。沿線にはトンネル跡やアバットと呼ばれる橋台も数多く残り、それぞれが石造りやレンガ造りで歴史を感じさせる。

 有志でこの鉄道を研究する大仏鉄道研究会(野辺孝男会長)は、残された資料や現地調査などを通じて幻の大仏鉄道の全体像を追っている。同研究会によると現在残る遺構で見どころは加茂町高田の観音寺新旧アバット。100年を経た石組みの橋台だが、北側の橋台は現在も関西線の線路として使われ、ごう音を立てて通過する電車が在りし日の大仏鉄道をほうふつさせるような気がする。

 

写真と文 藤井博信

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