万葉車窓
二上神社口―当麻寺(近鉄南大阪線) - 残照にうっすらと二上山
奈良から見れば雄岳は右、大阪側から見れば左と、見る位置で姿を変える二上山。両府県の学校の校歌にも数多く登場するなど、子どもたちにもなじみ深い山だ。
古来、大和と河内の境界となる山として相互の国からもよく見渡すことができた。
北に雄岳、南に雌岳と頂上が二つに分かれたラクダの背のような特異な形状で、雄岳の頂上には葛城二上神社と大津皇子の墓があることで知られる。
現在は、ふもとをバイパス道路(山ろく線)が走り、近鉄南大阪線も通っている。
今回の二上神社口、当麻寺駅間は、以前は田んぼや畑が多かったが道路や家などが増えてきているようだ。
写真は日が暮れてからしばらく時間がたった二上山(標高517メートル)。闇が多くのものを消してくれているが、二上山は残照でうっすらとその姿を留めている。
『 うつそみの 人にあるわれや 明日よりは 二上山を 弟世(いろせ)とわが見む 』
大伯皇女(おおくのひめみこ)が、弟の大津皇子を二上山に葬ったときに悲しみ悼んで詠んだ歌。万葉の昔を彷彿(ほうふつ)させる。
●参考図書=和田嘉寿男著「大和の万葉歌」(奈良新聞出版センター刊)
写真・文 本紙・藤井博信 (日本写真家協会会員)