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偏差値95で京大首席合格した教育家が語る小学生の勉強法

現代の教育の現場は、インターネットの普及により日々変化しています。小学校でもプログラミング教育が必修化されるなど、よりIT教育が広がりをみせています。その一つに、パソコンやタブレット、スマートフォンなどを利用し、自宅でも画面を通じて質の高い教育を受けることができる「オンライン学習」もあり、学びやすさなどから注目されています。

 

今回、その学習スタイルをいかし小学生から社会人まで幅広い層を対象にしたオンライン個別指導塾「粂原(くめはら)学園」を経営する株式会社iMotivetions代表、粂原圭太郎さんに、小学生の勉強法とオンライン学習についてお話を伺いました。

 

 

「自分って勉強できるんだ!」を引き出す

 

―― 粂原さんは偏差値95という驚異的な学力で京都大学に首席入学、経済学部で学びながら、教育本の執筆や学習塾の講師などをされていました。いつ頃から教育の仕事を意識されたのでしょうか?

 

中学2年生のとき、友人から借りた勉強法の本がきっかけでした。すごく面白くて、とりあえず他の勉強法も知りたいと、通学途中にある書店に毎日通いました。どの棚の列にどんな勉強法の本があるかを言えるぐらいになりましたね(笑)

 

勉強法はテレビゲームと同じだと思います。自分で頑張って進めたあとに、攻略方法とか調べて、また頑張って最短ルートで進もうと思うイメージに似ていて、勉強の攻略の楽しさが今の仕事に繋がっていると思います。

 

―― 粂原学園では、マンツーマンで小学生から大人まで幅広く指導されています。学園全体としては、「楽しいと思って学ぶこと」を重視されていますが、小学生を指導するときに共通して意識されていることはありますか?

 

「自分って勉強できるんだ!」という感覚を、身に付けてもらうよう意識しています。特に小学生は、自分で勉強することがかなり難しい年齢です。粂原学園も、最初は勉強も嫌いで苦手な子もたくさんいます。開始5分で嫌になって授業ができなくなる子もいました。

 

でも「あ、自分って勉強できるかも」って思うと、私の授業の60分間はしっかり集中してくれるようになります。それを週2回するだけで、最初よりずっと学習の力が向上します。自分で頑張って勉供できるようになり、授業でも多くのことを吸収してくれます。

 

小学生がつまずくところ

 

―― これまで指導してきた小学生の中で、共通してつまずくところや、苦手なところ、というのはあるのでしょうか?

 

もちろんあります。特に算数だと単元の「割合」でつまずく子が多いです。

 

―― そんな苦手を克服するにはどのようなことをされるのでしょか?

 

苦手を克服するには、どこがわかっていないのか、私がしっかり質問します。ただ小学生は特に、質問にしっかり答えを返してくるとは限りません。例えば4択の問題で、生徒が「3番!」と答えた時に「なんで3番なの?」って質問すると「じゃあ4番!」と返ってきます。

 

このように、答えを導き出すための思考ができていない子もいます。苦手の克服は、まずは「考え方」から教えること、根本的な考え方、論理的思考を教えることが多いです。授業中にクイズを出すこともあり、有名なところだと『正直村と嘘つき村』があります。

 

『正直村と嘘つき村』...分かれ道で片方は正直村に、片方は嘘つき村へと続いている。道には案内人が一人。案内人はどちらかの村人だが、どっちの村の住人かわからない。この案内人に1回だけ質問して、正直村に行くためにはどうすれば良いか。

 

論理的に考える、物事を順序だてて考える力があれば、答えが分かるクイズです。それを一緒に考えて、学習に必要な力を付けていきます。

 

 

楽しくするための勉強法

 

―― 粂原さんはクイズ番組の『最強の頭脳 日本一決定戦! 頭脳王』(日本テレビ系)で2014年から3年連続、数万人の中からファイナリストになるという経歴をお持ちです。そのような経験から、クイズを積極的に授業へ取り入れる工夫も、勉強が苦手な子でも楽しく学べるように感じます。

 

子どもの授業に限らないですが、少しでも勉強って楽しい、考えることは面白い、と思ってもらいたい思いがあります。クイズもその一部ですが、漫画で描いてある、頭が良くなる迷路パズルなどを宿題にしたり、宿題でもなるべく楽しくなる方法を選びます。

 

―― ほかに楽しくするための工夫はあるのでしょうか?

 

授業の中で、同じ問題を何回も解くことです。「同じ問題ならできて当たり前」と思いますが、同じ問題ができないから受験で点がとれないことは、よくあるので対策にもなります。それ以上に、成長している様子が本人もわかる、ということが大きいです。前回できなかったのに「ちゃんと解けてるじゃん」と思って勉強が楽しくなります。特に英検だと、過去に出た過去問・類似問題が実際の試験でもどんどん出てくるので、次はちゃんと解けた、という成功体験を作りやすいです。

 

小学生は先週の勉強が今週にはできなくなっている、そのようなことは当たり前です。私は英語を教えることが多いですが「この問題は、また次に質問するから覚えておいてね」と念を押して言います。次にその問題ができたら、すごく褒めます。人は褒められて嫌な気持ちにはなりませんよね。頑張って勉強してくれる子は、オーバーすぎるぐらいに褒めてあげます(笑)

 

できなかった子も、じゃあまた次にしっかり覚えようね、となります。できるようになるまで、教え続けることが大事です。子どもたちも、論理的な考え方を身に付けて勉強が少しでもできると自分が思えたら、積極的に学んでくれます。

 

―― 粂原さんの書籍「偏差値95の勉強法 頭のいい人が知っている学びを自動化する技術」でも、11の勉強法をご紹介されています。その中で、特に小学生にすすめたい勉強法はありますか?

 

小学生に特におすすめしたいのが「ドラクエ法」です。何か成功したときに、ゲーム「ドラゴンクエスト」のレベルアップの音を鳴らす方法で、レベルアップしたイメージを自分に投影し達成感を得ます。もちろん、ドラクエ以外のゲームの音を使っても良いです。保護者の協力も必要ですが、生活の中で「できた!」と思う音を流すことで、達成感を味わうためのスイッチとしてわかりやすくおすすめです。

 

 

『偏差値95の勉強法 頭のいい人が知っている「学びを自動化する技術」』粂原圭太郎(2020年ダイヤモンド社)

「ドラクエ法」だけでなく、固定概念にとらわれない、自由な発想で効果的な勉強法が書かれている。これまで粂原さんの書籍は受験を重視したものだったが、今回はビジネスマンも対象に書かれているため、社会人の学習にも役立つ内容となっている。

 

家庭環境が子どもの受験を左右する

 

―― 粂原学園の特徴の一つに、365日、LINEなどで相談ができるとのことですが、例えば小学生の場合はどのような相談があるのでしょうか?

 

小学生は保護者からの質問がほとんどです。例えば小学6年生ぐらいの男の子の場合は「親の言う事を聞いてくれない」と保護者から相談もあります。実はその男の子に、私が保護者と同じことを言ったら素直に聞いてくれることがほとんどです。

 

お互いに言いにくいことは、誰かを通せば伝えやすいときもあります。このように、粂原学園が他の塾とは違うところは保護者と話す時間が多いことです。小学生はもちろんですが、大学受験をされるお子様を持つ保護者の方にもよく相談をいただきます。

 

―― なぜ多くの相談を受けられるのでしょうか?

 

子どもは家庭環境が良くないと受験勉強に集中できません。保護者の不安は、子どもに伝わりますし、保護者も「勉強しなさい」とつい言ってしまう。それはお互いにマイナスでしかなくて、受験勉強を期に親子関係が悪化してしまうことも多いです。それは悲しいことですよね。

 

保護者の悩み、子どもの保護者に対する不満も、私が間に入って仲を取り持ちます。それをしないと子どもは勉強に集中できなくなり、結局は目標の場所へたどり着けなくなってしまうからです。だから保護者との関係性はすごく大事にしたいと考えています。

 

―― 確かに受験は勉強時間が多くなり、子どもも保護者も余裕がなくなることが多いと感じます。

 

オンライン塾、対面の塾に限らず、家庭での勉強を私たちが見る事はできません。しかし、生活時間も勉強時間も家庭の方が長いので、その時間をどう過ごすか、ということを少しでも高めたいという思いがあります。

 

私の授業は60分だけですが、その時間以外に生徒がしっかり勉強できるよう、学習計画を組み立てていきます。勉強ができれば保護者も安心するし、親子喧嘩がなくなりました、と喜ばれることもあります。

 

生徒の趣味を把握しておくのも大切です。好きな本や漫画などあったら、教えてもらって私も次の授業までに読んでおきます。授業のはじめに話すと、生徒も喜んで信頼関係も深くなるし、私自身も生徒がどのような考えをしているのかなど、勉強になることが多いです。

 

 

オンライン学習のメリット

 

―― 現在、新型コロナウイルスの影響により、自宅で安全に学習できるオンライン学習などが、以前よりも見直されてきていると感じます。粂原学園で小学生が学ぶときのオンラインでの良さは具体的にどのようなものでしょうか?

 

塾へ通うために必要な、準備時間がないことも良さの一つだと思います。ご飯やお風呂の時間、服装など、自分か保護者がしなくてはいけません。夜遅くなると大変なので、学校が終わる夕方から勉強になりますが、子どもにとっては遊びたい時間です。遊びを我慢することに集中するので勉強の効率が落ちてしまいますが、オンライン学習は自宅で勉強するので、極端に言えば寝る前まででも勉強ができてしまう。集中しやすい環境だと思います。

 

―― 勉強に至るまでに、勉強以外の準備時間の負担を減らせるのは嬉しいですね

 

もちろん、自宅学習だと体調の管理もしやすいし、送り迎えなどの保護者の負担や移動時間、経済的な負担もありません。本人が良ければ、私も服装は気にしないし、声だけで良い場合もあります。

 

オンライン学習に限りませんが、一般的な授業の板書時間もデジタル機器を使うとなくなります。事前に資料を用意していたら、ワンクリックで次の情報を進められるし、文字のタイピングは書くよりも速いので、授業のスピードが早いことも特徴だと思います。実際に粂原学園では、小学6年生の一年間で、中学3年生までの英語を終わらせています。

 

もちろん、対面塾のメリットもあります。友達を作り、そこで切磋琢磨できるとか、面と向かって得られる情報量も大きいです。逆に、個人で勉強したい子やコミュニケーションが苦手な子はオンライン学習向きだと思います。

 

―― オンライン学習も、学び方の一つとしてもっと普及していくのではと思います。

 

オンライン学習自体は、まだ保護者の方々によって格差があります。若い保護者でも「勉強って、先生と直接会って机の前で座るものなんじゃないの?」という方もいますが、逆におばあちゃんがiPadを使いこなして、粂原学園を見つけていただき、自分のお孫さんに入学していただいたこともあります。保護者によって新しい学習方法を取り入れるかの意識の格差は感じます。

 

小学生からの英語教育と注意点

 

―― 塾経営のほかに、クラウドファンディングで英語教材の制作プロジェクトも実施され、すでに制作が決定し着手されています。小学校のお子様を持つ保護者の方は、幼少のころから英語を学ばせたい、という思いの方も多いと聞きます。粂原さんは小学生の英語教育についてどのように思われますか?

 

英語は教える人の力量が問われる科目です。特に小学生の英語は、ちゃんと英語が理解できていて、教えられる人から教わってほしいです。生徒にあった良い教え方ができるかどうかで、その子が英語を好きになるか、嫌いになるかが顕著にでます。

 

私も小学校1年生から英会話をしていて、英検のレベルだと5級も受からないレベルでしたが、小学校5年生の時には1年間、英検対策の塾に通いました。それまでの英会話は学んで良かったと思っているのですが、その1年間で得るものは何もありませんでした。

 

その後、先生が変わって英語を一ヶ月間教えてもらったら、その後は自分で学習できるようになりました。このように、英語の学びは先生によってまったく違ってしまいます。

 

英語はやれば必ず伸びる科目なので、土台さえしっかり学べば、あとはそこに肉付けをしていくイメージで実力をつけることができます。なので、最初の大事な部分をサラっと教えてしまうような、教える側が英語を理解していないところで学ぶことは避けてください。

 

英検は大学受験にも役立つので、小学生の段階で早めに挑戦することをおすすめします。英検を勉強する時にも、しっかりと基礎を理解した上で英検の学習をしていけば、英語が得意になり、学習の成功体験も増えて良いと思います。

 

 

 

学習した日々を、良い思い出にしてほしい

 

―― 粂原さんは2019年に競技かるたの日本一に、翌年も名人位を防衛されて素晴らしい結果も出されています。かるたも和歌の意味を知ればもっと面白い、と笑顔で仰っている姿が粂原さんの教育の本質のように感じました。

 

調べるということは、興味を持つということで、興味を持った対象は記憶に残りやすいです。だから学習も、いかに興味を持たせるか、と意識して教えることも私の特徴だと思います。

 

勉強することは面白いことですが、勉強の全部を面白いと思う必要はないと思います。もちろん友達と遊んだり、ゲームしたりするのが楽しいのは当たり前です。でも「勉強もつまらなくないんだ」と思ってほしいです。私の授業で「何よりも勉強の方が好きです」という子が出てくれればもちろん嬉しいですが、そうでなくても、必要な時期にしっかり学習ができる子になってほしいと思います。

 

小学生の場合は、どうしても家庭での学習教育の影響が大きいため、私にできることは多くありません。ただ、子どもたちが将来、目標とした場所に行くために、その土台の一部でも私自身で作ることができたら良いな、と思います。

 

 

―― 最後に、奈良の子どもたちや教育法で悩む保護者の方々へメッセージをお願いいたします。

 

誰にでも「勉強って辛かったな・・・」という印象があると思います。保護者にもよると思いますが、自分ができなかったことを、子どもにしなさい、と言っても、多くの子どもはできません。そのように、勉強を通じて保護者と子どもの関係が悪くなることは絶対に避けてほしいです。

 

見つけることは簡単ではありませんが、保護者も子どもも、勉強のストレスから解放される場所を見つけてほしいと思います。その場所が、どこの塾であっても良いと思います。

 

家族で協力し、頑張って受験に挑戦したということは、将来、きっと良い思い出になります。子どもも、一緒に頑張ってくれた保護者に感謝する時が必ずありますので、受験をマイナスにとらえず、楽しみながらポジティブに勉強を進めることを意識してほしいです。

 

 

粂原圭太郎(くめはらけいたろう)
京都大学経済学部経済経営学科卒業。高校時代は平均偏差値80、最高偏差値95を出し、京都大学に首席で合格。2014年から3年連続で『最強の頭脳 日本一決定戦! 頭脳王』(日本テレビ系)FINALISTになり、一躍人気に。小学生の頃より競技かるたを始め、現在八段。2019年1月には競技かるたの日本一、第65期名人の座につき、翌年も名人位を防衛。現在は論理力、記憶力、没頭力を同時に上げるエキスパートとして全国各地で講演活動も行っている。オンライン個別指導塾「粂原学園」の代表講師として、学生から社会人まで受講生95%の成績アップに成功する。「1か月でTOEIC® 550点から750点にアップ」「1年で偏差値35が70にアップし、一流大学に合格」「3か月で定期テスト200位から2位に浮上」など、1on1指導が好評を博している。Twitter:@k_kumehara

 

記事制作奈良新聞社デジタル事業部

 

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